「東奔西走」の意味や読み⽅とは?
「東奔西走」は「とうほんせいそう」と読み、「あちこち忙しく走りまわること」です(<小学館 デジタル大辞泉>より)。四字熟語の名詞として使うほか、「する」をつけて「東奔西走する」のように、動詞としても使うことができます。
言葉の成り立ちを見てみると、まず、反対の方角を示す「東」と「西」の漢字があります。「東西」の二つが合わさる言葉になることで、「あちこち」「いろいろな場所」という意味が含まれます。
また、残りの二語「奔」と「走」を合わせた「奔走」という言葉が別にあります。忙しく走り回ることや、物事が順調に運ぶように、あちこちかけまわって努力することです。ほぼ東奔西走と同じ意味ですが、「東奔西走」は「東に走り、西に走り」と範囲が広くなることで、忙しく走りまわる様子が強調されるイメージがわきますね。
使う時の注意点
「東奔西走」の意味は、「あちこち忙しく走りまわること」ことですが、ただ走りまわっているわけではありません。目標を実現するためにあちこち動き回っている状態です。一方、「東奔西走」とよく似たつくりの言葉に「右往左往」があります。
東奔西走は、東と西の反対の方角を差ししめす漢字を組み合わせていますが、右往左往は「右」と「左」の反対の方向を表す漢字からできています。
「右往左往」(うおうさおう)の意味は、「うろたえてあっちへ行ったり、こっちへ来たりすること。あわてふためいて混乱したさまをいう」(<小学館 デジタル大辞泉>より)です。東奔西走には、あわてふためいて混乱している意味は含まれません。
東と西、右と左、と同じように広い範囲を指し示していても、目標を定めて動き回っている「東奔西走」と、うろたえて動き回っている「右往左往」では、状況が全く異なっています。
目標を定めて「東奔西走している人」に対して、「右往左往している」と言ってしまうと、全く異なる意味になり、失礼にあたります。「あの人は決断できずに、いつも右往左往している」といった使い方はしますが、「あの人は決断できずに、いつも東奔西走している」という使い方はしません。使い方を間違わないように注意してくださいね。
使い⽅を例⽂でチェック
では「東奔西走」はどのような使い方や言い回しがあるのか、例文を見ながら確認していきましょう。
「新規事業が軌道にのるまでは、東奔西走する日々だった」
新規事業を軌道にのせることを目的に、あちこち忙しく走りまわって活動した日々のことをふりかえっています。
「従業員の雇用を守るために、社長自ら、資金集めに東奔西走した」
「従業員の雇用を守る」という目的のために、社長があちこち忙しく走りまわって、資金を集める行動をとったことを説明しています。
「選挙活動では候補者は東奔西走して、自分の言葉で政策を伝える必要がある」
選挙活動で、自分の言葉で政策を伝えるために、候補者があちこち忙しく走りまわる必要があることを述べています。
類語表現にはどのようなものがある?
「東奔西走」は、「南船北馬」や「粉骨砕身」などの四字熟語の類語に言い換えることができます。下記で 詳しく解説していきます。
南船北馬
「南船北馬」(なんせんほくば)は、絶えず旅していること。ここにある南と北は、もともとは中国の「南方」と「北方」を示しています。南方は川や湖が多いので船を用い、北方は平原や山野が多いので馬に乗って移動するためです。あちこちに忙しく走り回るように旅することを東奔西走するイメージに重ね合わせることができます。