「したたか」の意味は?
「したたか」は、さまざまな意味合いをもった言葉です。まず、その意味を見てみましょう。
意味について
「したたか」は、日常会話でよく耳にする言葉ですが、その正しい意味を理解していない人も少なくないでしょう。辞書では、次の通り定義されています。
したた‐か【強か/健か】
[形動][文][ナリ]
1 粘り強くて、他からの圧力になかなか屈しないさま。しぶといさま。2 強く、しっかりしているさま。3 強く勇猛であるさま。4 程度がはなはだしいさま。5 分量がたいへん多いさま。
[副]
1 分量がたいへん多いさま。たくさん。2 程度がはなはだしいさま。ひどく。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
意外なことに、辞書によると「したたか」は「粘り強い」「圧力に屈しない」「しっかりしている」「強くて獰猛」など、一見するとポジティブな説明ばかりです。さらに、「したたか」は、副詞として使うと、程度や分量が「はなはだしい」や「多い」といった意味が含まれます。「したたかに腰を打った」など、度合いの「強さ」を示す際に使えるのです。
このように、本来の意味合いではポジティブな側面が強い「したたか」ですが、日常会話の中では「計算高い」「しぶとい」といった、ネガティブなイメージで使われていることが少なくありません。中には「ずる賢い」といった意味が含まれることも。
「したたか」は、肯定的、否定的の両面の意味を持つ言葉のため、相手に誤解を与えないよう、使うときには注意しましょう。例えば「したたかな女性」といわれたとき、どんな意図がそこに含まれているのか、前後の文脈をふまえて判断するのがベターです。
漢字で書く際は「強か」と「健か」どっち?
「したたか」は漢字で表すと、「強か」もしくは「健か」です。どちらも基本的には同じ意味ですが、実は少しだけニュアンスの違いがあります。精神的な強さは「強か」で、身体的な強さは「健か」で表します。「容易に人の思うようにはならない者」のことを「海千山千の強か者」と表現することも。一般的にはひらがなの「したたか」が使われるケースが多いので、ひらがなで書いたほうが、わかりやすくて伝わりやすいかもしれません。
使い⽅を例⽂でチェック
「したたか」の例文を、肯定的な表現と否定的な表現に分けて説明します。
学生時代に両親を亡くした彼女は、今は立派な社会人になって、ひとりでしたたかに生きていてたくましい
「粘り強くて、他からの圧力になかなか屈しない」と、肯定的でポジティブな意味合いで使われる「したたか」です。「自立している」「どんなことがあっても立ち向かっていける」と捉え、生きるたくましさが伝わります。力強い印象を受ける一文です。
課長は仕事を進めるときに、上司の前では抜かりなく、したたかに立ち回る人だ
少し否定的なニュアンスで使われる「したたか」の例文。上司の前では上手に立ち回っていて「ずる賢い」「計算高い」というネガティブな意味が暗に込められています。
国と国の外交交渉には、ある種のしたたかさが必要だ
個人の行為だけではなく、外交交渉など、組織的な行為についても「粘り強くて、他からの圧力に屈しない」態度や「しぶとさ」を表す言葉として「したたか」を使うことができます。
類義語や言い換え表現は?
「したたか」の類義語や言い換え表現を紹介します。「したたか」はネガティブなニュアンスの強い言葉ですが、類義語にはポジティブな意味を含む言葉もあるので、それぞれ使い分けられるようにしましょう。
「我慢強い」
「我慢強い」は、精神的な強さを意味しています。大変なことでも乗り越えられる強さを言い表す便利なフレーズです。「子どもの頃から、我慢強い性格で、彼の不平不満を聞いたことがない」など。
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「辛抱強い」
「辛抱強い」は、「よく耐えて我慢する」こと。「したたか」の「強く、しっかりしているさま」に繋がります。「彼女は辛抱強い性格なので、いうことを聞かない部下を見捨てずに成長させることができた」など、ビジネスシーンでも使われる言葉です。
「世渡り上手」
「したたか」は「世渡り上手」にも似ています。周囲の人を巻き込みながら、知らず知らずに外堀を埋めて、固めながら物事を進める人がいます。嫌なことや困難なことも、本音を隠して愛想よく対応する「したたか」な動き。そこには、自分の評価をさりげなく上げる「ずる賢さ」もあるかもしれませんが… 。