「懇願」とはひたすらお願いすること
「懇願する」という言葉を知っているけれど、正しい意味は把握していないという人もいるでしょう。「懇願」はひたすらお願いすることの意。日常生活はもちろん、ビジネスシーンでも使うことがあるでしょう。
「懇願」の意味はもちろん、読み方や使い方も把握しておくといいですね。使う際の注意点や似ている言葉なども紹介しますので、参考にしてください。
意味と読み方
【懇願】
読み方:こんがん
ねんごろに願うこと。ひたすらお願いすること。「留学させてくれるよう親に—する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分の希望や、願いを一途にお願いするような場合に「懇願」を用います。「懇」は、「真心がこもる」という意味を持つ漢字。「真心をこめてお願いする」のが「懇願」です。そのため、ただお願いする、単にお願いすることを表すことには適しません。
「ねんごろ」「ひたすら」の意味も
意味の説明にある「ねんごろに願う」と、「ひたすら願う」の意味も見ていきましょう。
「ねんごろ」とは、心がこもっているさまや、親身であるさまを表す言葉。漢字では「懇ろ」と表記します。あまりなじみのない言葉かもしれませんが、「懇」と近い意味を持つことがわかりますね。
「ひたすら」という言葉は、知っている人も多いでしょう。「ひとすじに」や、「いちずに」「まったく」「すっかり」という意味があります。そのことだけに意識を向け、それだけを行なうさまを表す際に用いるのがいいでしょう。
「ねんごろに願う」は「心をこめて願う」、「ひたすら願う」は「ひとすじに願う」「いちずに願う」という意味を表すと考えてください。
「懇願」の使い方は?
「懇願」という言葉の使い方を見ていきましょう。例文を紹介しますので、参考にしてくださいね。
【例文1】海外留学したいと子どもに懇願され、しぶしぶ許した
子どもが留学することを反対したけれど、懇願されたので最終的に許したということを表す例文です。進路を決める上で、親と子の意見が分かれることは少なくないでしょう。本音は反対だが、子どもに「懇願」されたから、許さざるをえなかったというのはよくあることかもしれません。
【例文2】知人にお金を貸してくれと懇願されたが、心を鬼にして断った
借金をさせて欲しいと必死にお願いされ、相手がかわいそうだと思いつつも厳しい態度で断ったさまを表しています。「懇願」したら相手の心や決意が変わるとは限りません。「懇願」する相手を思い、あえて受け入れないということもあります。
【例文3】お詫びをしたいと懇願したが、受け入れてもらえなかった
何かしらの出来事により相手に迷惑をかけ、そのことを謝りたいと懸命にお願いしたが、相手に拒絶されたことを表す一文です。「懇願」は「する」「される」のどちらでも使える言葉。「懇願する」は自分が相手に対してお願いすること、「懇願される」は相手にお願いされていることを表します。
使い方の注意点
「懇願」は、日常だけでなくビジネスシーンでも使えます。「懇願」は、真剣なお願いや頼みごとに対して使う言葉。上述したように「ただ願う」「単に願う」ことを表すのには適しません。気軽なお願いの場合は、別の表現を用いる方がいいでしょう。
また「懇願」を多用するのもNG。かえって軽薄な印象になる可能性があります。何度も「懇願」を使うのは避ける方がいいでしょう。
「懇願」は、ここぞという場面で使う言葉。「懇願」を使うシーンやシチュエーションはよく考えて選ぶようにしてください。
「懇願」と似ている言葉を紹介
ここからは、「懇願」と似ている言葉を見ていきましょう。意味や読み方を例文とともに紹介します。
「嘆願」
「嘆願」は、事情をくわしく述べて熱心に頼むことを意味します。読み方は「たんがん」。「懇願」と同じ意味のように思いますが、厳密に言えば異なると言えるでしょう。
「嘆願」には「事情をくわしく述べる」という意味があり、組織などに要望や希望を伝えるために使う「嘆願書」には、特定の要求や希望が明記されます。一方の「懇願」には「事情をくわしく述べる」という意味は含みません。
《例文》彼の処罰を軽減するよう嘆願したが、聞き入れられることはなかった
「哀願」
「哀願」は、事情を述べて相手の同情心に訴え、ひたすら頼むことを表す言葉。「あいがん」と読みます。意味としては「嘆願」に近いでしょう。「ひたすら頼む」という点では「懇願」にも似ています。
《例文》彼女に行かないで欲しいと哀願したが、彼女は旅立って行った
「懇請」
「こんせい」と読み、心を込めてひたすら頼むことや、その頼みを意味する言葉です。「懇願」と、とても近い意味を持つ言葉と言えるでしょう。言い換え表現としても使うことができます。
《例文》援助を懇請しているが、まだ返答はない
「哀訴」
「哀訴」は、同情を引くように、強く嘆いて訴えることを表します。「哀願」とほぼ同義と考えていいでしょう。読み方は「あいそ」。
《例文》心の中では何度も哀訴しているが、うまく言葉にできない
「切願」
「せつがん」と読むこの言葉には、心から願うことという意味があります。「切に願うこと」を表すため、「懇願」よりも願望のニュアンスが強いと言えるでしょう。
《例文》全世界の人々が切願するのは、平和な日々が続くことであろう
「懇願」の英語表現は
「懇願」の英語表現もチェックしましょう。さまざまな表現から、いくつかピックアップして紹介します。例文も参考にしてくださいね。
「懇願」「懇願する」の英語表現
▷「entreaty」
「懇願」を意味する英語表現です。
《例文》
Her entreaty was accepted.
(彼女の懇願は受け入れられた)
▷「beg」
「懇願する」を意味します。
《例文》
He begged many times, but his father would not forgive him.
(彼は何度も懇願しましたが、父親は許してくれませんでした)
▷「implore」
この英語表現も「懇願する」という意味です。
《例文》
He implored her for another chance.
(彼は彼女にもう一度チャンスをくれと懇願した)
最後に
「懇願」の意味や使い方、似ている表現、英語表現についてまとめました。「懇願」は「ねんごろに願う」や「ひたすら願う」という意味の言葉。「なんとなくお願いをする」「単純に願う」という場合には使いません。また「嘆願」と似ていますが、厳密に言えば「懇願」とは意味が異なります。ニュアンスの違いを把握し、適切に使い分けたいですね。
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