浪漫ってどんな言葉?
浪漫(ろうまん)という言葉について、あなたはどれほど深く理解しているでしょうか?なんとなく「ロマンチック」といったイメージが強い言葉ですが、実は「浪漫」には3つの意味があるのです。
本章では、浪漫の意味を始め、その語源やロマンス・ロマンチックとの違いについて解説します。聞き慣れた言葉であっても、改めて意味を知ると新しい発見があるかもしれないので、ぜひ参考にしてください。
3つの意味
浪漫は、「ロマン」と同様の意味を持ち、以下のように3つの意味で使われる言葉です。
【ロマン】
《「ローマン」とも》
(1)「ロマンス」に同じ。
(2)小説。特に、長編小説。
(3)感情的、理想的に物事をとらえること。夢や冒険などへの強いあこがれをもつこと。「―を追う」「―を駆り立てられる」
(補説)「浪漫」とも書く。
<小学館 デジタル大辞泉>より
浪漫は多くの場合、1や3の意味として使われています。しかし2のように、小説(長編小説)そのものを指して「浪漫」と呼ぶことは、知らない方が多いかもしれません。
語源
浪漫の語源は「roman」というフランス語とされています。英語の「romance(ロマンス)」もまた、このフランス語が起源です。
この「roman」を日本で初めて「浪漫」と表現したのは、夏目漱石と言われています。同人が小説の中で「浪漫」という当て字を用いたことから、公用語となり、現在では「神秘的」「うっとり感」をイメージさせる芸術的な表現となりました。
ロマンス・ロマンチックとの違い
「浪漫」の語源が「roman」や「romance」であることから、以前までは同じ意味として使われていました。しかし現代では、浪漫(ろうまん)とロマンス、ロマンチックはそれぞれ異なるニュアンスで用いられています。
浪漫(ろうまん)は、夢や憧れを表現する際に多く用いられます。そしてロマンスは、空想的なニュアンスが強く、主に恋愛に関連したシーンで使われる言葉です。ロマンチックはロマンスの形容詞であり、現実離れした情緒的な雰囲気や情景に対して使われています。
浪漫の類義語・対義語は?
より短期間で多くのボキャブラリーを身につけるコツは、ひとつのワードを理解するときに、その類義語や対義語も覚えておくことです。浪漫には複数の意味があるため、その類義語や対義語もまた、複数存在します。それぞれの言葉を、浪漫と関連づけて覚えておくことで、必要なときにスムーズな言い換え表現ができるでしょう。
類義語
浪漫の類義語には、以下のようなものがあります。いずれも身近な言葉であるため、類義語を知っておくことで、浪漫の意味やニュアンスを正確に覚えておくことができます。
・夢
・理想
・願望
いずれの類義語も、人の欲求と関連したワードであることが分かります。つまり浪漫とは、人が持つ欲求や望みを表現した言葉だということです。
対義語
次に「浪漫」の対義語についても、学んでいきましょう。夢や理想を表現した浪漫という言葉には、以下のような対義語があります。
・自然
・写実
上記の言葉は「浪漫主義」と比較すると、より分かりやすくなります。浪漫主義の反対は「自然主義」と「写実主義」です。自然主義とは、現実のありのままを認めるといった意味です。そして芸術理論のひとつである「写実主義」もまた、存在するものをありのままに描写する思想のことを指します。
浪漫の使い方は?
聞き慣れた言葉である浪漫ですが、日常生活で使う機会はあまりないかもしれません。そのため、いざ浪漫という言葉を使おうとしても、正しい使い方がわからなくなってしまうことがあるでしょう。
言葉を正しく使うときに重要なのは、しっかりと例文を知っていることです。そこで本章では浪漫について、日常における使い方と、有名小説での例文を紹介します。
使い方
すでにご説明したように、浪漫には3つの意味があります。それぞれの意味で「浪漫」を用いる場合の使い方をご紹介します。
まず1つ目、ロマンスと同じ意味で「浪漫」を使う場合です。空想的な恋愛やそのような傾向があるものを指して「浪漫がある」「浪漫の類だ」と表現します。
2つ目の「長編小説」を指して浪漫と表現する場合。このときは通常の「小説」という単語と同じように使います。3つ目の「感情的または、理想的に物事を捉える」という意味では「浪漫を駆り立てられる」「浪漫が詰まっている」といった表現をします。
小説での例文
「浪漫」という言葉を、小説内で使っている作家は、夏目漱石を筆頭に複数人います。具体的な使い方は以下の通りなので、参考にしてください。
・そうして両方とも嘘(うそ)と信じて疑わないほど浪漫斯(ロマンス)に縁の遠い女であった。
夏目漱石『彼岸過迄』より
・これは過去の浪漫的演出に新しい精神を附与したことになるのであります。
岸田国士『演劇一般講話』より
・その悲壮感が実は彼女の浪漫性から出ていることには気がつかなかった。
松本清張『虚線の下絵』より
さまざまな「浪漫」
浪漫という言葉は、さまざまなものに使われています。ロマン(浪漫)主義や有名な楽曲・海外ドラマのタイトルなどです。ここでは最後に「さまざまな浪漫」をテーマに、浪漫が使われた主義思想や作品について、一つひとつ解説していきます。
「この曲知っている!」「このドラマ観た!」など、何らかの接点を知ることで、言葉をより身近に感じられるはずです。
ロマン主義とは?
ロマン(浪漫)主義とは、18〜19世紀にかけて、ヨーロッパで広まった精神的な傾向のことです。主に文学や芸術の分野で展開されていました。感性や想像力に関する主張または、当時の社会に対する反抗などがロマン主義の代表です。一種の文化運動と認識すると、分かりやすいでしょう。
楽曲に使われる「浪漫」
楽曲のタイトルにも「浪漫」が使われています。有名なものでは、1990年にリリースされた米米CLUBの『浪漫飛行』です。この曲は、100万枚以上の売上げを誇る大ヒットとなっています。
また近年リリースされた楽曲には、椎名林檎の『浪漫と算盤』があります。この楽曲は、歌手・宇多田ヒカルとの共演作としても話題となりました。
ドラマに使われる「浪漫」
韓国ドラマのタイトルにも「浪漫」という言葉が使われています。『浪漫ドクターキム・サブ』は、緊張感あふれる医療現場をテーマに、医師同士の恋愛模様を描いたストーリーで人気を博しました。
韓国で放送された当時は、視聴率27.6%を記録するほどの大ヒット作となりました。もちろん、日本でも放送されたため、興味のある方は調べてみてください。
「浪漫」を正しく理解して活用を!
ロマンやロマンスの当て字として誕生した「浪漫」について、その意味や語源、類対義語、使い方などを解説しました。
「浪漫」は、ロマンスと同じように使われるだけでなく、長編小説のことを表したり、感情的または、理想的に物事を捉える様を表したりする際に用いられる言葉です。聞き慣れた言葉でも、一度改めて意味を調べてみることで、浪漫に対するイメージが、少し変わったのではないでしょうか。正しい意味を理解してぜひ活用してみてください。
トップ画像・アイキャッチ/(C)Shutterstock.com
▼あわせて読みたい