「カタルシス」とはどういう意味？
「カタルシス」という単語を見聞きしたことはあっても、何となくの意味しか知らない人もいるかもしれません。正しい意味や語源、類語を紹介します。
（C）Adobe Stock
感情が浄化されるという意味を持つ
「カタルシス」という言葉は、主にふたつの意味で用いられています。
ひとつ目は、「日ごろ抑え込まれていた気持ちが解放され、晴れやかになること」です。物語に感情移入したときなどに用いられることが多く、日常ではこの意味で使われるのがほとんどです。
ふたつ目は、心理学用語としての「カタルシス」です。「嫌な出来事・ネガティブな感情を自由に表現することで、鬱積とした感情を取り除き、緊張状態を緩和すること」を指しています。
ギリシャ語が語源
「カタルシス」の語源は、ギリシャ語の「katharsis」です。元々は「排泄・浄化」などを指す言葉として使われていました。
現在日常的に使われる意味に至ったきっかけは、古代ギリシャの哲学者「アリストテレス」だといわれています。アリストテレスは、自身の著書である『詩学』の中で、「悲劇とは、恐れと憐れみによる感情の浄化である」というカタルシス論を展開しました。
これから意味が転じ、現在の「気持ちがすっきりすること」という意味で使われるようになったとされています。
英語では「catharsis」と表記され、日本語と同じように「気持ちがすっきりすること」「鬱憤とした感情を取り除くこと」といった意味のほか、「便通」という意味も持ちます。
「カタルシス」の類語
「カタルシス」という言葉で意味が伝わりにくい場合や、日本語に言い換えて表現したいときは、「心が洗われる」「魂が清められる」「心がきれいになる」といった表現に言い換えられるでしょう。
いずれも、「汚れた心やネガティブな感情がなくなり、気持ちが軽くなる」といった状態を表した言葉。「カタルシス」では聞きなじみがないという場合には、このような表現に言い換えてみてはいかがでしょうか。それぞれの言い回しを用いた例文は、以下の通りです。
・大自然を前にして、自分の悩みは小さなものだと心が洗われた気分になった。
・朝から家の中を隅々まで掃除して、魂まで清められた気がする。
・彼女の純粋な感情に触れて、私の心もきれいになったようだ。
「カタルシス」の使い方と例文
「カタルシス」は「気持ちがすっきりすること」という意味ですが、実際の会話や文章においてはどのような使い方をするのでしょうか？ 例文を用いて解説します。
（C）Adobe Stock
「カタルシス」の言い回し例
「カタルシス」を使った言い回しの例として、「カタルシスを感じる」「カタルシスへ誘う」「カタルシスがない」などが挙げられます。知らなければなかなか使いこなせない独特な言い回しなので、表現についても覚えておくと便利です。
ここでは芸術作品に触れた感想を語るときなど、日常的に使われるカタルシスを用いた表現を例文で確認してみましょう。
「カタルシス」の例文
●あの作家の書く文章を読むと、カタルシスを感じる。
日ごろ抑え込まれていた気持ちが解放され、晴れやかになることを「カタルシスを感じる」と表現します。読書をしたり、映画・ドラマを見たりした際の感想にも使える言い回しであり、覚えておきたい表現です。
●ショパンのメロディーを聞いていると、カタルシスへ誘われているようだ。
「カタルシスへ誘う」は、「すっきりとした気持ちへ導かれる」といった意味があります。
●期待して映画館に来たのに、まったくカタルシスがない作品だった。
「カタルシスが感じられない」ことを指して「カタルシスがない」と表す使い方です。気持ちをすっきりさせられず、不完全燃焼な状態を指します。
「カタルシス」の関連用語
「カタルシス」という言葉を使った関連用語も存在します。最後に、代表的な「カタルシス効果」の意味と、ビジネスシーンで使われる場面を紹介します。
「カタルシス効果」
「カタルシス効果」とは、不安・つらさ・悲しみなどネガティブな感情を表出することで、緊張を解きほぐしたり安心感を得ること。読書・映画鑑賞などで、その効果を得られることも少なくありません。
カウンセリングでよく用いられるほか、営業や販売、クレーム対応などの場面で活用されることも。また、同僚・部下とのコミュニケーションでも「カタルシス効果」の有用性が期待できるケースもあるでしょう。
意識してみると、さまざまなビジネスシーンで「カタルシス効果」が用いられていることに気づくかもしれません。
メイン・アイキャッチ画像：（C）Adobe Stock
▼あわせて読みたい
