ソファでくつろいでも疲労が回復しない理由
――「今日も疲れた」と家に帰っても、料理をしないと、洗濯物を取り込まないと、家計簿をつけないと……とあれこれ考えて落ち着きません。
小林弘幸先生(以下、小林):働きながら毎日家事をして、家計簿をつけて、偉いですね。家に帰ってきたときに大切なことは「1日の仕事をリセットする」ことです。
――家で「1日の仕事をリセット」するんですか?
小林:そうです。私は帰宅したら、冷蔵庫をあけてミネラルウォーターをコップ一杯飲む。玄関に戻り靴の汚れを拭き取ってシューズボックスに入れる。スーツを着替えて丁寧にクローゼットにしまう。ゴミを捨てて、郵便物をチェックしたあと、翌日の仕事の準備をする。これら一連の行動をして、ようやく「1日の仕事をリセット」しています。
――そんなにたくさんのことを、疲れているのに、家に帰ってすぐにしているんですか……。
小林:時間にして30分程度ですが、このリセットをすることで、とても大きな充実感を手にすることができるのです。家事や家計簿をつけることが、オンとオフを切り替えるスイッチになっているのであれば、良い習慣だと思いますよ。
――うーん……。どちらかというと、体も疲れているし、家事や家計簿をつけるより、家に帰って「あー疲れた〜」とソファに座り込むときのほうが、オフに切り替わっている気がします。
小林:その気持ちはわかりますが、それでは心身ともに「仕事モード」から「自分の時間モード」に切り替えるのは難しいですよ。「とりあえず一休み」をしてしまうと、交感神経の働きが下がり、リラックスモードの副交感神経が活発になるからです。
そこから家事や明日の仕事の準備などをしようと思っても、再び交感神経を働かせるには気力が必要で、結局、何もしないまま……になってしまいがちです。さらに、ソファで横になったとしても、「あー疲れた〜」という疲労感はとうてい軽減されません。
――たしかに。ソファで横になっても結局、体のだるさや疲労感は回復されていないことが多いです。
小林:私は、ソファは休息の強敵だと思っています。とくにパソコンの前にいる時間が長いビジネスパーソンにとって、血流を悪くするソファは、油断できない相手です。疲れをとるには、帰ってすぐにソファに座るより、「自分の時間モード」に切り替えてから、ベッドでしっかり睡眠をとったほうが圧倒的に良いことは間違いありません。