日本ならではの「時候の挨拶」
日本は、「挨拶」を非常に大切にする国です。「時候の挨拶」もまた、そのような日本を象徴するものであり、現代まで続く文化のひとつです。
本章では、日本独自の文化である「時候の挨拶」について解説します。時候の挨拶の意義やビジネス・プライベートでの活用法、挨拶文の構成のほか、6月の手紙に役立つ情報も紹介します。
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■時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは、季節を感じさせる言葉を用いて挨拶状の冒頭に記載する文章のこと。例えば「陽春の候」といった表現が、時候の挨拶に該当します。
これらの表現は、暑い季節や寒い季節に相手の健康を気遣う意味合いがあり、挨拶状には必須の表現とされています。時候の挨拶で用いられる語句は、二十四節気を目安に選択されることが一般的です。
■ビジネス・プライベートの挨拶
時候の挨拶は、ビジネスでもプライベートでも使用される挨拶です。6月に使われる時候の挨拶には、3つの代表的なものがあります。
・向暑の候
・長雨の候
・入梅の候
「向暑の候」は暑い時期になることを意味する挨拶であり、6月を通して使用されます。「長雨の候」は雨が続く様子を描写する言葉で、梅雨の時期に適した挨拶です。「入梅の候」での「梅」は、梅雨を指しています。梅雨入り後は使用できないため、注意してください。
■挨拶文の構成
ビジネスや学校関連の文書、お礼状、プライベートな手紙などを作成する際には、【前文】→【主文】→【末文】→【後付】の順で構成することが基本です。
この基本構成を踏まえつつ、状況や目的に応じて細部の要素を変更しながら適切な文章を仕上げていくことで、違和感や失礼のない文書が完成します。【前文】とは「拝啓」などの頭語であり、【主文】とはいわゆる本文です。【末文】は結びの挨拶であり、相手の健康や繁栄を祈る言葉を指します。【後付】は日付や署名、宛名です。
■6月に使える手紙の話題
6月の手紙に使える話題には、どのようなものがあるのでしょうか。本章では、6月の季節感が伝わるキーワードを紹介します。花や植物、食べ物、風物詩、イベントなどの項目ごとに6月に使える話題を分けて解説するため、手紙を書く際の参考にしてください。
〈花・動植物〉
あめんぼう、紫陽花、うつぼぐさ、くちなし、石楠花、雨蛙、蛍、百合、菖蒲、かたつむり
〈食べ物〉
新生姜、すずき、さくらんぼ、びわ、みょうが、若鮎、鱧(はも)、らっきょう
〈風物詩・イベント〉
衣がえ、和菓子の日、田植え、父の日、鮎釣り、梅仕事、蛍狩り、嘉祥の日、夏越の祓(なごしのはらえ)
〈節気・時期〉
夏至、梅雨、入梅、梅雨冷え、空梅雨、梅雨晴れ
【上旬〜下旬】6月に使える時候の挨拶
本章では、6月の上旬から下旬にかけて使える基本的な時候の挨拶をご紹介します。季節を感じさせる表現を活用することで、一層魅力的な文章が書けるようになるでしょう。ぜひ本章の内容を参考に、細かな時期に合わせた挨拶表現を活用してください。
■上旬の挨拶
6月上旬に使える挨拶の例文は、以下のとおりです。
・梅雨前線が近づいてきたようですが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
・雨に濡れる紫陽花が美しい季節、こちらも相変わらずつつがなく過ごしております。
・空梅雨がつづいています。皆様にはお変わりございませんでしょうか。
・深緑の折、皆様におかれましてはますますご清祥のことと存じます。
■中旬の挨拶
次に、6月中旬に使用できる挨拶4つの例文をご紹介します。
・桜桃のみぎり、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
・梅雨明けが待ち遠しい今日この頃、皆様元気でお過ごしのことと存じます。
・入梅の候、皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
・庭のあじさいが、鮮やかに花開く季節となりました。