「時節柄ご自愛ください」の基礎知識を解説
「時節柄ご自愛ください」の読み方は、〈じせつがらごじあいください〉です。「このような季節であるため、健康に気を付けてください」というように、相手の体を気遣う意味が込められています。また、新型コロナウイルス感染症の影響により、近年は「時節柄ご自愛ください」と伝えることが多くなりました。
はじめに、この言葉の詳しい意味や使用する際の注意点、相手からそういってもらった場合の返信の仕方について、それぞれ詳しくチェックしていきましょう。
時節柄ご自愛くださいの意味とは?
【じせつ‐がら(時節柄)】
(名)時節にふさわしいこと。時分柄。
「―の新茶は香(かおり)は高くとも」〈藤村・夜明け前〉
(副)時節が時節なので。時分柄。「―早めにお召し上がり下さい」「―おからだを大切に」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「時節柄」とは、「時節にふさわしいこと」、または厳しい寒さや酷い暑さのころなど「時節が時節であるため」という意味の言葉です。
また、「ご自愛ください」とは、自らの体を大切にする意味の「ご自愛」に、さらに「お/ご~ください」を付けて尊敬表現で相手を立てています。それぞれをあわせると、「時節が時節であるため、健康に気をつけてください」という意味です。
相手の健康を気遣う表現であるこの言葉は、目上の人にも使えます。ただし、指示するようなニュアンスのある「ください」を用いるため、目上の人に使いにくく感じる人もいます。その場合、「ご自愛のほどお願い申し上げます」といった表現に変えて使うと良いでしょう。
■時節柄ご自愛くださいを使う際の注意点
時節柄ご自愛くださいを使う際には、以下のように気を付けるべきポイントがあります。
・体調を崩している人には使えない
・二重表現に気を付ける
・「ご慈愛ください」と書かない
相手の健康を気遣う言葉であるものの、この表現は今健康的である人に向けて用いるものです。すでに風邪をひいてしまったなど、体調を崩している人に使うのは適当ではありません。また、「お体をご自愛ください」などと、二重表現にしてしまわないように気を付けましょう。
時節柄ご自愛くださいは、手紙やメールなどの締めくくりとして使うことの多い言葉です。漢字を書く際に、「ご自愛」を「ご慈愛」と書いた場合、意味が違ってきてしまいます。「ご慈愛」と間違えないようにすることにも、十分に気を付けてください。
■時節柄ご自愛くださいへの返信
手紙などで、「時節柄ご自愛ください」と相手から気遣ってもらうケースがあります。この場合の返信の仕方もチェックしていきましょう。
相手から体調を気遣ってもらった場合には、「お気遣いいただきありがとうございます。〇〇様もどうか健康にご留意くださいませ」などと返します。時節柄ご自愛くださいへの返信のポイントは、「感謝を伝えること」と「異なる表現で相手の健康を気遣うこと」です。
ご自愛くださいはいつ使う?季節ごとの例
「ご自愛ください」という言葉はいつどのように使えばいいのか、しっかりと確認してうまく使えるようになりましょう。「時節柄ご自愛ください」は、一年を通してどのような時期でも使える表現です。
「このような時節柄ではございますので、どうぞご自愛くださいますようお願い申し上げます」や、「時節柄、くれぐれもご自愛ください」などとも使えます。
それでは、ご自愛くださいの使い方について、季節ごとの例を見ていきましょう。
春(3月・4月・5月)
3月・4月・5月の春のシーズンは、冬が終わり暖かくなってきたものの、寒さの残る日もあります。たとえば、以下のように伝えると良いでしょう。
・3月……まだ寒さの残る日もあります。どうぞご自愛くださいませ。
・4月……季節の変わり目、どうかご自愛ください。
・5月……連休疲れが出る頃ですので、くれぐれもご自愛ください。
夏(6月・7月・8月)
6月・7月・8月の夏のシーズンは、暑中見舞いや残暑見舞いで「時節柄ご自愛ください」と伝えることもあります。たとえば、以下のように伝えると良いでしょう。
・6月……梅雨冷えの肌寒い日が続いております。どうぞご自愛くださいませ。
・7月……猛暑の折、なおいっそうご自愛ください。
・8月……厳しい暑さが続きます。くれぐれもご自愛ください。
秋(9月・10月・11月)
9月・10月・11月の秋シーズンは、暑さは和らいでくるものの、次第に寒さがやってきます。たとえば、以下のように伝えると良いでしょう。
・9月……秋分の折、朝晩は冷え込みます。どうぞご自愛ください。
・10月……朝夕の冷え込みも募る頃、くれぐれもご自愛くださいませ。
・11月……めっきりと冷えこんで参りました。ご自愛くださいますようお願い申し上げます。
冬(12月・1月・2月)
12月・1月・2月の冬のシーズンは、寒さのつらい時期です。年賀状や寒中見舞いなどを送る際は、時節柄厳しい寒さが続くことに対して相手の健康を気遣う言葉を添えましょう。たとえば、以下のように伝えると良いでしょう。
・12月……年末に向けご多忙中とは存じますが、どうぞご自愛くださいませ。
・1月……どうかご自愛のうえ、素敵な一年をお過ごしください。
・2月……まだまだ厳しい寒さが続きます。どうぞお風邪など召されないようご自愛ください。
時節柄ご自愛くださいを正しく使おう
時節柄ご自愛くださいには、「このような季節であるため、健康に気を付けてください」というように、相手の体を気遣う意味が込められています。指示しているようなニュアンスのある「ください」があるものの、目上の人にも使えるため安心して伝えましょう。
時節柄ご自愛くださいを使う際には、「体調を崩している人には使用できないこと」「二重表現に気を付けること」「ご慈愛くださいと書かないこと」など、気を付けるべきポイントがあります。
また、時節柄ご自愛くださいと相手から伝えてもらった場合には、感謝を伝えたうえで、異なる表現で相手の健康を気遣う言葉で返しましょう。
言葉が持っている意味や気を付けるべきポイント、季節ごとの使い方などをしっかりとチェックして、さまざまな言葉を正しく使用できるようになりましょう。
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