大人のアンガーマネージメントはよく耳にすると思います。しかし、子どもにもアンガーマネージメントは必要なのでしょうか?スクールカウンセラーとしても活躍している、臨床心理士の吉田美智子さんに「子どものアンガーマネージメント」についてお聞きしました。
そもそも子どものイライラの原因とは?
「人間が怒りを感じる主な原因は2種類あります。
<1>自分由来
<2>他人由来
<1>は親や先生に叱られた。失敗や悔しい思いをしたなど。これらの原因は自分にあります。<2>は友達に意地悪された。約束を守ってもらえなかったなど。こちらは相手の態度によって怒りを感じます。どちらにも怒りを感じる子もいれば、<1>はイライラするが、<2>は相手のことを思って怒りを表に出さない子もいます。
年齢で見ると3〜6歳はストレートに怒りを表現し、泣いたり駄々をこねたりします。7〜9歳になると嫌なことは嫌と言えたり、相手がいれば怒りをぶつけることもできます。子どもたちは泣いたり相手に怒りをぶつけることで、【年相応の怒りの表現】を身につけていくのが本来あるべき姿です」(吉田さん)
しかし、文部科学省によると小学生の暴力事件は平成25年は約1万件に対し、平成30年は約3万6千件と右肩上がりという結果が。(参照:文部科学省平成30年度児童生徒の問題行動調査結果)
今、自分の子どもが怒りっぽくなかったとしても、今後のためにアンガーマネージメントを学んでおいて損はないかもしれません。
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子どものイライラに親はどう接するべき?
「上記にあるように子どもは【年相応の怒りの表現】を身につけることが大切です。しかし、この怒りを小さい頃から【我慢させる】親御さんも少なからずいますが、これは逆効果。親の言うことを聞く幼少期は怒りの感覚を我慢することができても、小学校に入ると我慢が効かなくなり大爆発してしまうことも。学校で爆発すれば、もちろん先生にさらに我慢を要請されるため悪循環に。これが【キレやすい子ども】へとつながるのです」(吉田さん)
では子どものイライラをどう処理すれば良いのでしょうか。
「子どものイライラに親は面倒くさがらず、また怖がらすに【どんなことが嫌だった】のかを冷静に聞いてあげてください。解決策やアドバイスは不要です。『嫌だったね、悔しかったね』と同調するだけで、案外子どもは気持ちを立て直すことができます。怒りを感じたときに、周りの大人が受け止めてくれ、上記のように言語化してもらうという体験を積み重ねると、子どもは同じことを自分自身で始めます。これが健全な子どものアンガーマネージメントとなります」(吉田さん)
怒りを感じたら6秒待つとか、親が責任を持って怒りをコントロールしなくちゃなどと考える必要はなさそうですね。
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一生使える「怒りのリリース方法」とは?
「怒りのリリース方法」を試す前に、まずは日常生活をチェック。
「最初に、子どもが日常的にストレスを感じていないか生活の見直しをしてみてください。イライラの原因でよくあるのは、<1>生活リズムの乱れ(食事と睡眠) <2>成績へのプレッシャーです。どちらも親が客観的に振り返ることにより、改善策を見出せます。
次に上記のような理由も見当たらず、慢性的にイライラしやすいようであれば、親子のリラックスタイムをいつもより多めに取ってみてください。手足のマッサージをお互いにしてみる、一緒にガーデニングをして土を触る、丁寧におやつタイムを過ごすなど、子どもがほっとできる何かを探してみてください。
最後は怒りのリリース方法です。まずは、子どもが怒ったときにどんな感じがするかを聞いてみましょう。頭に血がのぼる、喉が詰まった感じ、胃が気持ち悪くなる、肩に力が入るなど、普段とは違う体の異変を教えてもらいます。例えば、喉が詰まった感じであれば、怒ったときに息を止めている可能性が。その場合はゆっくり深呼吸をするように伝えたり、肩に力が入るのであれば、自分で肩をさすってみるなど提案してみてください。
これはマインドフルネスの考え方なのですが、一度身につけると一生役に立つので、親子で練習をしてみてくださいね」(吉田さん)
子どもはいろいろな感情を体験している真っ最中です。怒っていることは理解できても、その怒りをどう処理して良いかまで考えが回りません。吉田さんのお話にもあったように、怒りを我慢をさせるのではなく「怒り方とリリース方法」を適切に学べることが子どもにとって最良なのかもしれません。
構成・文/福島孝代
写真/(C)Shutterstock.com
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臨床心理士
吉田美智子
東京・青山のカウンセリングルーム「はこにわサロン東京」主宰。自分らく生きる、働く、子育てするを応援中。オンラインや電話でのご相談も受け付けております。
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Twitter: @hakoniwasalon