きっかけは“うつかもしれない”と感じたこと
「2年前に“もしかして、これはうつの徴候かもしれない”と感じたことがあったんです。部下から“この案件、どうしましょう?”と聞かれても、いつものように即断即決することができずに“うーん。考えとく”とか、“明日にしよう”などと先延ばしにしてしまう。ふと気づくとそんなことがけっこう続いて、何か考えて決断することがすごくおっくうになっている自分に気づいたんです。気分の落ち込みもずっと続いていました。
これまで“健康でパフォーマンスの高い働き方”を、働き手の目線で考えるプロジェクト「FROM PLAYERS」事務局担当など、健康領域にかかわる仕事に携わってきたおかげで、うつについての知識も少しもっていました。“これはこのままほおっておいてはいけない。何か手を打たなければ”と、カウンセリングを受けられる心療内科を探しました。そんなとき、偶然参加したイベントにメンタリングをしている方がいらしたんです。直感的に“この人に話を聞いてほしい”と思い、その場で受けることを決めました。
メンターとの定期セッションで心と思考の枠をゆるめる
すると そのとき抱えていた個人的な悩みや仕事の困りごとなど、ひとつひとつの悩みにフォーカスしてじっくり話を聞いてもらえて、頭と心の整理ができたのです。思いきって受けてよかったと思えました。その後1年くらい定期的にセッションを受けるうちに気持ちが徐々に落ち着き、悩みごとができたり困ったことが起きても、むやみに落ち込んだりすることはなくなりました。
けっこう元気になってきたのでしばらくやめていたのですが、またちょっとしんどくなることがあって再開しました。誰かに話を聞いてもらいながら自分の考えを整理する時間をもつことは、ビジネスパーソンが安定したパフォーマンスを保ち続けていくうえでも非常に大切なことだと感じて継続しています。
メンタリングのいいところは、メンターの方に自分の考え方や行動のくせを指摘してもらうことで、自分を客観視できるようになることでしょうか。自己理解が進む“心のヨガ”みたいなイメージもありますね。常に肩肘張って生きてきたわけでもないのですが、無意識のうちにひとりで頑張ろうとしていたのかもしれません。今は“しんどくなったときに人の手を借りるのは、すごく自然なこと”だと思っています」(八木さん)
写真は、Domani2019年4/5月号『新連載 女の時間割』より
撮影/ 真板由起(NOSTY) ヘア& メーク/ 今関梨華(P-cott)
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取材・文
谷畑まゆみ
フリーエディター・ライター。『Domani』連載「女の時間割。」、日本財団パラリンピックサポートセンターWEBマガジン連載「パラアスリートを支える女性たち」等、働く女性のライフストーリー・インタビュー企画を担当しています。