「火に油を注ぐ」とは
「火に油を注ぐ」の意味、語源や由来、誤用の事例なども交えながら解説します。
■意味
「火に油を注ぐ(ひにあぶらをそそぐ)」の意味は、「勢いのあるものに、さらに勢いを与えるようなことをする」です。悪い状況をさらに悪化させるときに使います。
■語源や由来
「火に油を注ぐ」の語源となるのは、紀元前、ローマの歴史家であるティトゥス・リウィウスによって記された「ローマ建国史」の中にある一文です。
「もしあなたが火に水を注いだら火は消える。ただ、注いだものが油だったら、火はより一層燃えさかる。火が燃えている様を何かの問題として捉えたなら、その問題をより悪くするのは油である」から来ています。
■間違った使い方
よくありがちな「火に油を注ぐ」の誤用について解説します。先述のとおり、この言葉はよくない状況をさらに悪化させるという意味。つまり状況が悪いときに使用します。例えば、「先日の新商品は世間のブームに乗って火に油を注いだように売り上げが増加している」といった、良い状況のときには使用しません。
また、「火に油を注ぐ」によく似た言葉で「油紙に火が付いたよう」というのがありますが、間違えて使わないようにしましょう。この言葉の意味は、べらべらとよくしゃべるさまを表しています。決して「彼女は火に油を注いだようによくしゃべる」という使い方はしないように。
「火に油を注ぐ」の使い方を例文でチェック
「火に油を注ぐ」の正しい使い方について例文で解説していきます。
1:上司にミスを指摘されて、言い訳をしたら火に油を注いでしまったようだ。
よく見かけるシーンですよね。上司からミスを指摘されて、焦った部下が必死で言い訳をしている場面。自分で自分の首を絞めて、とうとう行き場を失ってしまいます。上司はもしかするとミスを責めていたのではなく、今後どうするのかを考えてもらいたかったのかもしれません。
勝手に怒っているものと思い込んで、必死で言い訳をするとこのような事態になりかねません。人間はミスするもので、ミスをした後の対応が大切です。
2:軽率な発言で火に油を注ぐことになってしまった。
自分が何かを言ったことによってさらに怒らせてしまった、ということはないですか? 「あれ? 何で怒っているのだろう」とその時は思います。でも後から振り返ってみて軽率だったな、と気づくことって多いですよね。軽はずみ発言をしないように日頃から意識しておくことが大切です。
3:国会答弁で失言した議員は、前言を撤回して必死で挽回しようとしていたが、その後自らのスキャンダルで火に油を注ぎ、結局辞職することになった。
最近こういうケースが多く、あまりの意識の低さに辟易としてしまいます。日頃なにをしているか、なにを考えているかが大切ですね。言葉だけでなく行動や態度にも注意しましょう。
4:2年連続赤字なのは、余計な新商品開発で火に油を注ぐ形になってしまったからだ。
単年度の赤字から翌年は何とか挽回しようと、新商品開発に大きな投資をしたが思ったように売れず、その結果2年連続の赤字に。厳しい状況の時は無駄な動きではなく、冷静に環境を読むことも必要ではないでしょうか? 人だけでなく組織や集団にも使うことが出来ます。
「火に油を注ぐ」とどうなる? 対処法は?
「火に油を注ぐ」と状況はより一層悪い方向に向かいます。相手の怒りや悲しみは、より激しくなるでしょう。そのときになんとか鎮めようと無理をすると、再び「火に油を注ぐ」ことにもなりかねません。自分がしたことはいったん受け止め、しばらくその場を静観するほうがいいでしょう。じたばたせずに待っていれば、火はいつか鎮まります。
「火に油を注ぐ」の類語や言い換え表現は?
「火に油を注ぐ」の類語や言い換え表現にはどのようなものがあるでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
波風を立てる
「騒ぎを起こす」という意味です。「波風を立てる」というのは、いま現在悪い状況になっていない場合でも使われますが、状況を悪化させるという意味では同じです。
例文:せっかく事態が収束しだしたのに、これ以上波風を立てないで欲しい。