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2020.04.17

「32歳での方向転換を機に人生の舵は自分で切るように」フラワーアーティスト、SUDELEY代表 前田有紀さんの場合【女の時間割】

女には3つの顔、3つの時間割がある。フラワーアーティストとして活躍する前田有紀さんの「女」「母」「妻」の時間についてうかがいました。

Text:
谷畑まゆみ
Tags:

フラワーアーティスト
SUDELEY代表・39歳
前田有紀さん

「女」時間

仕事ではフラワーアーティスト、経営者、バックヤードの事務方と3つのポジションで奮闘しています

「フラワーアーティストとして創作活動を行いつつ、オリジナルフラワーブランド運営会社の代表も務めています。事務や経理もすべて自分で担当。右脳と左脳を行ったり来たりしながらの日々は毎日が真剣勝負です」

「妻」時間

休日に夫とふたりでお茶の時間をもつのは結婚当初からの習慣です。今は息子のお昼寝タイムにこっそり楽しんでいます

「仕事の立場上、さまざまな顔の自分でいなければならないシーンが増えてきました。でも、夫の前でだけは素の自分でいられるのがありがたいです。リビングでのんびりふたりでお茶を飲むひとときをとても大切にしています」

32歳での方向転換を機に人生の舵は自分で切るようになりました

アナウンサーの世界を離れて、生花やドライフラワーで空間を華やかに演出するフラワーアーティストに転身した前田有紀さん。朝4時半に起きて5時に鎌倉の家を出たら、車で都内の生花市場に向かいます。買い付けた花は依頼先へ装飾花として搬入したり、表参道のオフィスでスタッフと作品制作に用います。仕入れる生花は20〜30種類を300本前後。イベントやプレス発表会の装飾花を依頼されたときには、ドライフラワーなども含めて1000本ほど準備するのだそう。

「日常生活に花を取り入れる楽しさをもっと知ってもらいたくて、フラワーアーティストを軸にいくつかの事業を展開しています。そのひとつが移動花屋の『gui(グイ)』です。フランス語でヤドリギという名前どおり、週末さまざまな場所に出店させてもらっています。人は必要がないと花屋さんには行きませんよね? そこで“こちらから出合いに行く”というコンセプトを思いつきました。

また“花と人との出合いの場”をさらに広げていくために企業やお店とコラボをするBtoB的な事業も手がけています。コラボしたい相手先の公式ページの問い合わせフォームから自分でオファーをすることも。私と社員を含めた5人のチームで、ひとつひとつの仕事に真摯に取り組んでいるところです」

能動的に仕事に取り組む前田さんが前職を辞めたのは、入社10年目を前にした32歳。

「忙しく不規則でしたが、充実した日々でした。でも当時は周囲の期待に応えたい気持ちが強く、受け身になりがちな自分に気がついたんです。本当にやりたいことはなんだろうと考えたときに浮かんできたのが、昔から好きだった花や植物に関わる仕事をしたいという想い。両親には反対されました。私自身も不安でした。でもその不安を“違う人生を歩む自分を見てみたい”という好奇心が上回ったときに、転職をはっきり決意できたのです」

「母」時間

最近イヤイヤ期が始まったのですが息子は自然が好きなのか緑のある場所を散策するとご機嫌になるようです

「ふだん一緒にいる時間が少ないぶん、休日は息子とゆっくりお散歩します。お寺に行ったり海辺の公園に行ってみたり。花が好きみたいで、いつの間にか名前をたくさん覚えていることに気づいたときはうれしかったです」

何か思い悩むことがあっても家族と自然が勇気をくれる

現在鎌倉暮らしを始めて2年半の前田さん。“自然や文化が身近に感じられるような街で子育てをしたい”気持ちが夫婦で一致したのがこの地を選んだ理由だそう。

「通勤に時間がかかるので、確かに仕事との両立は大変です。ですが鎌倉暮らしに今のところゆらぎはありません。自然に包まれるような暮らしを楽しんだり、気心の知れた人たちの中での子育てに安心感を得ています。その一方で、ときどきすべてが中途半端に思えて、少し苦しさを感じることもあったりします。アーティストとしてもっといい作品をつくりたいし、経営者として未熟な部分を成長させたい。子育ても本当はもっと子どもと一緒に遊びたいのに時間的に難しい…。自分が望んで好きな仕事をしているのだからなんとか道筋をつけてやり遂げたいし、困難や壁があっても“花が好きだ”という気持ちが上回れば乗り越えられる気がするんです。

会社員時代は人と比べたり自分がどう見られるかを気にしていました。でも本当に好きなことに出合ってからは、たとえ土いじりで泥だらけでも、水揚げで手に赤ぎれがたえなくても、やりたいことができている今を幸せに思えるようになってきました。何か仕事で悩むことがあっても、ゆったり流れる時間や自然、そして家族が“そんなのたいしたことじゃない”と思わせてくれるのです」

前田有紀さん

まえだ・ゆき/1981年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、テレビ朝日に新卒入社。『やべっちF.C.~日本サッカー応援宣言~』の進行アシスタントを始め、番組アナウンサーとして多方面で活躍する。留学のために32歳で退社して、渡英。語学学校やフラワースクールに通った後、ガーデニングのインターンなどを経験。帰国後に東京・自由が丘の生花店「ブリキのジョーロ」で勤務。34歳で結婚。35歳でフラワーアーティストとして独立、長男を出産。現在はオリジナルフラワーブランド『gui』を展開。イベント出店や空間装飾・装花、ウエディングからディスプレイまで手がける。

テキスト

谷畑まゆみ

フリーエディター・ライター。『Domani』連載「女の時間割。」、日本財団パラリンピックサポートセンターWEBマガジン連載「パラアスリートを支える女性たち」等、働く女性のライフストーリー・インタビュー企画を担当しています。

Domani2020年2/3月号(2019年12月28日発売)『女の時間割』より転載
撮影/真板由起(NOSTY)スタイリスト/角田かおる ヘア& メーク/今関梨華 構成/谷畑まゆみ 

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