内部監査とは
内部監査とは、会社が任意に設置した内部監査人や内部監査部門が行う監査のことです。会社の状態を確認したうえで評価し、改善や予防のための助言やサポートを行う取り組みです。
その内容から「会社の健康診断」とも表現され、上場企業や会社法上の大企業では実施が義務づけられています。
大辞泉に記載されている意味は次のとおりです。内部監査という職務に関する解説をしています。
【内部監査】(ないぶかんさ)
(会計士や企業外の監査人による外部監査に対し)企業内部に経営者に直結して置かれる職務。経営諸活動が合法的・合理的に行われているかを検討・評価して問題点を指摘し、効率の高い経営を提案する。
(引用:〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
なお、一般社団法人日本内部監査協会による「内部監査基準」では、内部監査の本質を以下のように定義づけています。
内部監査とは、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールに関連する経営諸活動の遂行状況を、内部監査人としての規律遵守の態度をもって評価し、これに基づいて客観的意見を述べ、助言・勧告を行うアシュアランス業務、および特定の経営諸活動の支援を行うアドバイザリー業務である。
(参照:一般社団法人日本内部監査協会「内部監査基準」)
■外部監査との違い
外部監査は、監査法人に所属する公認会計士をはじめとする外部の専門家が、企業の財務状況をチェックするものです。調査結果が対外的に公表されることが特徴です。
一方、前述のとおり内部監査は、経営陣から独立した組織の監査役や経営陣の指示のもと、内部監査人や内部監査部門が監査を行います。経営目標を達成するために適切に業務が遂行されているかを確認することがおもな目的です。
■「監査役監査」との違い
監査役監査は、株主総会で選任された監査役が、取締役の職務遂行に対して行うものです。
これに対して内部監査は、社内で選任された担当者がすべての従業員の業務活動に関して行う監査であることをおさえておきましょう。
■「内部監査」が必要とされる根拠
内部監査を行う目的である内部統制は、会社法や金融商品取引法に根拠があります。会社法では、第362条第4項第6号にて取締役会の権限として「業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」が挙げられ、内部統制の根拠とされています。この体制整備が義務付けられているのは、大会社です。
また金融商品取引法第24条では、内部統制報告書の提出を義務付けています。具体的には、有価証券報告書を提出する会社は、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制」を評価した内部統制報告書を出さなければならないというものです。
■内部監査の対象
内部監査のチェック項目は多岐にわたり、監査の対象はその特性に応じて以下のように分類されます。
・会計監査
・システム監査
・ISO監査
企業の財務諸表を監査法人や公認会計士がチェックを行い、株主や取引先などに対して公表されるのが会計監査です。財務諸表の信頼性を担保するために、非常に重要な役割を担います。チェック項目には、貸借対照表や損益計算書の内容確認や、売掛金および買掛金の残高確認などがあります。
システム監査は、業務システムの信頼性の高さや経営に活用されているかを監査するものです。特に情報システムの管理情報に、企業の存続を脅かす可能性のある情報漏洩のリスクがないかを客観的に判断する役割を担います。
また、ISOが定めた基準を満たしているかを判断するために、ISO監査を行います。ISO規格とは、対外的に商品やサービス、マネジメントシステムなどの品質を担保するものです。ISO規格の認証を受け続けることは、社会からの高い評価につながります。
■内部監査が不要な事例
以下に当てはまる会社は、基本的に監査役を置かなくてよいとされています。つまり、内部監査の実施が義務づけられていません。
・株式譲渡制限会社
・委員会設置会社
・取締役会が設置されていない
・取締役会と会計参与の設置がある
ただし、会社の規模などによって必ずしも内部監査が不要とはならない場合もあることに注意しましょう。
内部監査の目的
内部監査の目的は会社によってさまざまではあるものの、次の3つなどが挙げられます。
・不正の防止および低減
・経営に対する改善策の助言
・業務効率の向上
内部監査は、不正の発生リスクを調査し把握するほか、経営目標の達成を実現するために改善策の助言を行うものです。また、経営者による組織のコントロールが業務の効率性に影響するため、経営者が適切に組織をコントロールできているかを調査します。
内部監査を実施する際の注意点
内部監査を実施する際のおもな注意点として、以下のようなものがあります。
・内部監査人は独立した立場の、信頼できる者を選ぶ
・内部監査の調査内容は速やかに経営改善に活かす
内部監査は、公平な判断を下すことが重要です。そのため、他の部署から独立した立場であることが求められます。また内部監査後に、改善策や助言を活かして経営改善がなされないと、実施する意義が問われます。
内部監査の流れ
会社によって詳細は異なるものの、内部監査はたとえば次のような流れで実施されます。
1.予備調査を行う
↓
2.監査計画をたてる
↓
3.本調査を実施する
↓
4.調査結果の評価・報告をする
↓
5.改善の提案を行う
各段階についての概要を解説していきます。
1.予備調査を行う
予備調査は、本調査の1〜2ヵ月前に実施するケースが多いです。監査の対象となる部門にあらかじめ通知を行うことが一般的ですが、不正会計などの疑いがある部門へは、抜き打ちで調査を行うこともあることに注意しましょう。
2.監査計画をたてる
予備調査後、会社の規定に沿って監査計画を立てます。監査計画には、監査対象とする業務の範囲や監査チームが考慮するポイントなどを盛り込みましょう。
なお、先に監査計画を立て、その内容を踏まえて予備調査を実施する会社もあります。
3.本調査を実施する
監査計画を策定したら、本調査を実施します。事前に計画した監査要点を考慮し、予備調査で得た情報とあわせてさまざまな点を調査・分析します。部署の責任者や従業員を対象にヒアリングすることも。
4.調査結果の評価・報告をする
調査が終了次第、調査や分析で得た情報や証拠となる書類をもとに評価を行います。評価した内容や調査・分析結果は報告書にまとめ、取締役や経営幹部、監査対象部門にそれぞれ報告と説明をします。
5.改善の提案を行う
改善の必要がある点が見つかった場合は、監査対象となった部門に対し、改善計画書などを提示して改善の提案を行います。改善の必要があると判断された理由や今後の改善の方向性、具体的なアクションを起こすスケジュールなどを細かく伝えましょう。各部門の責任者と相談しながら、具体的な改善策を出すことが望ましいです。
改善アクションを提案した後は再度調査を実施し、改善策の実施状況や、問題点が改善されているかどうかの確認をします。
内部監査の定義や流れを理解しよう
内部監査とは内部監査人や内部監査部門が行う監査のことで、会社の状態を確認したうえで評価し、課題の改善や予防のための助言やサポートを行う取り組みです。不正の防止や低減、業務効率の向上などを目的に行います。
内部監査の実施により、企業内の課題を明らかにし、改善に向けた取り組みを行うことが重要です。改善を重ねていくことが企業の成長につながり、社会的評価にも反映されます。外部監査や監査役監査と混同しやすいため、それぞれの違いをおさえつつ、内部監査の定義や流れを正しく理解しましょう。
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