語源は中国の逸話から
「虎の子渡し」という表現は、中国の逸話が由来になっているといわれます。虎が子どもを3匹産むと、その中に必ず1匹のヒョウがいて、他の兄弟たちを食べてしまいます。しかし、親がいるときはヒョウから他の子どもたちを守ることが可能です。また、3匹とも川を自力で渡ることはできず、親が1匹のみ背負って運びます。
親はヒョウも含め、すべての子どもたちを守るために、川を渡るときはヒョウを最初に渡らせ、次に虎の子Aを連れて対岸に行き、一度ヒョウを連れて元の岸に戻り、虎の子Bを渡らせてから、最後にヒョウと一緒に川を渡りました。このように慎重に行動することを「虎の子渡し」といい、慎重にお金を運用すること、ぎりぎりの状態でなんとかやっていくことを指します。
リレー形式でものを渡すときにも使う
1匹ずつ虎の子を運ぶことから、リレー形式でものを渡すときにも「虎の子渡し」という表現を用いることがあります。次のように使ってみましょう。
・消火活動の訓練で、バケツを【虎の子渡し】のように協力して運んだ。
・まるで【虎の子渡し】のように、配布物が皆の手に渡った。手際がよく、訓練されている様子がうかがえた。
「虎の子渡しの庭」とは?
大きな石とそれに続くいくつかの小さめの石を順に配置した庭を「虎の子渡しの庭」と呼ぶことがあります。例えば、南禅寺の大方丈前の庭園では、石の配置が「虎の子渡し」のようです。「虎の子渡し」のように、大切なものを守るために思案することの大切さを表現しているのかもしれません。
「虎の子」の意味を理解して適切な場面で使おう
「虎の子」は、大切なものや子どもを指す言葉です。金品を指すことも多く、資産などの大切さを強調するときに「虎の子」という表現を用いるケースも少なくありません。
また、「虎の子渡し」とは厳しい家計をやりくりする意味でも用いられますが、リレー形式で運ぶことや、思案して行動することの大切さを表現するときにも用いられます。いずれも正確に意味を理解して、適切な場面で使っていきましょう。
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