「コロンブスの卵」の意味
コロンブスの卵とは、前例がないことに挑戦する難しさを意味する言葉です。なんとなく言葉の意味は知っていても、実際に日常生活で活用した経験がある方は少ないかもしれません。
表現の正しい意味と解釈のされ方を知っておけば、コロンブスの卵という表現はビジネスシーンでも活用できるでしょう。一見似ている表現との違いや使用時の注意点も解説します。
■最初に挑戦する難しさを意味する
今では当たり前になっている事柄でも、時代を遡れば誰かが最初に苦労して成し遂げた歴史があるものです。コロンブスの卵は簡単そうに思えても、最初に挑戦するのには困難が伴うことを意味します。
デジタル大辞泉での解説も、確認しておきましょう。
【コロンブスの卵】
《大陸発見はだれにでもできると評されたコロンブスが、卵を立てることを試みさせ、一人もできなかった後に卵の尻をつぶして立てて見せたという逸話から》だれでもできそうなことでも、最初に行うことはむずかしいということ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
意味を知っていないと、文脈の意味を掴めずに誤解が生まれてしまう可能性があります。この機会に正しく覚えておきましょう。
■将来性を指して使う「〇〇の卵」とは異なる
コロンブスの卵と聞いて「小説家の卵」や「宇宙飛行士の卵」などといった表現が思い浮かんだ方も多いはずです。しかし、コロンブスの卵と「〇〇の卵」は全く違うニュアンスを含んだ言葉である点に注意しましょう。
「〇〇の卵」は、〇〇の部分に職業を当てはめて使い、その人が将来的に成し遂げる可能性を持っているというニュアンスが強調されます。最初に行うことの難しさを意味する、コロンブスの卵とは性質が違う表現です。
■他人が気付かない盲点との解釈もできる
コロンブスの卵は「誰も気付かなかった盲点」との解釈も可能です。成し遂げられていない新しいことへの挑戦は、一筋縄ではいきません。
これまでとは全く方向性の違うアイディアを試したり、一見関係のなさそうな事柄を追及してみたりして、解決策が見つかる場合もあるのです。このことから転じて、コロンブスの卵は誰も気付かなかった「逆転の発想」の解釈でも用いられます。
「コロンブスの卵」の由来には諸説ある
コロンブスの卵の由来としては、次の2つの説があります。
・由来1:新大陸を発見したコロンブスの逸話
・由来2:イタリアの建築家「ブルネレスキの卵」の逸話
言葉の由来を理解しておくと、より表現への理解度が深まり、誤用を防げるようになります。コロンブスの卵の由来とされる、2つのエピソードをご紹介します。
由来1:新大陸を発見したコロンブスの逸話
コロンブスとは、新大陸を発見したイタリア人探検家です。大陸の発見は誰もが想像もしていなかった大発見でしたが、なかにはコロンブスの成功を妬み「西に向かえば誰でも大陸にぶつかる。」と批判する人々も出てきました。
それに応えたコロンブスは、人々に向かって机の上の卵を立ててみるように指示しますが、誰も成功させられません。そこでコロンブスは卵の尻を少し割り、簡単に立ててみせたのです。
いとも簡単なことでも、最初に成功させるのは難しいという事実を、人々に身をもって実感させました。
由来2:イタリアの建築家「ブルネレスキの卵」の逸話
コロンブスの逸話とよく似たエピソードとして知られているのが、イタリアの建築家ブルネレスキの卵です。2つ目の由来では、ブルネレスキの卵の逸話からコロンブスの卵が生み出されたとされます。
フィレンツェの教会の建設に関わるコンペに参加したブルネレスキですが、決して自分の設計図を公開しませんでした。周囲の人々からの反対は強く、ブルネレスキは担当する建築家を大理石の上に卵を立てた人にしようと提案します。
失敗がつづくなか、ブルネレスキは卵の尻を割って見事に卵を立てることに成功しました。人々は「誰にでもできる方法だ」と非難しましたが、ブルネレスキは「やり方を知っていれば簡単でも、最初にするのは困難だ。真似する人が出てくるから設計図を見せなかった。」と主張し最終的にコンペを勝ち取ったのです。
「コロンブスの卵」は日本でも馴染み深い表現
コロンブスの卵は、実は日本でも昔から知られている表現です。実際に1921年発行の『尋常小学国語読本』という教科書に採用されています。
当時の小学生も同じように、コロンブスの卵の意味や由来となったエピソードを学んだとされます。意外にも古くから馴染み深い言葉であったコロンブスの卵を、ぜひ積極的に活用してみましょう。
「コロンブスの卵」の使い方と例文
コロンブスの卵の意味を理解できたところで、使い方のポイントと例文をご紹介します。奇抜な発想で卵を立ててみせたコロンブスのように、これまでにはない新しいアイディアを指して使える表現です。
状況が合えば、ビジネスシーンでも利用できるチャンスがあるでしょう。実際の使用シーンを思い浮かべながら、コロンブスの卵の使い方と例文をチェックしてみてください。
■これまでになかったアイディアを指して使える
コロンブスの卵は、これまでになかったアイディアを指して使える表現です。つまり、答えの決まっている計算式や、すでに当たり前になっている習慣などには使えません。
現状を打破できるような、意表をつくアイディアが生まれた場合に、プラスのニュアンスで用いるケースが多いです。ビジネスでも使いやすい表現だといえるでしょう。
■コロンブスの卵を使った例文
表現の幅を広げるために、コロンブスの卵を使った例文を参考にしてみましょう。
【例文】
・意外にもコロンブスの卵のようなアイディアは、社歴の浅い社員から多く出されるものだ。
・なにごとにも、新しい視点から発想しようと努力するコロンブスの卵の精神は大切です。
・彼女の助言で簡単に問題が解決した。まさにコロンブスの卵だ!
「コロンブスの卵」の意味を正しく理解しよう!
コロンブスの卵は、日本に昔から馴染みがある表現ですが、詳しい意味や由来があまり知られていないケースも多いようです。言葉に関する正しい知識を身に付けることで、実際に表現を活用し豊かな言語表現が可能になります。
ビジネスシーンでも応用できる、コロンブスの卵の意味を正しく知って、ぜひ積極的に利用してみてください。
合わせて読みたい