高学年に突入するとそろそろ思春期が始まります。早い子は中学年から始まることもあり、親もいろいろと悩む時期ではないでしょうか。中でも日常会話で子どもが口にする「もう大人だもん」「まだ子どもだし〜」という言葉。これって親も口にしていませんか? この言葉の背景にはどんな思いがあるのか、スクールカンセラーとしても活躍している、臨床心理士・吉田美智子さんにお話を聞きしました。
思春期の子どもは、実年齢に対し±2歳の幅がある
「このふたつのフレーズを子どもが口にすると、親は言い訳に聞こえてしまいます。しかし、思春期の子どもの状態を理解すると納得がいくかもしれません。
先に【思春期】を解説すると、この時期の子どもは実年齢に対し±2歳の幅があると思ってください。つまり11歳であれば、9歳の時もあれば13歳の時もあるということ。本当は5年生なのに、3年生くらい幼い時もあれば、中学生のような落ち着きを見せることも。この±2歳の幅を行ったり来たりしながら、自立した大人へとなっていくのです。
これを加味すると、『もう大人だもん』『まだ子どもだし〜』という言葉が理解できるのではないでしょうか。自分でやってみたい時や友達がいる手前いいところを見せたい場合、『もう大人だもん』というマインド=+2歳でいる状態。しかしちょっと自分が面倒だな、親に甘えたいなと思う時は、『まだ子どもだし〜』というマインド=-2歳でいる状態となります。親からすれば『都合のいいこと言って』『ただの見栄や甘えだわ』なんて思いがちですが、この-2歳の時に親にしっかり甘えられるから、背伸びをして+2歳でいることができるのです。
子どもは計算してこのような言葉を発しているわけではなく、自分の心の動きを素直に表現しているので、いちいち目くじらを立てる必要もないと思います」(吉田さん)
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親が発する「もう大人になるんだよ」「まだ子どもなんだから」の真意は?
「実は親も子どもと同じようなことを口にしていませんか? これらの言葉は親と子どもで使い方が違います。親は+2歳を基準として考えがちなんです。なので、ちょっと幼いことをすれば『もう大人になるんだよ』と言ってしまいがち。しかし子どもが+2歳のマインドで、やる気があるときは何かと危なっかしく『まだ子どもなんだから』と制御をします。まるで真逆の反応を示すのです」(吉田さん)
親と子の言い分はすり合わせた方がいい?
「ふたつのフレーズは親と子では、使い方が違っていますよね。このことを親が把握し、また思春期の±2歳を踏まえた上で、以下のような対処法を行なってください。
<1>子どもが『もう大人』と言った場合
そのやりたいことが、大人から見て危険だったり、周りを見てまだ時期的に早いと感じたらきちんと『NO』を言いましょう。適切にNOを言うからこそ、子どもは反発することができ、真っ当な反抗期となります。なんでもOKだと、子どもも不安になってしまうのです。
<2>子どもが『まだ子ども』と言った場合
上記でもお話した通り、-2歳の甘えがあるから背伸びができます。こんな時はそっとサポートしてあげたり、背中を押すような声がけができるといいですね」(吉田さん)
「もう大人」「まだ子ども」という言葉は、親にとっても子どもにとっても都合の良い言葉かもしれません。しかし子どもの思春期を理解すると、その意味合いも変わってくるのではないでしょうか。できることなら「もう大人なんだから」と否定的な使い方ではなく、「もう大人になっちゃうのかぁ、ちょっと寂しいなぁ」なんてスッと後押しできる言葉に変換できると良いかもしれません。
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構成・文/福島孝代
写真/(C)Shutterstock.com
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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