栽培が意外と難しい
「桜桃」は、気温や降水量、土壌などの影響を受けやすく、栽培が難しい植物。昔、全国で「桜桃」の試験栽培を行ったそうですが、山形県以外のほとんどの地域では失敗に終わってしまったのだそう。山形県の気象や土壌の条件が「桜桃」に適しているため、山形県では「桜桃」の生産が盛んなのです。
また、「桜桃」は、自分の品種だけでは実をつけません。実をつけさせるためには、別の品種の花粉をつける必要があります。こうした性質を持つため、一般的に生産農家では、複数の「桜桃」の品種を一緒に栽培しているのです。さらに、相性の悪い品種同士だと、受粉をしても実がならないこともあるのだとか。このように、実をつけるまでにはさまざまな工夫が必要な植物なのです。
「桜桃(さくらんぼ)」の品種を紹介
世界中で栽培されているほか、日本でも約25の品種があるとされる「桜桃」。一番有名なのは「佐藤錦」ですが、そのほかにもさまざまな品種があります。いくつかピックアップして紹介します。
佐藤錦
「桜桃」の最も代表的な品種は「佐藤錦(さとうにしき)」です。鮮やかな赤色をしており、「赤いルビー」という別名も。甘味が強く酸味が少ないのが特徴で、果肉・果汁も多く、ジューシーな味わいです。「佐藤錦」という名前は、生みの親である佐藤栄助さんにちなんだもの。
佐藤栄助さんは当時、果肉が固く酸味の強い「ナポレオン」と、甘味はあるものの日持ちしない「黄玉(きだま)」という品種の交配に挑戦。その後、より良い原木の育成を続け、ようやく完成したのは本格的な着手から15年が経っていたのだそうです。
ナポレオン
ヨーロッパで生まれ、1872年にアメリカから日本に伝わった品種です。熟すのは、通常の「桜桃」よりもすこし遅く、6月下旬〜7月上旬頃。実はやや固く、ハートのような形。果皮は黄色地に赤色がかかっており、完全に熟すと、全体が赤く色づきます。甘味のほか、酸味も強く、バランスのよい甘酸っぱさが特徴です。
「ナポレオン」という名前は、フランスの皇帝・ナポレオンが亡くなった後、彼にちなんでベルギーの王様が名付けたのだとか。ちなみに、明治時代、日本では「那翁(ナポレオン)」という名で親しまれていたそうです。
高砂
「高砂(たかさご)」はアメリカ生まれで、明治時代の1872年に日本に伝わった品種。もとのアメリカ名は「ロックポート・ビガロー(Rockport Bigarreau)」ですが、1911年に「高砂」と名づけられました。「佐藤錦」よりすこし早く市場に出回るため、旬初めから楽しめる品種です。実はハート形で、果肉はやわらかめ。果皮は熟すと鮮やかな赤色になります。甘味と酸味が適度にあり、あっさりとした味わい。多品種の受粉用にも適した品種としても重宝されています。
「桜桃」の英語表現は?
「桜桃」の英語表現は、「cherry」もしくは「cherry fruit」です。ただし、果実を含む樹全体のことを言いたい場合には「a cherry tree」と表現したほうが伝わりやすいかもしれません。ちなみに、「桜桃」の種の英語表現は、「cherry pit」もしくは「cherrystone」です。
最後に
漢字だと、一見難しい「桜桃」。身近な果物である「さくらんぼ」の漢字表記とは知らない方も多かったのではないでしょうか。「桜桃」の代表的な品種は「佐藤錦」ですが、品種によって味や食感も異なるので、さまざまな「桜桃」を試してみるのも楽しいかもしれません。
▼あわせて読みたい