「心許ない」とは
意味は「頼りなくて不安なさまのこと」
こころ‐もとな・い【心▽許無い】
[形][文]こころもとな・し[ク]
1 頼りなく不安で、心が落ち着かないさま。気がかりだ。「子供たちだけでは―・い」「古い木橋で―・い」
2 待ち遠しくていらいらするさま。じれったい。
「宵過ぐるまで待たるる月の―・きに」〈源・末摘花〉
3 はっきりしない。ぼんやりしている。
「花びらのはしに、をかしき匂ひこそ、―・うつきためれ」〈枕・三七〉
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
その他、はっきりしない状況に対して待ち遠しく、じれったいときを表現する言葉です。
「心許ない」の語源は、平安時代から使われていたとされています。古文のなかで登場する「こころもとなし」は、頼りなく不安という意味を持っており、「心許ない」と同様です。このように、「心許ない」は言葉が生まれてから現代にいたるまで、頼りなさやそわそわして落ち着かないといった、不安な気持ちを表現しています。
「心許ない」の読み方は「こころもとない」
「心許ない」の読み方は「こころもとない」です。
「許」という漢字には、影響の及ぶ範囲や支配下、そばという意味があります。具体的に使われる単語には、「親許」や「手許」があります。
このように、一般的な「ゆるし」や「きょ」ではない読み方をするため、注意が必要です。また、同じ漢字を使う「心許り」は「こころばかり」と読みます。意味も全く異なる言葉ですが、「心許ない」の読み方と混ざらないようにしましょう。
「心許ない」の使い方と例文
「心許ない」を日常生活やビジネスで使用するシーンに「遠回しに誘いを断りたいとき」「現在の状況に不安を表現したいとき」の2つがあります。ネガティブな表現である「心許ない」ですが、上司や周りの人に気持ちを伝える際には使いやすい言葉といえます。
ここからは、「心許ない」の使い方を例文とともに紹介します。
遠回しに誘いを断りたいとき
「心許ない」は、相手からの誘いを遠回しに断りたいときに活用できます。例えば、会社の上司や取引先など、自分より目上の人からつきあいに誘われた際に断ることが難しい場面があるでしょう。
相手の気持ちに感謝しつつ、遠回しに断る場合は「ふところが心許ない」「財布が心許ない」というように、金銭状況に余裕がないと伝えると角が立たないでしょう。はっきりと誘いを断れない場面では、ぜひ取り入れてみてください。具体的な例文は以下の通りです。
例文
・食事のお誘いは大変嬉しいのですが、ふところが心許ないので、またの機会に誘ってください。
・取引先との会食にお誘いいただき有難いのですが、財布が心許ないので今回は遠慮いたします。
現在の状況に不安を表現したいとき
現在の置かれている状況に不安を感じた際は、「心許ない」を使って表現します。例えば、仕事のプロジェクトを進めていくうちに、このままでは確実に仕事が終わらないと感じたり、人材を安定して確保したいと思ったりする場面もあるでしょう。
特にビジネスシーンで重要になるのは、自分の感情ではなく、客観的に見て不安な状況になっているかどうかです。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・取引先へのプレゼンが新人だけでは心許ないため、ベテランのフォローが必要だ。
・来週の社内会議の資料が間に合うか心許ないため、手助けをお願いできますでしょうか。
「心許ない」の類義語
「心許ない」の類義語に「気がかり」「心細い」「危なっかしい」「おぼつかない」「頼りない」が挙げられます。それぞれ心許ないと近い意味を持ちますが、使用する際のシチュエーションに若干の違いがあったり、気持ちの表現がより寂しさやそわそわに傾いていたりしています。正しく使い分けるためにも、意味を理解しておきましょう。ここからは、「心許ない」の類義語5つを紹介します。
気がかり
「気がかり」は、心配や、心の中で離れないという意味の言葉です。「心許ない」と同様に、不安や心配なことがあり、落ち着かない様子を表現しています。
き‐がかり【気掛(か)り】
[名・形動]どうなるかと不安で、心から離れないこと。また、そのさま。
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
感情の表現だけを見れば、「心許ない」とほとんど同じですが、気がかりは使うシチュエーションに特徴があります。「気がかり」という言葉を使うときには、具体的に心配なことや出来事が明確です。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・昨日彼女に言われたことが、気がかりでしょうがない。
・人事評価で何と言われているのか気がかりだ。
心細い
「心細い」は、頼るものがなく不安な様子を意味する言葉です。ネガティブな感情を表現する点では、「心許ない」の意味と近いといえます。
こころ‐ぼそ・い【心細い】
[形][文]こころぼそ・し[ク]
1 頼るものがなく不安である。「一人だけで行くのは―・い」「たくわえが―・い」⇔心強い。
2 何となく寂しく感じられる。ものさびしい。
「松の梢吹く風の音―・くて」〈源・末摘花〉
(引用:小学館『デジタル大辞泉』より)
違いとしては、「心許ない」は主観的、客観的な感情どちらも使えますが、「心細い」は基本的に主観的な感情を表現します。また、なんとなく寂しいという意味も持ち合わせており、「心許ない」に比べると「寂しさ」を強く表現しているのが特徴です。具体的な例文は、以下の通りです。
例文
・雷の鳴る夜に、一人で寝るのは心細い。
・初めて行くお店に一人で行くのは心細いので、母親を誘ってみることにした。