ニュース番組などで政治家が、「大変遺憾ながら…」などと話しているのを聞いたことはありませんか? 固い表現なので、実際に使うことはないものの、「遺憾とはどんな意味だろう?」と疑問に思ったことがある方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、「遺憾」の意味や使い方、類語などを解説します。
「遺憾」とは?
「遺憾」は「いかん」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。
[名・形動]期待したようにならず、心残りであること。残念に思うこと。また、そのさま。「―の意を表する」「万―なきを期する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
思い通りにならず、残念に思うことを「遺憾」と言います。何か想定していたことと違っており、計画が思い通りに進まなかった時や、期待していたような結果が出なかった時などに、「大変遺憾ではありますが…」などと表現します。また、不祥事を起こした時の釈明や、非難する時などに使われる場合もありますね。
使い方を例文でチェック!
「遺憾」は、政治やビジネスシーンなどで聞く機会の多い表現です。無念さが強調されたり、非難の意味合いが強くなるなど、状況によって意味合いが多少変化することも頭に入れておくといいでしょう。
1:遺憾ではございますが、今回は採用を見送りとさせていただきます。
「遺憾」は、選考結果の連絡をする際に用いられます。「誠に遺憾ではございますが」と前置きをすることで、相手に不快感を与えないためのクッション言葉になりますね。せっかく面接を受けた相手に対して、申し訳ないという気持ちを込めて使うこともあります。
2:会社のトップである〇〇が、不適切な発言をしたことに関しまして誠に遺憾に思います。
会社の不祥事による謝罪会見などでは、「誠に遺憾に思います」などと表現することも。同じ会社に勤めている者が、このような不祥事を起こして心苦しく思っている場合に使われますね。感情の強弱により、「極めて遺憾」「大変遺憾」などと言い換えられることも。
3:ウイルス拡大により、大会が見送りになったことは大変遺憾であります。
災害やウイルスの蔓延など、人の力ではどうしようもない出来事の影響で、計画が中止になることも。突然予期せぬ事態に襲われて、当初計画していたことが全て台無しになってしまうことは、とても残念なことですよね。
類語や言い換え表現は?
思い通りにならず、不満や物足りなさを感じた時に、「残念」や「心残り」などと言うこともあるでしょう。「遺憾」はやや固い表現であるため、日常会話で言い換えられる言葉を合わせて覚えてみてください。
1:残念
「残念」は、「遺憾」の言い換え表現としてよく用いられますね。馴染みのある言葉ではありますが、改めて意味を確認していきましょう。
[名・形動]
1 もの足りなく感じること。あきらめきれないこと。また、そのさま。「―なことをしてくれた」
2 悔しく思うこと。また、そのさま。無念。「負けて―だ」
3 俗に、すぐれた素質や長所などをもちながら、それが発揮できなかったり、相殺されるほどの大きな短所を併せもったりしているさま。また、単に、良くないさま。「―なアイデア」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「残念」はさまざまな場面で聞く言葉ですが、2番の意味のように、やっていたことがうまくいかず、「悔しい!」と感じた時に使うことが多いかもしれませんね。無念であるという感情が「遺憾」と共通しています。
(例文)
・釣りをしていた兄は魚に逃げられて「残念! 逃げられた」と言った。
・残念なことに2人は破局してしまった。
2:心残り
「心残り」とはどのようなことでしょうか? 意味を見ていきましょう。
[名・形動]あとに思いが残ってすっきり思い切れないこと。また、そのさま。未練。「―なのは幼い子供を残していくことだ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
心配や未練、不満などの思いが残ることを「心残り」と言います。頭では納得しているつもりでも、気持ちの上で断ち切れないままになっている状態のことですね。
例えば、「好きな人に告白しないまま、相手が引っ越してしまった」という場合、「離れてしまう前に、勇気を持って告白しておけばよかった」と感じることでしょう。このように後悔や未練を引きずっている状態と言えそうです。
(例文)
・親の最期を看取れなかったことが私の心残りです。
・心残りのないよう、存分にやり切りなさい。
3:痛恨
「痛恨(つうこん)」の意味は、以下の通りです。
ひどく残念がること。たいへんうらみに思うこと。「―の極み」「―の一投」「―事」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
非常に残念であることを強調したい時に、「痛恨の極み」などと表現することがありますね。野球などの試合で、チャンスボールを逃したり、点数を取れなかった選手をアナウンサーがこのように表現することもあるでしょう。やや文語的な表現なので、会話の中では「悔しかった」「とても残念だった」などと言い換えられることが多いでしょう。
(例文)
・優秀な彼が怪我をしてしまったことは痛恨に耐えない。
・A選手が途中で欠場してしまったことが痛恨であった。
英語表現は?
「遺憾」の英語表現の1つとして「regret」があります。「regret」は、「残念」「遺憾」「後悔」という意味。過去の行動や決断に対して後悔している時や、何かがうまくいかなかったことに対する遺憾の意を表すこともありますね。
(例文)
・It is a matter for regret that such accidents should happen so frequently.(こういう事故が頻発するのは遺憾なことだ)
・The company issued a statement of regret for the inconvenience caused.(その会社は不便に対する遺憾の意を表明した)
最後に
「遺憾」とは、期待したようにならず、心残りであること。「大変遺憾である」「誠に遺憾ながら」などと表現します。主に「とても残念だ」と感じている時に、使う傾向がありますが、状況によっては謝罪や非難する時など、意外と広範囲で使われます。言葉の意味を覚えて、ビジネスシーンで活用してみてはいかがでしょうか?
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