「メタ」とは?言葉の意味と使われ方
さまざまな場面で「メタ」という言葉を聞くことがあります。複数の意味があるので混乱しがちですが、まずは基本を押さえておくことが大切です。
基本的な意味や使われ方のバリエーションを紹介します。
基本的な意味
「メタ」はギリシャ語の「meta」が元になっている言葉で、「高次の」「超越的な」という意味を持ちます。外側の視点に立って、異なる次元から物事を見るというような意味があります。
たとえば、映画の登場人物が物語の中にはいないはずの作者や観客に向かって、突然話しかけるといった演出を見たことがないでしょうか。フィクションの外側の視点から、登場人物が言葉を発したという意味で「メタ発言」と呼ばれます。
フィクションの世界以外にも、学問やITなどさまざまなシーンで使われており、一言で「メタ」といっても異なる意味を持つ言葉です。
《間に、変化して、後退して、などの意のギリシャ語から》
1 ベンゼン環の二つの置換基の位置が一位および三位にあること。→オルト →パラ
2 酸素酸のうち、水和の程度の低いもの。メタ酸。
3 他の語の上に付いて複合語を作り、超越した、高次の、の意を表す。「メタ言語」「メタメッセージ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
使われ方のバリエーション
「メタ」は接頭辞や略語として使用されます。接頭辞とは、特定の言葉の前に付けて使用する語句のことです。「メタな○○」や「メタ○○」というように使用します。
また、略語としてメタを使用するときは「メタファー」の意味で使用するのが一般的です。メタファーは「暗喩」という意味で、具体的ではない比喩表現を指します。
たとえば「あなたは月だ」というような表現がメタファーです。物事を外側の視点から見るという意味のメタと混同しやすいので、注意しましょう。
隠喩いんゆ。暗喩。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
さまざまな場面で使われる「メタ」
「メタ」はさまざまな場面で使用され、複数の意味があります。使用する人の立場や場面によって、意味が異なる点がポイントです。
使用される場面別に、使い方のポイントをチェックしましょう。
IT用語
IT用語として使われる際は接頭辞として使用するケースが多く、基本的なメタの使い方と同様に扱われています。
たとえば「メタデータ」「メタプログラミング」などの言葉が代表的です。メタデータは、あるデータについての内容・性質などを記述したものを指します。
メタプログラミングは、プログラミング技法の一種です。コードを生成するために設計されたロジックを使用してプログラミングすることや、そのプログラム自体を指します。
ネット用語・スラング
ネット用語や、スラング(俗語)として使用されるメタは、基本的には「メタフィクション」を略した言葉として使われるケースが多いでしょう。
フィクションとは、実際にはない作り話や、虚構の世界での出来事を意味する言葉です。フィクションの中で、フィクションであることを意図的に伝える手法のことを、メタフィクションといいます。
たとえば、漫画の主人公が「またこの展開か、ワンパターンな作者だ」と、作中には存在していないはずの作者の悪口を言う描写などが、メタフィクションです。
社会・企業
メタは、企業の名称としても使用されている言葉です。アメリカのFacebook社は、2021年に社名を「Meta(メタ)」に変更しました。
Metaは、仮想世界を表す「メタバース」から取ったとされる社名です。メタバースとは、IT(情報技術)によって仮想的に構築された三次元空間のこと。今後、メタバースを主軸にしたサービスが展開されていくことを見越した社名変更だとされています。
なお、SNSサービスの運営会社の名称が変更になっただけで、「Facebook」や「Instagram」は、そのままの名称が引き続き使用されています。
医療
医療用語としても、メタという言葉が使用されています。ガンなどの転移を意味する、英語の「metastasis」が元になった用語です。ギリシャ語のメタとは関係ないので、注意が必要です。
特定の場所にガンが転移したときなどに使用され、肺に転移が見られるときは「肺メタ」、肝臓に転移が見られるときは「肝メタ」などといいます。
社会学
社会学用語に「メタメッセージ」というものがあります。メタメッセージは、そのメッセージが本来持っている意味を超えて、別の意味や見方を示す言葉です。
たとえば、親しい友人同士でふざけていて「馬鹿だなあ」と言われたときに、言われた側が本当にバカだと思われていると解釈するとは限りません。人によっては「面白いなあ」と言われたのと、そう変わらないように受け取る人もいます。
しかし、真面目な場面で同じ言葉を言われれば、けなされたと感じる人もいるでしょう。相手との関係性によっても、本来はどのような意味なのかが変わります。
発信者の言い方や表情によって、別の意図を汲み取る場合もあれば、裏の意図を読むなどして、本来の意味と違った解釈をしてしまうこともあります。
社会人が知っておきたい「メタ認知」
「メタ認知」は社会人に必要なものの一つで、不足すると仕事がうまく進められない原因になることもあります。メタ認知の意味について、理解を深めましょう。
認知していることを認知すること
「メタ認知」とは、感じる・考える・判断する・記憶するなどの認知行動を、自らが第三者的な視点を持って把握することです。
たとえば、人と言い合いになって怒りの感情が湧いてきたとします。「痛いところを突かれたから、私は怒っているのだな」と、もう一人の自分が心の中で冷静に分析しているときなどが、メタ認知をしている状態といえるでしょう。
自分の認知を理解している人は感情をうまくコントロールでき、周囲とうまく距離を測りながら付き合えるタイプが多いといわれています。