天鵞絨とは「表面を毛羽や輪奈でおおった織物の総称」
天鷲絨とは、織面を羽毛や輪奈(わな)でおおった織物の総称です。出ている輪奈を切断した短い羽毛のような糸が特徴で、光沢感や柔らかい肌ざわり、収湿性を備えています。
【天鵞絨】テンガジュウ・ビロード
添毛織りの一種。織物の表面を毛羽または輪奈(わな)でおおった織物の総称。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
切り方によって凹凸感を出したり、深みのある色合いを表現できたりする点も天鷲絨の特徴です。また、天鷲絨は白い織物の光沢が白鳥に似ていることが名前の由来とされます。
中国語の「白い天の鳥」を表現する名前の通り、美しい品質を表しています。天鷲絨には本天や別珍、コール天、フラシ天、ベルベット、コーデュロイなどの織物が含まれ、それぞれ特色が異なると理解しておきましょう。
天鵞絨の読み方は「てんがじゅう」か「ビロード」
天鷲絨は「てんかじゅう」もしくは「ビロード」と読みます。天鷲絨はもともとポルトガルから日本に伝わった織物です。
ポルトガル語の「veludo」がビロードという読み方に変改しました。その読み方に中国語の「天鷲絨」の文字が組み合わさり、2つの読み方が残ったとされています。
また、ビロードを「ベルベット」と読む場合もあります。天鷲絨は織物である一方、日本の伝統色でもあります。色としての読み方は「びろうど」であり、違いに注意しましょう。
日本の伝統色としても扱われる
前述の通り、天鷲絨(びいどろ)は日本の伝統色として扱われます。ビロード生地に使われる暗めの青緑が天鷲絨の色です。
モスグリーンやエメラルドグリーンが近似色といえるでしょう。深みがあり光沢の高級感を感じるビードロの雰囲気を醸し出す色といえます。
天鷲絨は織物や着物に使われるのはもちろんのこと、ファッションやネイルでも人気がある色です。落ち着いた雰囲気を表現する天鷲絨は、伝統色でありながら若者にも好まれます。
天鵞絨における歴史
日本における天鷲絨の歴史は、約500年前の安土桃山時代に遡ります。安土桃山時代には南蛮貿易が栄えていたため、ポルトガルからさまざまな輸入品が日本に入ってきました。
鉄砲や生糸、火薬などの製品が代表的ですが、このときに天鷲絨も日本に上陸したとされます。その重厚感や珍しさから当時の戦国武将たちにとって人気のある織物として受け入れられ、マントとして使われたそうです。
その後、天鷲絨の製法は長浜で伝えられ、江戸時代になると日本全国での生産が開始されました。天鷲絨の歴史は、国を渡り長い時間をかけて日本の伝統となったのです。