2024年の彼岸入りは?
日本に古くから受け継がれる風習の1つである「お彼岸」は、春と秋の年2回あります。お彼岸は1日だけではなく数日の期間で、お彼岸がスタートする日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」と呼びます。
2024年の彼岸入りはいつなのかご紹介します。
参照:何年後かの春分の日・秋分の日はわかるの?|国立天文台(NAOJ)
春の彼岸入りは3月17日
2024年の春の彼岸入りは、3月17日(日) です。国民の祝日「春分の日」を中日とした前後3日、計7日間の「3月17日から3月23日」が、春のお彼岸の期間に当たります。
春分の日は、毎年同じ日付ではありません。春分の日は地球と太陽の動きによって定まるため、国立天文台が観測・算定を行い、前年の2月1日に発行される官報の「暦要項」で確定した日付が発表されます。秋のお彼岸の中日である「秋分の日」も同様です。
春分の日は、「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日として制定された国民の祝日です。暦の上では「春分」から春になり、「春分」は春の中間地点にあたります。春のお彼岸を過ぎると暖かさが増し、春爛漫の時期を迎えます。
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秋の彼岸入りは9月19日
2024年の秋の彼岸入りは9月19日 (木) です。お彼岸の中日である「秋分の日」は、春分の日と同じように暦要項で発表され、2024年は9月22日(日)です。秋のお彼岸の期間は「9月19日から9月25日」となります。なお、春分の日も秋分の日も、昼と夜の長さがほぼ同じになるのが大きな特徴です。
秋分の日は、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」日として制定されました。また、ちょうど農作物の収穫時期に当たるため、秋の実りに感謝する意味も込められています。昼と夜の長さが同じ秋分の日を過ぎると、太陽が沈む時間がだんだん早くなり、秋が深まっていきます。
仏教の教えでは、この世は東に、あの世は西にあるとされ、「太陽が真東から登り、真西へ沈んでいく」秋分の日と春分の日は、この世とあの世が最も通じやすくなるとされています。そこで、先祖供養をするためにお墓参りに行くようになりました。
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お彼岸は何をする日?
お彼岸というと「家族でお墓参りに行く行事」として認識している人も多いでしょう。幼いころから祖父母や親についていくので、行事のことをよく知らないまま習慣づいているかもしれません。
お彼岸とはおもに何をする日なのでしょうか?
先祖を供養する
仏教では、私達が生きているこの世を「此岸(しがん)」、あの世を「彼岸」と呼び、あの世は欲や迷いから解放される仏様の世界と説いています。前述の通り、彼岸は西の方角にあると考えられ、太陽が真西へ沈む春分の日と秋分の日は、あの世と最も通じやすいと考えられています。
そのため、ご先祖様と向き合うのに適するとされ、家族でお墓へ出向き、掃除をしたりお供えをしたりして、先祖供養をするようになったのです。ご先祖様を敬い、感謝する意識を持って墓前に手を合わせることが大切です。
お墓参りはいつ行くのが最適?
「お彼岸」と呼ばれる期間は7日間ありますが、どこでお墓参りに行くのがよいのかと考える人もいるかもしれません。答えとしては、期間内であればいつでもよいとされます。期間中毎日行く必要はなく1日だけでよいため、好きなタイミングを選んでお墓参りへ行きましょう。
一般的な傾向として、国民の祝日でお彼岸の中日でもある、春分の日または秋分の日に墓参りへ出かける人が多いようです。また、期間内の土日も混雑しやすい傾向があります。
しかし、仕事の都合や、住んでいる地域からお墓が遠方にあるなど、簡単にお墓へ行けないケースもあるでしょう。そういうときは、仏壇にお供え物をしたり、手を合わせるだけでもよいのです。大切なのは、いつも以上に「先祖を敬う気持ち」を持つことです。
精進料理を食べる
お彼岸の期間中、肉や魚など動物性の材料を省いた「精進料理」を仏壇に供え、自分たちでもいただきます。精進料理はもともと修行僧の料理で、直接口に入れる食材から、味付けの素になる出汁までも、動物性のものは使いません。仏教の教えでは「殺生」を禁じているためです。また、煩悩を刺激しないよう、ネギやにんにく、ニラなど臭いの強い食材は、植物性であっても精進料理に使用しません。
普段の食事と比べると質素で味気ないように思えますが、手間をかけることで「素材本来のおいしさ」に気付けるはずです。体に優しい食材だけを使い、健康的な献立でもある精進料理の作り方を覚えておくと、日々の調理にも役立ちそうです。
お供え物にまつわる豆知識
お彼岸が近づくと、商店やスーパーでは「ぼたもち」や「おはぎ」、仏花として「菊の花」が売り出されます。同じ食べ物なのに「ぼたもち」「おはぎ」と呼び方が変わる理由をご存知ですか?また、なぜ「菊」はお供えの花の定番なのでしょうか。
お彼岸にまつわるトリビアを見ていきましょう。
「ぼたもち」と「おはぎ」の違い
「ぼたもち」と「おはぎ」は、どちらも炊いたモチ米をつぶして丸め、あんこで包んだものです。「ぼたもち」は春に咲く「牡丹の花」、「おはぎ」は秋に咲く「萩の花」にちなんで名付けられました。
また、あんこの原料である小豆は秋に収穫されるため、皮が柔らかい秋は「粒あん」でおはぎを作り、冬を越し春まで保存した小豆は皮が固いため、春のぼたもちは「こしあん」で作られていたそうです。
お供え花の定番が菊なのはなぜ?
日本では、古来、花の中で最も格式が高いのは菊とされてきました。皇室の紋章も菊です。仏様に敬意を払う気持ちを表すために、最も格式が高い菊の花をお供えするようになったと考えられていますが、諸説あります。
主に白い菊を供えるのは、日本では白があの世への旅立ちの色と考えられてきたからです。亡くなられた方は白装束を着て旅立ちます。現在、喪服といえば黒ですが、西洋化が進む前は喪服も白でした。
菊以外にも、故人の好きだった花や思い出の花などをお供えしてもよいでしょう(ただし、宗教や宗派によって見解が違うことがあります)。
季節の行事を親子でいっしょに学べる絵本形式の実用書です。ものごとの由来やしきたり、遊び方、箸の持ち方、衣服のたたみ方など、行事を子育てに役立てるコツを豊富なイラストで楽しく紹介。文化と愛情を伝える「行事育」が手軽に実践できます。
和文化研究家
三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)ほか多数。
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