「似て非なるもの」の意味は?
まずは、「似て非なるもの」の意味を紹介していきます。
読み方と意味
「似て非なるもの」の読み方は、「にてひなるもの」です。意味は、「一見似ているようだけれども、まったく違うもの」。外見や道理などがよく似ているために、同じものとしてとらえてしまいそうになるものの、その内実はまったく異なる2つのものに対して使われる言葉です。
「似て非なるもの」の語源は、中国の昔の思想家・孟子の言葉にあるとされています。それは、「子曰(い)わく、似て非なる者を悪(にく)む」という文から始まる一節。この後に、「田んぼの雑草を憎むのは、稲の苗に似ていて紛らわしいからだ。口が達者な者を憎むのは、正義を乱すからだ」と、「似て非なるもの」について言及しています。この部分が、「似て非なるもの」の由来のようです。
「似て非なるもの」ってどんなものがある?
外見や体裁は似ているようでいて、本当のところはまったく異なる「似て非なるもの」。どんな例があるのか、一緒に見ていきましょう。
ソーセージとウインナー
ウインナーとソーセージは、見た目が似ていますよね。しかし実は、両者は「似て非なるもの」です。まず、ソーセージとは、塩漬けにされた肉に香辛料など加えて味付けし、それを腸に詰めたものの総称のこと。
ウインナーは、そのソーセージの一種で、もとの名前はウインナーソーセージ。ソーセージの中でも、羊の腸に詰めたもの、かつ太さが20ミリ未満のものをさします。
卵と玉子
“たまご”には、卵と玉子の2つの漢字があるので、どちらを使えばいいのか迷ったことはないでしょうか。生の場合は「卵」、加熱調理されている場合は「玉子」と表記します。そのため、料理のレシピなど、調理前の段階では「卵」、調理後には「厚焼き玉子」などと書かれることが多いです。
自由とわがまま
自由とわがままも一見似ている表現。両者とも、自分の考えを第一とし、思うままに行動する特徴があります。
この2つの言葉について福澤諭吉は、『学問のすすめ』のなかで、こう言及しています。「自由と我儘(わがまま)との界(さかい)は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり」。自由もわがままも似ているものの、他人の邪魔をするかしないかが違いであるということ。つまり、両者は「似て非なるもの」といえるでしょう。
使い⽅を例⽂でチェック
続いて、「似て非なるもの」を使った例文を紹介します。
「正規品とコピー品は似て非なるものだ」
「似て非なるもの」という言葉をもっとも使いやすいのは、正規品と、その正規品を真似たコピー品ではないでしょうか。見た目はまったく同じですが、正規品とコピー品とでは、素材や製造方法も異なる場合が多く、品質の差は歴然です。
「サッカーとフットサルは、似て非なるものだと夫に怒られた」
サッカーとフットサルは、両者ともボールを蹴り、点を取り合うスポーツです。一見似ていますが、サッカーはプレーヤーが11人、フットサルは5人。また、ゴールやボール、コートの大きさも異なります。似ているようで似ていないスポーツといえます。
「先輩からは、慎重と臆病は似て非なるものだと教えられた」
慎重も臆病も、しっかりと下調べや準備を行うなど、すぐには行動に移さないことが多く、用心深いようすがよく似ています。しかし、慎重の意味は「注意深くて、軽々しく行動しないこと」。
一方、臆病の意味は、「気が小さく、必要以上に怖がること」。「慎重」はポジティブな意味で使われることが多いですが、「臆病」は基本的にはネガティブな意味で使われます。
類語・四字熟語・⾔い換え表現は?
では次に、「似て非なるもの」の類語を見ていきましょう。「似て非なるもの」を他の言葉に言い換える場合には、「月とすっぽん」「提灯に釣鐘」などが適しています。それぞれの意味と、「似て非なるもの」との違いも解説します。