「徒然」の意味と読み方は?
「徒然」という言葉を聞いたことはあっても、その正しい意味は知らないという方もいるのでは? まずは辞書で言葉の意味を確認した後に、有名な『徒然草』について一緒に見てみましょう。
意味と読み方
まず「徒然」は「つれづれ」と読み、意味は辞書によると、次のとおり。
《「連(つ)れ連(づ)れ」の意》
[名・形動]1 することがなくて退屈なこと。また、そのさま。手持ちぶさた。2 つくづくと物思いにふけること。3 しんみりとして寂しいこと。また、そのさま。[副]1 長々と。そのままずっと。2 しんみりと寂しいさま。3 よくよく。つくづく。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
言葉の定義としては、「することがない」「退屈」「手持ちぶさた」「物思い」「寂しい」など、少ししんみりした印象です。アクティブというより非アクティブ。なぜだか手持ちぶさたで、物思いに耽ってしまったり、寂しくなってしまう時、この言葉を思い出して使ってみてください。
自分の気持ちを「徒然」という言葉でとらえ直してみると、そういう時だからこそ出てくる言葉や行動で「情緒の豊かさ」に気づけるかもしれません。気持ちと状況を素直に受け止め、「徒然なるままに、◯◯して」などと唱えてみるのです。
『徒然草』とは?
続いて、「徒然」という言葉でおなじみの随筆『徒然草』には、一体どのようなことが書かれているのかを解説します。
『徒然草』(つれづれぐさ)ができたのは鎌倉時代。諸説ありますが、元徳2~元弘元年(1330~1331)ごろに成立したとされています。著者は吉田兼好。随想や見聞などを書き綴った全244段(一説では243段)からなる全2巻の随筆です。
文体は、和漢混淆文という現在の日本語の表記体系の元となる文体と、仮名文字が中心の和文が混ざったスタイル。各段で吉田兼好の生き方や恋愛、友人関係についての考え方、無常感、風雅思想、逸話などが長短さまざまに、自在に書き綴られています。また、「徒然草」の題名である「草」は植物の草でなく「ノート」の意味。
冒頭文の「つれづれなるままに、ひぐらし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ」の現代語訳は「何もやることがなく手持ち無沙汰なのに任せて、一日中、硯に向かって、心に浮かんでくるつまらない事を、とりとめもなく書きつけてみると、妙に正気を失ったような気持ちになる」という意味になります。
日本の三代随筆の一つ
『徒然草』は、「春はあけぼの」で始まる清少納言の「枕草子」とともに随筆文学の双璧ともされています。さらに「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」の冒頭で有名な鴨長明の『方丈記』とあわせて、日本の三代随筆の一つに。いずれも、学生時代に出合った記憶がありませんか?
実は『徒然草』は、執筆後約100年間は注目されることなく、室町時代中期になって普及しました。応仁の乱を生きた人たちは、「無常観の文学」という点で『徒然草』に共感を寄せていたというエピソードも。
その後、教訓が親しみやすいせいか、江戸時代に多く写本され、身近な古典として日本文学に位置付けられるようになりました。『徒然草』の説話には、時代の事件や人物についての記述があり、中でも平家物語の作者に関する記述は現存する最古のものだそうです。
作者の吉田兼好について
鎌倉後期から南北朝時代にかけて活躍した歌人・随筆家です。生年は1283頃~1352頃。本名は卜部兼好(うらべかねよし)といい、吉田兼好は後世の俗称です。後二条天皇に仕えますが、のちに出家。和歌・文章にすぐれていたので、頓阿・浄弁・慶運とともに二条派の「和歌四天王」ともいわれています。また吉田兼好は、仁和寺がある京都の双が丘(ならびがおか)に住んでいたため、作中には仁和寺に関する話が多くみられます。
使い方を例文でチェック!
昔からあった「徒然」という言葉。日常生活での使い方を例文でチェックしてみましょう。
「読書をして入院生活の徒然をまぎらわしている」
病気療養のために、長めの入院生活を余儀なくされるシチュエーション。することがなくて退屈だったり、手持ちぶさたで寂しさを感じてしまいそうな場面です。それらをまとめて「徒然」と表して使ってみると、少し心が慰めらそうな気がしませんか。
「一人旅の徒然を慰めるために、地元のお祭りに出かけた」
することがなくて、ものさびしい時に「徒然を慰める」と言って、何かしら行動してみるのもよいかもしれません。少しアクティブな気持ちになるきっかけになるでしょう。
「実家を出る時、祖父母が私の顔を徒然眺めるので、なんだか切なくなった」
「よくよく」「つくづく」といった意味で、誰かが誰かの顔をみる時の様子に「徒然」を使うと、情感やニュアンスがより伝わる表現に。どうすることもできないけれど、交わされる思いや態度が「徒然」という言葉で表せます。
類語や言い換え表現とは?
続いて、「徒然」の類語や言い換え表現を説明します。
退屈(たいくつ)
「徒然」の類語で、わかりやすいのが「退屈」。ズバリ「することがなくて、時間をもてあますこと」です。退屈な状況をイメージすると、「徒然」のニュアンスが理解しやすいでしょう。
《例文》退屈しのぎに、一日中、推しの動画配信を見てコメントしている