「ブルータス、お前もか」の意味
「ブルータス、お前もか」は、信頼していた者に裏切られたときに使われる言葉として有名です。大辞泉には以下のように意味が記載されています。
【ブルータスお前もか(ブルータスよお前もか)】
カエサル(シーザー)が暗殺されるとき、相手の中に信頼していたブルートゥスを見いだして発したとされる言葉。信頼していた者に裏切られたときに用いられる。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
信頼している相手からの裏切りは、ショックが大きいものです。「ブルータス、お前もか」という言葉は、想像もしていなかった状況への嘆きの言葉として広まりました。
■名言が生まれた状況
紀元前44年3月15日、ユリウス・カエサルが暗殺される前に発したとされる言葉が「ブルータス、お前もか」です。
元老院会議が開催されるポンペイウス劇場に向かっていたカエサルは、一説によると60名もの議員に取り囲まれ、刃物で全身を刺されたのでした。カエサルはそのとき、自分を襲う群衆の中に信頼していたブルータスを見つけます。そして、嘆きの言葉を口にしながらこの世を去ったといわれています。
しかし、カエサルを刺した者もその場にとどまることなく逃走したとされており、「ブルータス、お前もか」という言葉を、実際に誰が耳にしたかはよくわかっていません。
■シェイクスピアの戯曲の題材にも
シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』は、ギリシア・ローマの一時代を築き上げたカエサルへの陰謀や暗殺、その後のエピソードを描いた戯曲です。ジュリアス・シーザーはカエサルの英語名です。
ただし、この戯曲の主人公は暗殺者であったとされるマーカス・ブルータスであり、ブルータスの友情や葛藤などが作品の主なテーマといえます。
「ブルータス、お前もか」と言ったのはカエサル
カエサルは共和政ローマ末期の政治家であり、平民派の将軍としてもその名を知られた人物です。共和政ローマは圧倒的な軍事力を誇り周辺の国家や部族の征服、紀元前3世紀にはイタリア半島統一も成し遂げました。
ローマはその後も地中海一帯に領土を広げていき、元老院をはじめとした貴族たちは多くの富を得るようになります。一方で軍隊の中心を担っていた市民は、戦争によって疲弊していきます。
貴族と市民が対立し内乱の1世紀と称される時代が到来、この混乱の中で政治の実権を握ったのがカエサルです。紀元前46年には、カエサルは強大な権力を握る独裁官になります。
一部の元老院の人々は、カエサルによる独裁政治が共和政の崩壊を招くのではないかと危惧するようになりました。そして、前述のとおりカエサルは暗殺されてしまうのです。
■「カエサル」は皇帝の称号とも
カエサルは、後に皇帝の称号として用いられました。カエサルの後継者であるガイウス・オクタウィウスが、ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィウスと名を改めたほか、その後の皇帝もカエサルの名を冠します。
カエサルは、ドイツ皇帝の称号である「カイゼル」やロシア皇帝を称する「ツァーリ」の語源でもあります。
■ユリウス暦を導入
当時使われていた太陽暦が実際の季節とずれていることに注目したカエサルは、学者に計算し直しを命じ、新たに「ユリウス暦」を導入しました。ユリウス暦という名称は、ユリウス・カエサルの名前にちなんだものです。
ユリウス暦は、1582年にグレゴリオ暦に改良されるまで、ヨーロッパで長い期間使用されました。