「香魚」の読み方や由来は?
「香魚」は「あゆ」と読みます。一般的に「鮎」と表記されることが多いので、「香魚」という表記には馴染みがない方がほとんどなはず。「香魚」という漢字は、「香魚」から良い香りがすることが由来。水質の良い場所で育った「香魚」や、若い「香魚」は、一般的に思い浮かべる魚の生臭い香りはせず、きゅうりやスイカの匂いがします。時には、「若草のような香り」と表現されることも。
「香魚」が石などに生えている藻を食べていることからこのような香りがするのだそう。ただし、養殖されている「香魚」からは、このような良い香りはほとんどしないのだとか。天然の「香魚」を食べたことがない方は、「香魚」という漢字の由来にピンとこないかもしれませんね。
「鮎」や「年魚」と書くことも
「香魚」は、一般的には「鮎」と表記されますが、そのほかにも「年魚」や「銀口魚(ぎんこうぎょ)」「渓鰮(けいうん)」「国栖魚(くずうお)」「細鱗魚(さいりんぎょ)」などの名前も持ちます。それぞれ意味を紹介しましょう。
鮎の由来
まず、馴染みのある表記「鮎」の語源から説明します。これは、「香魚」が産卵期に川を下るため、落ちるという意味の「あゆる」が由来になっているのだそう。しかし、これも定かではなく、単に「アユ」という音に近い言葉が当てられたという説もあります。
そのほか、「香魚」を昔の天皇が占いに使ったことから、「魚」に「占」という漢字が当てられた説。「香魚」が素早く動くさまが矢のようであることから、アイヌ語で「矢」という意味の「アイ」が転じたとする説。「香魚」は、縄張りを保つため、「占拠」や「独占」という意味の「占」を取ったとする説。さまざまな説があります。
年魚の由来
「年魚」と書くのは、「香魚」の寿命が1年であることが由来。もともと、「年魚」とは1年以内に寿命を終える魚の総称。その代表格が「香魚」なのです。秋に生まれた「香魚」は海に移動し、春から夏にかけ成長をとげ、晩秋になると成熟を開始。そして生まれて1年が経つ秋になると産卵をし、その一生を終えます。この命の寿命が由来となって、「年魚」という漢字が当てられたのだそうです。
その他の漢字の由来
「銀口魚」は、「香魚」の口が銀色に光ることが由来で、「渓鰮」は、渓流のイワシという意味。「国栖魚」は、奈良県の国栖人が「香魚」を天皇に献上していたこと、「細鱗魚」は、うろこが小さく細かいことがもととなって、それぞれの漢字が使われたのだそうです。
「香魚」ってどんな魚?
「香魚」は、キュウリウオ目アユ科アユ属の魚。初夏から夏に旬を迎えるので、「香魚」を見て、夏の訪れを感じる方もいるのではないでしょうか。その生態や特徴をあらためて見ていきましょう。
分布場所
「香魚」が分布するのは、北海道南部〜朝鮮半島、ベトナム北部などの東アジア一帯。以前は、台湾の河川にも見られたそうですが、現在は生息していないのだとか。日本で言うと、北海道〜沖縄まで広く分布しています。なお、奄美大島と沖縄に生息している「香魚」は「リュウキュウアユ」と言い、現在では絶滅危惧種として指定されている種類です。
なお、日本に生息する「香魚」には、生まれた後に海へ下り、稚魚になったらまた川へ遡上する種類と、海ではなく湖や流入河川で一生を過ごす種類の2つのタイプがあります。後者で代表的なのは琵琶湖の「香魚」。「小鮎」とも呼ばれ、その名の通り、成魚でも10cm程度にしか成長しません。「川鮎」は藻を食べて成長しますが、「小鮎」は、プランクトンを食べて成長するため、体が大きくならないのだそうです。
見た目の特徴
天然の「香魚」の背は青みがかったオリーブ色、腹部は銀白色をしています。若い「香魚」は、10〜15cm、成長すると20〜25cm、なかには30cmになるものもいます。成熟期を迎えると、オスの「香魚」の背びれ・胸びれ・腹びれは伸び、尻びれは短く変化。メスは、尻びれの前方が突き出ていきます。
オス・メスともに、産卵期になると腹の両側にオレンジ色の帯が現れ、体の表面にざらつきが出るのが特徴。ちなみのこのオレンジ色の帯は、「婚姻色」とも呼ばれています。