「三国一」の意味や読み⽅とは?
現代では使われることが少なくなりましたが、「三国一の花嫁」というのは、結婚式の披露宴などでよく使われた、女性(花嫁)に対する褒め言葉の定番です。この「三国一」の「三国」は、どの国を指すのでしょうか。まずは「三国一」の意味や読み方、歴史的背景、語源など、基本的なことから見ていきましょう。
■意味
女性、特に花嫁に対する褒め言葉「三国一の花嫁」の「三国一」は、「さんごくいち」と読み、「世界一」という意味で使われています。なぜ「三国一」が「世界一」という意味になるのでしょうか。また、この「三国」はどこの国のことでしょうか。語源を紐解けば、「三国一」の言葉の理解が深まるでしょう。
■語源
「三国一」の「三国」は、昔の大和(やまと)、唐(から)、天竺(てんじく)のこと。つまり、現代の、日本、中国、インドを指します。この「三国一」は、室町時代に生まれた言葉と考えられており、この時代の日本では、大和、唐、天竺の3つの国を、全世界としていたのです。
史料としての信頼が高く、織田信長を語る上で一次史料に近い評価がされる『信長公記(しんちょうこうき)』によると、信長はルイス・フロイスら宣教師の西洋の知識に触れ、地球が球体であることを一瞬にして理解したそうです。つまり、それまでの日本では、地球が球体であるという知識がなかったことを示しているといえます。
この、信長が活躍した時代が、室町時代の終わりから安土桃山時代です。現代のように飛行機や衛星がなく、「地球」という概念も浸透していない時代において、海に囲まれた島国である日本で、大和と唐と天竺が世界の全てと考えられていたのも不思議ではありません。
また、「三国一」を構成する2つの国に関連する言葉で、唐と天竺の2国を表す言葉を使った「唐天竺(からてんじく)」というものがあります。「唐天竺」は、今の中国とインドの意味ですが、この2国の意味の他に、非常に遠い場所のたとえとしても使われます。
昔の日本では、「三国」が全世界であり、「唐天竺」が世界の果てを指していたということです。「三国一」や「唐天竺」は、昔の日本人が持つ、地球や世界、距離に関する考え方を窺い知ることのできる、面白い言葉といえるかもしれませんね。
「三国一」の使い⽅を例⽂でチェック
今では耳にすることが少なくなった「三国一」という言葉ですが、結婚式の披露宴などで年配の人が使うことがありますので、しっかりと理解しておきましょう。「三国一」が実際にどのような場で使われるのか、例文を用いて解説します。
「〇〇さんは、愚息にはもったいない三国一の花嫁です」
愚息というのは、自分の息子のことを指す、へりくだった表現法です。「愚か」という文字が使われていますが、息子が愚かだと言っているわけではなく、自らを謙遜して表現している言葉だといえます。
この、「〇〇さんは、愚息にはもったいない三国一の花嫁です」は、自分や息子をへりくだった表現を用いて謙遜し、相手の花嫁(〇〇さん)を持ち上げる褒め言葉として使われています。
「〇〇ちゃんは、三国一の花嫁さんだね」
昔の結婚式の披露宴などで、親戚のおじさんが花嫁を褒める時によく聞かれた言葉です。昔は、この「三国一の花嫁」という言葉が、結婚式の披露宴での定番の褒め言葉として、よく使われたようです。