「鶏口となるも牛後となるなかれ」の意味と由来
「鶏口となるも牛後となるなかれ」は大きな組織に入って、末端で使われる立場になるよりも、小さな組織のトップになれという意味のことわざです。
【鶏口となるも牛後となるなかれ:けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ】
大きな団体で人のしりについているよりも、小さな団体でも頭(かしら)になるほうがよい。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
中国の故事が語源となっていることわざで、就職活動を行っている人や転職を考えている人に対して、アドバイスやエールを送る際によく使われています。ここでは同じ意味の四字熟語「鶏口牛後」と、このことわざの語源を説明しましょう。
四字熟語の「鶏口牛後」も同じ意味
四字熟語の「鶏口牛後」はことわざの「鶏口となるも牛後となるなかれ」と同じ意味です。「鶏口牛後」を文章で表したものが「鶏口となるも牛後となるなかれ」で、どちらも由来は同じです。
この語句は他にもバリエーションがあり、意味をまったく逆にして、「鶏口となるよりも牛後となれ」という使われ方をする場合もあります。
リスクはあるが将来性の高い職をよしとするのか、リスクが低い安定性の高い職をよしとするのか、考え方の違いによってバリエーションが生まれたということでしょう。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の由来
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の由来は中国の歴史書『史記』の「蘇秦列伝」です。中国戦国時代に圧倒的な強国であった秦に対抗する心構えを、学者である蘇秦が韓の恵宣王に説いた際の言葉、「寧為鶏口、無為牛後」が元になっています。
秦に屈して家来になるのではなく、韓という国を独立した状態で維持し、まわりの国々と連携して対抗すべきというのが、この言葉の真意です。韓の恵宣王が蘇秦のアドバイスに従った結果、秦は15年間に渡って侵攻することができず、平和が保たれました。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の例文
「鶏口となるも牛後となるなかれ」という言葉は就職活動や企業の合併などのシチュエーションでよく使われる言葉です。
【例文】
・就職先を考える際には【鶏口となるも牛後となるなかれ】というように、企業の規模で選ぶのではなく、自分のやりたいことを実現できるかどうかという基準で選びなさい。
・合併の申し出を断ったのは、【鶏口となるも牛後となるなかれ】という気概を持つべきだと考えたからです。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の類義語3つ
「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざにはいくつかの類義語となることわざがあります。共通する意味のことわざが複数あるのは、安定性よりも将来性を重視することが大切と考える人がたくさんいたということでしょう。
主な類義語のことわざは次の3つです。
・鯛の尾より鰯の頭
・芋頭でも頭は頭
・大鳥の尾より小鳥の頭
それぞれ意味と例文を紹介します。
鯛の尾より鰯の頭(たいのおよりいわしのあたま)
「鯛の尾より鰯の頭」の意味は「目立つ大きな集団の下にいるよりは小さな集団のトップになるほうがいい」という意味です。「鯛と鰯」と「鶏と牛」とたとえるものや語順が変わっていますが、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と同じ意味といっていいでしょう。
【例文】
・大企業を辞めて、うちの会社に役員として入社したAさんは【鯛の尾より鰯の頭】という選択をしたんですね。
芋頭でも頭は頭(いもがしらでもかしらはかしら)
「芋頭でも頭は頭」はどんなに小さな組織のリーダーでもリーダーには変わりはないという意味のことわざで、芋頭の読み方は「いもがしら」、頭は「かしら」です。
【例文】
・小さな町工場の経営者であるAさんは、【芋頭でも頭は頭】ということわざがあるように、将来的なビジョンを持った優れた人物だと思います。
・【芋頭でも頭は頭】で、どんなに小さな会社の社長であっても、従業員に対する責任感を持つべきだと考えます。