天鵞絨友禅とは?
天鷲絨友禅は、貿易が盛んになっていた明治時代に開発された美術織物です。海外に輸出する織物を開発するために、京都の十二代西村總左衛門という人物が天鵞絨友禅を作ったとされます。
従来の友禅は、布に直接柄や絵を染め入れて作られていたため、平面の絵画のような印象を受けるものでした。一方、天鷲絨友禅は特徴である羽毛を立たせることで絵に立体感や光沢感が表現されています。
その独特の風合いが人気となり、西洋を中心に貿易でも盛んに取引されました。日本の伝統文化である友禅をさらに進化させた天鷲絨友禅は、国内外で評価される美術品として現在でも高い人気を誇ります。
天鵞絨における3つの種類
天鷲絨(てんがじゅう)には、製法や特徴が異なる次の3つの種類があります。
・輪奈天鷲絨
・切り天鷲絨
・二重織天鷲絨
着物や帯、ストールなど天鵞絨の種類ごとに製造されるアイテムが異なります。また、製造技術についても大きな違いがあるのです。ここでは、天鷲絨についてさらに理解できるよう、各種類の製法や特徴について詳しく紹介します。
輪奈天鵞絨
輪奈天鷲絨は、ポルトガルから日本に伝わってきた際の製法のまま作られる天鷲絨です。輪奈天鷲絨の製法は、ポリエチレンの糸やステレン糸を用います。
針金を織り込んで、輪奈状(ループの輪)になるように織りあげ、針金を引き抜きパイル状にするのが輪奈天鷲絨の特徴です。輪奈天鷲絨は製造工程が複雑なため、現在は天鷲絨が伝承された滋賀県長浜を中心にごくわずかに生産されています。
製品としては、天鷲絨のコートや着物などの衣服や小物などが作られています。また、近年では友禅染めを合わせた商品の開発も進んでいるようです。
切り天鵞絨
切り天鷲絨は、前述の輪奈天鷲絨の輪奈状の部分を切ってパイル状にした天鷲絨です。切り天鷲絨には、針金を引き抜かないで切る「有線天鷲絨」と織物の経糸を切る「無線天鷲絨」の2つが存在します。
いずれも切り込みを入れるには毛羽立たせる必要があり、繊細な技術が求められます。そのため、生産工場は非常に少なく希少性の高い天鷲絨です。主には、パイル地に柄を入れたコートやストールなどが作られています。
二重織天鵞絨
二重織天鷲絨は土台となる生地を二重にして、生地の間を経糸が往復しながらパイルをつくる天鵞絨です。つながった状態の生地をナイフで切り、2つの天鷲絨を作るように仕上げます。
生地の間にナイフを入れてパイルを美しく仕上げるには、適切な切り込みを入れるための高い技術が必要です。また、他の製法とは異なり二重の生地を切り離しているため、生産量を増やしやすく、衣服や化粧に使うパフなどに活用されています。
天鵞絨は長い歴史を持つ織物
天鷲絨はパイル状の織物の総称で、日本では400年以上の歴史を持つものです。重厚感や光沢感が特徴で、現代でも高級な織物として扱われます。
また、日本の伝統色としても扱われており、天鷲絨ならではの深みが特徴です。長い歴史の中で受け継がれている天鷲絨の製法は繊細な技術が必要で、生産できる職人や会社は減少しています。
そのなかでも、今回ご紹介した製法によって現在も天鷲絨は作られており、日本の織物文化として今後も引き継がれていくでしょう。
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