効果的なケガの処置方法をアップデート
いよいよ夏休みが始まり、水遊びや家族でのお出かけなど、子どもがアクティブに遊ぶ場面も多い時期。同時にケガや熱中症なども心配ですが、いざというときに正しい対応がわからない場合もありますよね。
今回はそんな夏のレジャーで起きがちなケガの場面にあわせて、やりがちだけど実はNGな対応と、知っておきたい正しい処置方法をそれぞれご紹介。埼玉医科大学病院教授・診療部長の市岡滋氏に教えていただきました。
こんなときどうする?知っておきたい夏の応急処置
【Scene1】水遊びやアスレチックで転んだ/BBQの準備中に包丁で指を切った
・赤チンで消毒してガーゼを貼り、乾かしてかさぶたを作る
・唾を塗っておく
・痛みを和らげ早く治したいなら、キズを水道水でよく洗い、かさぶたになる前にモイストヒーリングの絆創膏を貼る
まずは流水でしっかり洗う
キズができたらまず水道水の流水でしっかり丁寧に洗い、キズ口から砂など異物を取り除き清潔にしてください。その後かさぶたになる前に、医療の現場でも使われるモイストヒーリングの絆創膏を貼ることで、体液の力を活用し痛みを和らげて早くきれいに治すことができます。パッドがしっかりキズを覆うので、水がしみるのを防いでくれる効果も。ガーゼは貼り換えの際に治りかけた皮膚を剥がす力が強いため、そういう点でもモイストヒーリングの絆創膏はおすすめです。
実は消毒は細胞の治ろうとする働きを弱めてしまうため、モイストヒーリングの絆創膏を使う場合は不要。また、唾液には細菌がたくさんおり、キズに唾液を付けることは清潔ではないのでおすすめしません。水道水でしっかり洗いましょう。
石鹸を使った場合はきちんと洗い流して
キズを洗浄する際には石鹸をつけてもいいですが、キズの中に残ると悪さをしてしまうのでしっかり洗い流すことを忘れずに。
モイストヒーリングの絆創膏は使えないキズも
モイストヒーリングの絆創膏は、動物に噛まれたキズや感染・化膿が見られるキズには使えないなどルールがあるため、使用方法をしっかり守って。また、どんなキズケアをした場合でも、キズの様子をよく観察することが大切。熱を持っていたり痛みが続いたりするなど感染の傾向がみられる場合は、すぐに病院へ行きましょう。
【Scene2】虫に刺された
・虫に刺された箇所に爪でバッテンをつける
・洗い流して清潔にしてから、薬を塗布する
刺激を与えるのは避けて
バッテンをつけることによる痛みでかゆみがマシに感じるのかもしれませんが、虫に刺された箇所をむやみに触ると化膿の恐れがあるのでNG。刺激を与えることは避けてください。虫刺されは水道水でしっかりと洗い流した上で、刺された部分を冷やすと痒みが軽くなります。その後痒み止めの軟膏を塗布しましょう。
【Scene3】プールで転んだ/浜辺に落ちたガラスなどで足を切った
・キズができたが、遊び続けたいのでそのまま海に入る
・プールや海に入りたいなら、完全防水仕様の絆創膏でしっかりカバーを
キズがある状態で水に入る場合は、完全防水仕様の絆創膏を
水に入るシーンが多い夏のキズは、とにかくしみて痛いもの。キズの痛みは、乾燥や末端の神経が外部の刺激にさらされるなどして起こるため、できるだけ外部からの刺激を防ぐことが重要です。完全防水仕様のモイストヒーリングの絆創膏はしっかりキズに密着し、刺激を防ぎ、痛みを和らげることができます。
細菌の心配もあるため注意
海辺の空きビンなどには細菌がいる場合があるので、キズができたらすぐに水道水でしっかり洗い流しましょう。浜辺の砂が入っていると治りも遅くなるため、しっかりと洗浄します。また、キズ口があるままプールや海に入ると、海中の細菌がキズ口から感染し化膿する可能性も。キズがある場合はできれば海で泳ぐことは避けた方がよいですが、入らなければならない場合は完全防水仕様の絆創膏を貼りましょう。
プールや温泉に入る際には、自分がキズ口から感染するだけでなく、キズ口から細菌を他の人に広げてしまうリスクも。料理人の方も、キズ口から細菌を広げ食中毒を起こすことがあると言われています。キズがある場合は、完全防水仕様の絆創膏を使うことが自分にとっても他人にとっても◎。
