シュールとは何のこと?
メディアやSNSなどで目にすることがある「シュール」とは、どのような意味の言葉なのでしょうか。意味を語源と併せて紹介します。また、混同しがちな「カオス」との違いも把握し、適切に使い分けられるようになりましょう。
シュールの意味
「シュール」は、「超現実的なさま」を表す言葉です。また、現実離れしている様子を意味する場合もあり、現実とかけ離れているなど、非日常的な発想や状況を表しています。
主に文学や芸術の分野で使われる傾向にあります。近年は、もともとの意味から派生して、独特の世界観や個性などに対する称賛の意を込めて使われることも珍しくありません。たとえば、シュールな映像・状況・夢・芸風などです。
シュール(〈フランス〉sur)
《「超」の意》
[名]「シュールレアリスム」の略。「シュールの詩人」
[形動]表現や発想が非日常的・超現実的であるさま。「シュールな建築物」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
また、SNSなどで使われる若者用語の一つで、少し変わっていたり珍しかったりするものに対して、シュールが使われる場合もあります。
語源はフランス語
「シュール」の語源は、フランス語の「シュールレアリスム(surréalisme)」とされています。フロイトの深層心理学の影響を受け、現実世界を超えて潜在意識下の幻想や夢などの世界を追求し、新しい道を生み出そうとした芸術思潮の一つです。
本格的にシュールレアリスムが始まるきっかけとなったのは、1924年に作家のアンドレ・ブルトンが刊行した「シュールレアリスム宣言」だといわれています。日本でも有名なルネ・マグリットやサルバドール・ダリも代表的な芸術家の一人で、多くの芸術家の作品に影響を与えました。
シュールレアリスム(〈フランス〉surréalisme)
20世紀を代表する芸術思潮の一。1924年に刊行されたブルトンの「シュールレアリスム宣言」に始まる。ダダイスムの思想を受け継ぎつつフロイトの深層心理学の影響を受け、非合理的なものや意識下の世界を追求、芸術の革新を企てた。ブルトンのほかに文学のアラゴン・エリュアール、美術のエルンスト・ミロ・ダリなどが代表的。超現実主義。シュールリアリズム。シュール。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
カオスとの違い
「カオス」は若い世代の人たちの間でスラングとして使われており、「無秩序でごちゃごちゃして、まとまりがつかない様子」などを表す言葉です。
カオスは「混沌」という意味の英語「chaos」をカタカナ表記にしたもので、もともとはギリシャ語の「秩序がなく、さまざまなものが混沌した様子」を表す言葉が語源になっています。
カオス(〈ギリシャ〉chaos)
1 ギリシャ人の考えた、宇宙発生以前のすべてが混沌こんとんとしている状態。混沌。無秩序。ケーオス。⇔コスモス。
2 特定の規則や微分方程式に従う系に生じる、不規則で乱雑な予測不可能な挙動。系自体は決定論的だが、系の変化が初期条件に極めて鋭敏に反応し、数値計算の誤差が時間の推移とともに増幅される非線形性をもつため、計算精度をいくら向上させても、事実上、正確に予測できない現象を指す。確率的な乱雑さとは異なるため、決定論的カオスともいう。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
どちらの言葉も「理解しがたい」という意味合いを持っていますが、「カオス」は無秩序で滅茶苦茶な様子を表すのに対し、「シュール」は奇抜で現実離れしている様子を表すニュアンスがあります。
シュールの使い方と注意点
言葉の意味を理解しても、使い方を知らないと正しく言葉を使いこなせません。「シュール」の使い方と注意点を確認しましょう。
シュールの使い方
「シュール」は、超現実的な状況や独創的な作品などを目にしたときに使います。特に、芸術や芸能分野で使われることの多い言葉です。実際にどのように使われているのか分かりやすいように、いくつか例文を紹介します。
【例文】
・シュールな夢を見たのは、昨夜見たSF映画の影響かもしれない
・空港にシュールなキャラクターがいて、多くの人が写真撮影をしていた
・あの監督が撮る映像はシュールで、それが人気の理由の一つだ
・あのコンビ芸人の漫才はシュールで笑える
このように、物事の状態を表す形容詞や形容動詞として使うのが一般的です。