「水母」とは?
「水母」は「すいぼ」と読み、辞書で調べてみると以下のようにあります。
腔腸動物の基本形のうち、浮遊生活を送るもの。ハチクラゲ類・ヒドロ虫類など。体は寒天質からなり、傘の形をしていて、これを伸縮させて泳ぐこともある。傘の中に消化循環系・生殖器があり、骨はない。傘の周縁に多数並ぶ触手には刺胞(しほう)があり、強い毒をもつものもある。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
もうわかりましたよね、「水母」はクラゲの漢名なのです。
「水母」の由来とは?
何故クラゲを「水母」と表すのか? というと、それは定かではありません。しかし、中国、晋の時代の書物『博物志』の中に出てくるものが有力であるとされています。それは「水母」には目がないため(実際には目のような感覚器官があり光は感知します)、目のあるエビが道案内をしているかのように寄り添っていた。その姿を母と子に例えて「水母」という名称になった、という説があります。
「水母」と「海月」の違いは?
クラゲを表す漢字で、多くの人が最初に思い浮かべるのは「海月」ではないでしょうか。「海月」は、クラゲが海中を漂う姿が、海の中に月があるかのようにみえたことから「海月」と表すようになったとされています。またクラゲは他に、「水月」「鏡虫」「久羅下」と表記されることもあります。
そもそも何故「クラゲ」といわれるようになったのか? その語源については諸説あります。目が見当たらなかったため、見えないだろうとされ「暗気」から由来したとされる説や、クラクラと回転しながら海中を浮かぶ姿から「クラゲ」といわれるようになったという説。「輪笥(くるげ)」という丸い入れ物に、形が似ていたことから由来するという説まで様々あります。
「水母」を英語で表すと?
「水母」は英語で「jellyfish」です。直訳すると「ゼリー状の魚」。「水母」はゼラチン質で、そのほとんどが水分でてきているそう。プルプルとした見た目がゼリーのようですよね。
「水母に刺された」を英語でいうと?
もし英語圏で「水母」に刺されたときは「stung by a jellyfish」といいましょう。「stung」は「刺す」ことを意味する「sting 」の過去分詞形。昆虫や生物の針や刺毛によって刺されるときに用います。
例文:My daughter was stung by a jellyfish.(私の娘は水母に刺された)
ちなみに「jellyfish」は「弱虫」や「意思の弱い人」、「意気地なし」を表す際に使われる言葉でもあります。
「水母」を使ったことわざとは?
ことわざの中には、「水母」が使われているものがいくつかあります。その意味や使い方をチェックしていきましょう。
1:「水母の行列」
「水母の行列」とは「整列されていない様子」「上手に並べないこと」を表すもの。「行列」は本来、順序良く並んでいる様子を表します。しかし「水母」は、海中をプカプカと自由奔放に浮かんでいますよね。そのことから、整列されていないこと、または集団行動ができていないことをたとえたものです。
例文:まだ幼稚園児なのだから、水母の行列になるのは仕方ない
2:「水母の風向かい」
「いくら抵抗してあがいても、どうしようもないこと」「やってみたところで無駄に終わること」を意味します。海の中をふわりと浮かんでいて、泳ぐ力のない「水母」が風上に向かって進んでいくのは非常に困難。そのことから、「難敵や運命に逆らっても無駄だ」ということを表すことわざです。
例文:素人がオリンピックチャンピオンに挑もうなんて、水母の風向かいだ
3:「水母の骨」
「水母の骨」の意味を辞書で調べてみると以下のようにあります。
水母には骨がないことから、ありえないことのたとえ。また、非常に珍しい物事のたとえ。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
例文:こんなところでダイヤモンドが採れる訳がない、水母の骨でもあるまいし
4:「命あれば水母も骨に会う」
「命あれば水母も骨に会う」とは「長生きしていれば、稀にみる幸運に出会うことがある」という意味のことわざ。骨がない「水母」も、長く生きているうちに骨ができるかもしれない、ということから由来します。また、「命を大切にして長生きするよう努めよう」といったものです。
例文:孫が世界中から称賛の声を浴びるなんて、命あれば水母も骨に会うとは、このことだ
日本近海にいる「水母」の種類は?
「水母」といっても、様々な種類の「水母」が存在します。刺されても無害なものから、非常に危険なものまで。日本近海に生息する「水母」の種類をみていきましょう。
「水水母」
日本周辺の海に多くみられるのが、「水水母(ミズクラゲ)」。傘の大きさは、15~30cm。透明な傘の中に4つの模様(胃腔と生殖腺)がみえることから「ヨツメクラゲ」とも呼ばれます。透き通った、綺麗かつ可愛らしい外見で、水族館や自宅で飼われるのにも人気です。少量の毒は持っているとされていますが、刺された箇所にほとんど影響はありません。刺されてもほぼ痛みを感じないのが特徴です。
「行灯水母」
「行灯水母(アンドンクラゲ)」は、別名「電気クラゲ」とも呼ばれる小型の「水母」です。傘の直径は2~3cmに対して、4本の触手は20cm。主にお盆以降に多く発生します。よく「お盆過ぎて海に入ると水母に刺される」というのは、この「行灯水母」のこと。刺されると、激痛が走り、刺された箇所がミミズ腫れになって数週間残ることもあります。
「鉤手水母」
「鉤手水母(カギノテクラゲ)」は、強い神経毒をもつもの。傘の直径は約2cm。90本以上ある触手の先端が、カギのように折れ曲がっているのが特徴です。主な発生時期は3~9月初めにかけて。海藻が茂るような浅瀬の岩場に多くみられます。刺されると、激痛が走り、時間が経過してから全身症状が現れるのが特徴。関節痛や筋肉痛、呼吸困難、痙攣や吐き気などを引き起こすこともあります。
「赤水母」
「赤水母(アカクラゲ)」は、別名「ハクションクラゲ」ともいわれます。それは、2mほどある触手はちぎれやすく、乾燥した刺糸が空中に舞い、吸い込むとくしゃみが出ることからそう呼ばれるようになりました。傘に赤い縞模様があるのが特徴。低い温度を好むため、秋から春にかけて日本周辺の海、特に太平洋側に多く発生します。
刺されると、火傷のような強い痛みを伴い、水疱やミミズ腫れになるでしょう。ひどい場合は、呼吸困難になることも。また「赤水母」は死んでからも毒性がなくならないため、打ち上げられたものも触らないようにしましょう。
そのほかにも、「鰹の烏帽子(カツオノエボシ)」、沖縄や奄美の海に生息し猛毒を持つ「波布水母(ハブクラゲ)」などが、日本近海でみられる「水母」です。
最後に
「水母」は、「すいぼ」と読み、クラゲのことだとわかりました。 「水母」を使ったことわざ、クラゲを表す漢字はいくつかあります。覚えておくと、いざというときに役立つでしょう。
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