【Scene4】BBQの鉄板やキャンプファイヤーでやけどをした
・1分ほど冷やしたら冷たくなってきたので、そこで冷やすのをやめる
・水道水で5分から30分ほどを目安に冷やす
やけどは冷やす時間が足りていないことが多い
やけどをしたらすぐに流水で幹部を冷やしましょう。流水が難しい場合は氷を入れた袋などでもOK。冷やすことによりやけどが深くなるのを防ぎ、痛みを和らげることができます。部位や範囲にもよりますが、水道水で5分から30分ほどが目安。案外冷やす時間が足りない人が多いので要注意です。
【Scene5】クラゲに刺された
・ピリッと痛みを感じたが、遊び続けたいので海から上がらない
・刺されたところにお酢をかける
・痛みを感じたらすぐに陸に上がる
・酢はクラゲの種類によっては逆効果なので、種類がわからない場合は使わない
クラゲに刺されたら必ず陸に上がる
刺されて数分後にアナフィラキシーになる可能性もあるので、クラゲに刺されたときは必ず陸に上がりましょう。また、お酢は「アンドンクラゲ」などのハブクラゲ類には刺胞が不活性化されて効果はありますが、「カツオノエボシ」や「アカクラゲ」の応急処置に使うと逆に刺胞を活性化する可能性もあるといわれており、刺されたクラゲの種類がわからない場合はお酢の使用はNG。
針を抜いたら冷やして病院へ
クラゲに刺された箇所をやさしく海水で洗い流し、ピンセットなど針が抜ける道具を持っていれば、そっと刺された部分から針を抜きます。なければ手袋をして針を抜きましょう。そして患部を冷やしながら病院へ。
【Scene6】熱中症
・少し頭が痛い、気分が悪い気がするが、すぐに休まない
・しんどい、頭が痛いなどちょっとした症状でも放置せず、全身を冷やす
ちょっとした症状でも油断しないで
熱中症の心配があるこの時期は、ちょっとしんどい、ちょっと頭が痛いといった症状を放置しないようにしましょう。太い血管のある部位だけでなく、露出させた皮膚に冷水をかけうちわであおぐなど、全身を冷やすようにします。
水分補給など予防を忘れずに
何よりも予防が大切な熱中症。水分補給はこまめに、喉が渇かないうちから行いましょう。熱中症予防として摂取する場合、水やお茶ではなく塩分や糖分のバランスのよい経口補水液が効果的です。子どもに気を配るあまり大人が自分の熱中症に気づかない場合もあるため、ご注意を。
よくある〝キズ〟への疑問を医師が解説!
最後に、なんとなく耳にしたことがあるけれどこれって実際どうなの? というケガの対処法にまつわる疑問について市岡先生がお答え。これまで勘違いしていたことがないか、ぜひチェックしてみてください。
Q1:キズがあるときにお風呂でお湯や水につけてもいいの?感染するのでは?
「たまにご年配の方で、水道水でキズが感染するのでは?とおっしゃる方がいますが、水道水は飲めるほどきれいなため、キズを洗って全く問題ありません。また、お風呂のシャワーから出たばかりの水も水道水と同じできれいですのでこちらも問題ありません。ただ、浴槽にはった水は家族が何人も入って細菌がいる場合もあるので、上がる前にシャワーでキズを流すことをおすすめします」(市岡先生・以下同)
Q2:塩を塗ると絆創膏を貼るよりキズが早く治るという情報をネットで見ましたが、本当でしょうか?
「これは根拠がないためやめてください。塩を塗ると非常に痛みも強いと思います」
Q3:指先の血が止まらないので、止血のために指の付け根を圧迫することは正しいでしょうか?
「非常に危険ですので絶対にやめてください。以前対応した患者さんで、止血しようと足の指の付け根を輪ゴムで圧迫した結果、壊死してしまった方がいました。血を止めるためにはガーゼなどをキズ口にあてて止血するようにしましょう」
1度覚えるとなんとなく同じ方法をとりがちなケガの処置ですが、過去に見聞きしたことが実は間違っていたなんていうことも。レジャーに出かける機会も増える夏休みに向けて、ぜひ参考にしてみてくださいね。
教えてくれたのは…
市岡 滋 先生
埼玉医科大学病院 副院長 形成外科 教授
情報提供:キズパワーパッド™