人生で「もっとこうしていればよかった…」と思う瞬間は、誰にでもあるものかもしれません。そんな後悔の感情を表す言葉が、「臍を噛む(ほぞをかむ)」です。この記事では、「臍を噛む」の意味や、由来、使い方などを解説します。
「臍を噛む」とは既に終わったことを後悔する意味
「臍を噛む」とは、どうにもならなくなったことを後悔するという意味です。「臍を噛む」の「噛む」は「噬む」とも表記されます。読み方はどちらも「かむ」です。意味は同じで、『デジタル大辞泉』では後者の表記が使われています。
【臍を噬む:ほぞをかむ】
後悔する。すでにどうにもならなくなったことを悔やむ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
臍とは「へそ」のことです。「臍を噛む」という言葉では「ほぞ」と読みますが、一般的には「へそ」と読みます。自分で自分のへそを噛むことはできないことから、この言葉が生まれました。
「臍を噛む」の由来
「臍を噛む」の由来は、中国の故事 『春秋左伝』だといわれています。『春秋左伝』は孔子が編纂したとされている歴史書『春秋』の注釈をまとめた書物のことです。この『春秋左伝』の中の逸話が語源とされています。内容は以下のとおりです。
小国・鄧(とう)の国を訪れた、大国・楚の文王(ぶんおう)に対して、鄧の国の君主は篤くもてなしました。そのとき、家臣が「今、文王を討たなければ、いつか臍を噛むことになりますよ」と進言しました。しかし、君主はその進言を聞き入れませんでした。のちに家臣が言っていた通り、鄧は楚に滅ぼされてしまうのです。
この逸話がもとになり、「あとになって後悔してもどうにもならない」という意味で、「臍を噛む」という言葉が広まりました。
「臍を噛む」の使い方と例文
ここでは、「臍を噛む」の使い方と例文を紹介します。よくある間違った使い方は「くやしがる」という意味での使用です。「あとになってどんなに悔やんでもしょうがない」というのが正しい意味です。
【例文】
・若い頃にもっと勉強していればよかったと、臍を噛む日々だ。
・あの時、アドバイスを聞いていれば成功していたかもしれないと、今となっては臍を噛むしかない。
・大事な商談を失敗してしまい、彼はしばらく臍を噛む思いで過ごすことになった。
臍という漢字を使った語句3つ
臍という漢字は「ほぞ」「へそ」と読み、人間の体のへそを表す言葉です。臍は体の中心部にあるため、本心や決心というニュアンスで使われることもあります。臍という漢字を使った語句はたくさんありますが、主なものは以下の3つです。それぞれの言葉の意味と使い方を解説しましょう。
臍(ほぞ)を固める
「臍を固める」とは決心を固める、覚悟を固めるという意味です。
【例文】
・転職するかどうか迷っていたが、家族の応援を受けてついに臍を固めた。
・経営が厳しい状況だったが、彼は新規事業に挑戦するために臍を固めた。
・結婚をためらっていた彼女は、相手の真剣な気持ちを受けて臍を固めた。
臍(ほぞ)落ち
「臍落ち」とは、「へその緒が落ちること」です。また「果実が熟して実が落ちること」「期が熟すること」「納得すること」などの意味があります。3つ目の意味は、「腑に落ちる」に近いといえるでしょう。
【例文】
・長年悩んでいた問題の原因がついに判明し、彼はようやく臍落ちした。
・友人の話を聞いて、彼の行動の理由が臍落ちした。
・複雑なプロジェクトの進め方が、上司のアドバイスにより臍落ちし、全体像が見えた。