体の調子が悪い人に、「早く病気がかいふくするといいですね」と声をかけることがありますよね。この時の「かいふく」には「快復」と「回復」、2つの言葉があり、どちらを使うのが適切なのか迷った経験がある方も多いでしょう。意味もよく似ていますが、実は異なる点もありますので、状況に応じて使い分けてみてください。
本記事では、「快復」と「回復」の意味の違いや、使い方、類語を解説します。
「快復」とは?
「快復」は、「かいふく」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
[名](スル)病気がなおること。「傷が―する」「―期」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「快復」とは、「病気がなおること」。「傷が快復する」「風邪が快復する」など、病気や怪我が完治することを表します。「快」は、「気持ちが良いこと」「喜ぶこと」という意味。「復」は、「引き返す」「元に戻る」などの意味があり、2つの漢字を組み合わせて「気持ちがいい状態に戻る」という意味合いになります。
「快復」はあくまでも「病気がなおること」なので、病気以外の信用や景気に対して用いることはありません。
使い方を例文でチェック!
どのような状況で「快復」を使うのが適切なのか、一緒に確認していきましょう。
1:風邪が快復したので、来週から出勤できそうです。
「快復」は、「風邪が快復する」「頭痛が快復する」というように使います。体の不調がなおり、痛みやだるさなどがない状態を指しますね。病気がなおったと伝えることで、周りの人もほっと安心するでしょう。
2:医者からは全治2か月の怪我だと聞いているが、3か月経った今でも快復していない。
病気や怪我の状況から「このくらいでなおる」という予測はつけられるものの、快復には個人差があります。「まだ快復していない」ということで、完全に怪我がなおっていないことがわかりますね。
3:お身体のご不調、おうかがいいたしました。ご快復を心よりお祈り申し上げます。
職場の上司や同僚が体調不良や病気になった際は、例文のようにお見舞いの意を伝えます。相手の健康や幸福を願う言葉です。状況に応じて、「1日でも早くご快復されることをお祈りしています」「今はゆっくりと休養をとってください」など相手を労わる言葉を添えるといいですね。
「回復」の意味と使い方
続いて「回復(かいふく)」の意味を見ていきましょう。
[名](スル)
1 悪い状態になったものが、もとの状態に戻ること。また、もとの状態に戻すこと。「健康が―する」「ダイヤの乱れが―する」「疲労―」
2 一度失ったものを取り返すこと。「名誉を―する」「信用―」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「回復」は、「状態が悪いものが、元に戻ること」「一度なくしたものを取り戻すこと」を意味します。「回」には、「回転する」「めぐる、まわる」などの意味があることから、「回復」は、「元の状態に戻ること」に対して使われます。景気や名誉が元に戻る際にも使用できますから、病気がなおることを意味する「快復」よりも、使える範囲が広い表現といえますね。
また、「回復」は、あくまでも「元の状態に戻ること」。「健康が回復する」「疲労回復する」というのは、元の状態に戻ってきたという完治する過程を指します。「快復」のように、「病気が完治した」という意味合いとはややニュアンスが異なりますので、その点を押さえておきましょう。
(例文)
・祖父の病気に回復の兆しが見えてきた。
・兄の怪我はだんだん回復してきたが、まだ全快には至らない。
・今は、失った信用を回復させることが肝心だ。
・雪の影響によるダイヤの乱れが回復する。
類語や言い換え表現は?
病気の進行状態を表す言葉には、「治癒」「快方」「全快」などがあります。それぞれどのような状態を指すのかチェックしてみましょう。
1:治癒
「治癒(ちゆ)」の意味は、以下のとおりです。
[名](スル)病気やけがなどがなおること。「足の傷が―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「治癒」は、「病気や怪我がなおること」。「病気が治癒する」「指の切り傷が3日で治癒した」というように使います。意味は、ほぼ「快復」と同じですが、やや硬い表現なので話し言葉では「快復」が使われることの方が多いでしょう。
(例文)
・この患者の病気は治癒の見込みが立たない。
・早めに消毒をしたおかげか、足の傷が早く治癒した。
2:快方
「快方(かいほう)」の意味は、以下のとおりです。
病気や傷がだんだん治ってくること。「病状が―に向かう」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「快方」は、病気や傷の状態がだんだんよくなっていくことを指します。病気がなおってきて希望が見えてきた時に「病状が快方に向かう」というように表現されることが多いですね。病気が完治する過程で使うところがポイントです。
(例文)
・あの患者の病気は快方に向っているそうだ。
・祖父の病気が快方に向かっていると聞いて安心した。
3:全快
「全快(ぜんかい)」の意味も確認していきましょう。
[名](スル)病気や傷が完全に治ること。「一日も早く―してほしい」「―祝い」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
病気や怪我がすっかりなおることを「全快」と言います。「父の病が全快した」という場合は、父親の病気が完治したということになりますね。お見舞いに来てくれた人などに、お礼と報告を兼ねて「全快祝い」を贈る方もいるでしょう。
(例文)
・兄の骨折は、全快するまであと2週間の療養が必要だそうだ。
・1日も早く全快してほしい。
英語表現は?
英語で「病気がなおる」「完治した」などと表現したい場合は、「全快」を意味する「recover completely」や「get well(なおる)」などを使うといいでしょう。「recover」は、「快復する」「completely」は「完全に、完璧に」という意味になります。
・Has he recovered completely?(彼はもう全快しましたか?)
・I hope you will get well soon.(ご全快が一日も早いことをお祈りいたします)
・Three more weeks’ medical treatment is needed for him to make a complete recovery.
(全快までにあと3週間の療養を要する)
最後に
「快復」とは、「病気がなおること」。怪我や病気など、体に起きる不調がなおる場合に使用します。対して、「回復」は、景気や信用など、病気以外の状態が良くなる時にも使うことを覚えておくと、違いを理解しやすくなるでしょう。病気の状態に応じて、「快復」や「回復」「快方」などを使い分けてみてはいかがでしょうか?
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