入社したばかりのスタッフに横領されてしまったことが今の事業に転換するきっかけとなりました。
今月の女:寺脇加恵さん
株式会社GlobeCaravan 代表取締役・ケータリングシェフ・42 歳
開業当初は、想定していた3倍の調理時間に苦闘しました
人生には“まさか”という坂がある。当時ハイメゾン専門のアンティーク輸入事業を運営していた寺脇さん。買い付け先のパリから戻ると、なんとスタッフが1500万円相当の在庫や台帳を持ち逃げしたことが発覚する。
「開業10年でやっと収穫期に入った矢先のできごとで、大きなショックを受けました」商品を転売し借金返済した従業員を警察に突き出してもお金は戻らない。金銭消費貸借契約を結んで返済を求めても雲隠れされる。寺脇さんのここからの巻き返しは見事だった。「もう在庫商売ではない事業をつくろうと思い、洋服の次に好きな“飲食業”に転身しました。アパレル時代に培ったリソースを活かせれば素人でも勝算があると考えたのです」
料理好きで食通だが厨房経験はない。しかしファッションやメディア業界の人脈に強く、海外のレセプションパーティ経験も豊富だ。まずは少人数のフィンガーフード提供から始めようと、ケータリング案内を告知した。すると仕事をするたびに参加者から新たな案件を頼まれる。手がける料理の幅広さや、空間演出までひとりで請け負うスタイルが口コミで人気となり、今では年間100件以上の依頼があるとのこと。大使館との食育イベントから社会人陸上選手の海外合宿帯同シェフまで、仕事の幅もダイナミックに拡大している。
「父の影響で15年ほど空手をしていたので、人並み以上に丈夫なんです。この仕事は手作業なので確かに大変ですが、パッとつくってパッと消えてしまうところがいいですね」
人任せにせず、すべて自分でつくりあげる。寺脇さんの思いと気合いのこもったフードは、今日もさまざまな場を盛り上げている。
Profile
てらわき・かえ/1976年、神奈川県生まれ。上智大学法学部卒業。在学中にハイブランドのアンティークを扱うアパレル輸入会社を設立。買い付けで世界50か国を回る。30歳で飲食業に転向。飲食店のメニュー開発や食品メーカー調味料開発、カスタムオーダー型のケータリングを受注する。33歳より「IWCJ財団」の副理事を務め、各国大使館と子供対象の食育イベントも開催。週末はパートナーと食事をつくるのが楽しみ。
Domani2018年12月号『女[独身]、妻[既婚子供なし]、母[子供あり]Catch! 働くいい女の「木曜14時』より
本誌撮影時スタッフ: 撮影/ 真板由起( N O S T Y ) ヘア& メーク/ 今関梨華( P – c o t t ) 構成/ 谷畑まゆみ