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2023.09.01

「海老芋」とはどんな芋? 里芋との違いや調理の仕方について紹介【専門家監修】

「海老芋」とは、サトイモ科に属する、海老のような模様が特徴的な芋のことです。「京芋」とも呼ばれ、京都の伝統野菜の一つでもあります。本記事では、海老芋の特徴や調理方法、海老芋を使ったレシピについて紹介します。

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「海老芋」とは?

「海老芋(えびいも)」と聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか? 高級食材というイメージでしょうか? もしくは注文した料理の中に海老芋が出てきて、「どんな食材だろう?」と調べてみたら、このページに辿り着いた、という方もいるかもしれません。

「海老芋」とは、サトイモ科に属する芋のことです。海老のような模様と、反り返った形から、「海老芋」という名前が付けられました。また、「京芋」と呼ばれることもあり、京都の伝統野菜として親しまれています。

通常の里芋に比べて栽培が難しいため、生産量はそこまで高くありません。しかし、独特の食感と風味があり、大変人気のある食材となっています。本記事では、「海老芋」の特徴や旬の時期、調理方法などについて、京都・錦の老舗「かね松」の主人・上田欣司さんにお話をうかがいしました。

海老芋

1:由来

海老芋とは、サトイモ属サトイモ科に属する根菜です。同じくサトイモ科に属する唐芋(とうのいも)を何度も土寄せするなど、特殊栽培して作られます。土寄せすることで、土の重さで海老のように湾曲した形に。さらに、そのときにできる形やしま模様が海老に似ていることから、「海老芋」という名前が付けられたそうです。

海老芋の歴史は、江戸時代までさかのぼります。江戸時代の安永年間(1772~1781)に、青蓮院宮(しょうれいいんのみや)が、長崎から持ち帰った唐芋を宮家に仕える者に栽培させてできた、大ぶりで良質な芋が海老芋の起源であるとされています。その後、名神高速道路の竹田地区の小山さんという方が、長年その種子を保存してくれていたおかげで、現在でも栽培が可能になったのです。

京野菜ではありますが今では京都市内であまり栽培されておらず、多くは静岡県で栽培されています。

2:特徴

海老芋の最大の特徴は、煮崩れしにくいこと。そのため、煮物料理にはぴったりです。京都では、棒だらと海老芋を炊き合わせた「いもぼう」が、おばんざいとして古くから愛されています。

また、海老芋の茎と根にも特徴があります。葉柄は「ずいき」といわれ、食用にもなりますが、北野天満宮で行われる「ずいき祭」の神輿の屋根に使われています。一方、親芋は頭芋(かしらいも)といって、正月用のお雑煮の中に入れて食べるのが、京の町衆の習慣でした。

3:里芋との違い

粘度のある独特の食感と、海老のような模様が特徴的な「海老芋」。サトイモ科に属するということもあり、里芋との違いがよく分からないという方も少なくないでしょう。海老芋と里芋の決定的な違いは、どの部分を食べるかという点です。

海老芋

サトイモ科の芋は、茎が肥大化したもので、株の中心部に大きな親芋(種芋から出た芽の部分)があります。そして、親芋から出る腋芽(えきが、芽の一種)にあたるのが、子芋孫芋と呼ばれる部分です。

里芋は、「子芋と孫芋を食べるタイプ」「親芋と子芋を食べるタイプ」「親芋のみ食べるタイプ」「葉柄を食べるタイプ」の4種類に大別できます。市場によく出回る里芋は、石川早生(いしかわわせ)土垂(どだれ)と呼ばれるもので、こちらは子芋と孫芋を食べるタイプに分類されます。

孫芋を煮物などにして食べるのが一般的で、子芋は孫芋に比べて筋が多く固いため、好みが分かれるかもしれません。一方で、海老芋は「親芋と子芋を食べるタイプ」に分類されます。しかし、実際に市場に出回るのは子芋と孫芋の方が多いそうです。

海老芋の子芋は、通常の里芋に比べて柔らかく、煮崩れしにくいのが特徴。古くから海老芋が親しまれてきた京都の料亭では、海老芋を海老やマツタケの形に細工することもあるのだとか。また、海老芋の孫芋も子芋と同様、里芋に比べて柔らかく、濃厚な味わいが特徴です。

出典:JA遠州中央

「海老芋」の旬は?

