秋の終わりの風物詩、酉の市とは?
秋も終わりに近づいてくると、ちらほらと酉の市の話題を耳にするようになります。しかし具体的な内容までは、意外に知られていないかもしれません。酉の市が開催される日時や場所、起源について見ていきましょう。
11月の酉の日に東京を中心に開催
酉の市は11月の「酉の日」に、主に「とり」にゆかりのある神社や寺で開催される年中行事です。「酉の日」は十二支にもとづいて定められた暦上の日付で、12日おきにめぐってきます。
このため11月に酉の日が2回ある年もあれば、3回めぐってくる年もあり、酉の市が開催される日程も年によって変わるのです。ちなみに、1回目の酉の日は「一の酉」、2回目は「二の酉」、3回目日は「三の酉」といいます。
酉の市は、東京都内の神社で始まったとする説が有力です。現在も酉の市を開催する寺社は、東京を含む関東近郊に集中しています。関東以外では、大阪や名古屋、静岡の酉の市が有名です。
2024年の「酉の日」はいつ?
2024年の酉の日は3回あります。一の酉が11月5日(火)、二の酉が11月17日(日)、三の酉が11月29日(金)です。
酉の市は酉の日の前日を「前夜祭」当日を「本祭」として2日間にわたって行われることが多いため、行く予定の神社でスケジュールを確認してから行くのが良いでしょう。
起源にはいろいろな説がある
酉の市の起源については、いろいろな説があります。神道では「大鳥神社」(または「鷲神社」)の祭神「日本武尊(ヤマトタケルノミコト)」の命日に行う祭礼が起源であるとしています。日本武尊の命日が11月の酉の日だったため、祭礼に立つ市を酉の市と呼ぶようになったそうです。
仏教では、日蓮宗を開いた日蓮上人が11月の酉の日に国家の平穏無事を祈った際、「鷲妙見大菩薩(わしみょうけんだいぼさつ)」が現れたことを起源としています。
宗教に関係なく、江戸時代の農民による収穫祭が起源という説も有力です。東京都足立区の「大鷲神社」に、近隣の農民が秋の収穫を感謝して鶏を奉納したのが始まりとされています。
三の酉の年は火災が多いって本当?
「三の酉がある年は火災が多いと」今も言われていますが、この説に根拠はなく、実際に、火事が増えた記録もありません。
「火災が多い」と並んで「吉原遊廓に異変が起こる」とも言われている三の酉ですが、11月の酉の大祭には吉原の大門を開けて手軽に入れるようにしていたことから来ている説が有力とされています。参詣の帰りに男性が吉原に寄ることが多く、これを何としても食い止めたいという妻の想いから「火災が起こる」「異変が起こる」として吉原に向かう足を止めようとしたのです。3回も酉の日があるとなれば留守を預かる女性としては心中穏やかでないでしょうから、俗信を作って家に帰らせようとしたのでしょう。
参照:東京消防庁ホームページ
買ってうれしい、酉の市の縁起物
酉の市では商売繁盛や出世、子孫繁栄など、福を呼び込む「縁起物」がたくさん売られています。屋台をひやかしながら縁起物を買い求めるひとときは、酉の市ならではの楽しみです。
酉の市に行くならぜひ買っておきたい、縁起物を3つ紹介します。
福をかき集める「熊手」
酉の市といえば、華やかなデザインの「熊手」が有名です。期間中は境内にさまざまな趣向をこらした熊手が並び、見ているだけでも楽しめます。
熊手が縁起物になった理由にもいろいろあり、落ち葉を集めるときに使うので「運や金をかき集める」という説や、日本武尊が遠征の帰りに熊手を持って戦勝報告したから、という説も有力です。
また、熊手を買うときは、店主に値切り交渉をするのが粋な買い方です。値切った価格で買ってから、定価との差額をご祝儀として渡します。店主とのやり取りを通して江戸っ子気分を味わえる、通のやり方です。
出世や子宝を意味する「八頭」
「八頭(やつがしら)」は里芋の親芋のことで、「頭の芋(とうのいも)」とも呼ばれています。
名前やたくさんの芋ができる様子から「人の頭に立てる」「子宝に恵まれる」として、古くから親しまれている縁起のよい食べ物です。
酉の市の屋台では、蒸した八頭を笹に通したものが縁起物として売られることもあります。