海老芋の出荷は9月中旬頃から始まります。特に、11月から12月にかけては、年末年始の準備などもあるため、市場によく出回るそうです。11月から2月頃まで出回る海老芋ですが、旬の味を最も楽しめる時期は、11月から1月とされています。

「海老芋」の調理方法と保存法

では、海老芋はどのように調理・保存すればよいのでしょうか? ここでは、海老芋の正しい調理方法と保存法について紹介します。

料理のアクをとっている様子

1:調理法

海老芋を調理する際は、少し厚めに皮をむくのがポイントです。なお、海老芋はぬめりがあるため、濡れたまま皮をむくと、手を怪我してしまう恐れがあります。水洗いした後は、キッチンペーパーで表面についた水分を拭き取ると、安全かつ簡単に皮をむくことができます。

サトイモ科の芋を調理する際、あく抜きするために一度茹でるという工程があります。しかし海老芋の場合は、皮をむいて水洗いした後、キッチンペーパーで水分を拭き取ってから茹でずに煮汁で煮ることもできます。そのまま煮汁で煮ることで、海老芋本来の味を楽しむことができるのです。

2:保存法

海老芋を含むサトイモ科の芋は、表面についている土を落とすと、乾燥による品質劣化が早まってしまいます。そのため、土は洗い流さず、そのまま冷暗所で保存するのがおすすめ。すでに表面の土が落ちている場合は、濡れた新聞紙で包むと、乾燥を防ぐことができます。

また、あまり低温になると海老芋の品質が低下してしまうため、冷蔵庫での保管は避けるのが無難です。直射日光の当たらない、涼しい場所での保管が適しています。

「海老芋」を使ったレシピ

では、海老芋はどのようなレシピに活かせるのでしょうか? ここでは、海老芋を使ったおすすめのレシピ「海老芋の炊いたん」について紹介します。ぜひ、料理の参考にしてみてください。

海老芋の炊いたん

ちょっとしたおつまみにもできる、シンプルな煮物です。海老芋本来の味わいを楽しむことができます。

材料(4人分)

海老芋…2本
一番だし…1000cc
薄口醤油…大さじ1.5
みりん…小さじ2
鷹の爪…適量
柚子の皮の千切り…適量
水菜…適量
人参…適量

作り方

1:海老芋の頭と根元を切り落とし、海老芋が六角形になるように皮を厚めに剥きます。
2:1本を4つほどに切ります。
3:鍋に(2)と、米のとぎ汁・鷹の爪を入れ、火にかけます。灰汁を取りながら固茹でし、湯から上げたら水にさらしてください。
4:鍋に海老芋を戻し、一番だしで似て、薄口醤油・みりんで味を整えます。お皿に盛り付けたら、柚子の皮、ゆでて出汁につけた水菜と人参をあしらいます。

最後に

今回は、海老芋の特徴や由来、おすすめのレシピについて紹介しました。秋から冬にかけて出回ることが多い海老芋は、通常の里芋に比べ、柔らかく煮崩れしにくいということが分かりました。海老芋を購入した際は、ぜひ独特の食感と風味を堪能してみてください。

監修

かね松老舗 上田欣司(うえだ・きんじ)

明治15年から続く老舗の青果店の代表取締役。京都の錦市場を拠点に関西地域で3店舗の運営管理を行なっている。京野菜を中心に商品販売しており、松茸や筍など季節ごとに旬の食材を多数仕入れている。特に松茸に関しては、京都で最も古くから販売しているお店として、京都の知事老舗賞を受賞した経歴を持つ。

構成・執筆/京都メディアライン

引用・参考/『もっと知りたい京野菜』(上田耕司著、淡交社)

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