「散見」とは
「意見が散見している」のように使われる「散見」。ビジネスシーンではよく登場する言葉ですが、正しい意味を知らない人もいるかもしれません。「散見」は、さまざまなシーンで使われる言葉なので、意味だけでなく適切な使い方も把握しておきたいですね。
意味や使い方に加え、「散見」という言葉を使う際のポイントなども一緒に見ていきましょう。
「散見」の意味
【散見】
読み方:さんけん
あちこちに見えること。ちらほら目につくこと。「雑誌等に—する新語」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
目に映ることを指すのが「散見」ですが、耳にすることや目に見えないことなどに対しても使われます。また、「散見」の主語となるのは「物」や「事柄」が多いでしょう。
「散見」の使い方
「散見」の使い方を見ていきましょう。まずは、使い方の特徴から紹介します。
使い方の特徴
上述したように、「散見」は「物」や「事柄」に対してよく使います。「意見」「課題」「問題」「言葉」「方針」「ミス」などに対して用いられることが多いでしょう。
「散見」を使う際は、次のような言い回しをします。
・散見する(した)
・散見している(していた)
・散見される(された)
例文を紹介
「散見」の使い方を例文で見ていきましょう。
《例文》
・雑誌などに散見するキーワードの意味を知らない人は、かなり多い
・反対する意見も散見したが、プロジェクトの内容変更はしないことになった
・細かな問題が散見しているものの、全体的にはよくまとまっていると言えるだろう
・散見していた課題はすべて改善されており、彼の能力の高さを感じた
・この企画に対する批判的な声がある一方で、賞賛する意見も散見される
・オフィスのあちこちに資料やファイルが散見されたので、キャビネットを新調した
いずれの例文も、「あちこちに見える」「ちらほら見かける」ということを意味します。
「散見される」は誤り?
上記の例文でも紹介した、「散見される」という言い回し。実は、この使い方を誤りとすることがあります。「散見」の意味は「見られる」ことを表すため、「散見される」だと受け身の表現が重なることになるからです。
しかし、「散見される」はすでによく知られている言い回しであり、日常的にも使われていますよね。「散見される」と表現しても意味は通じますから、使っても問題ないと考えていいでしょう。
正しい使い方は「散見する」であることを把握しておき、シーンによって使い分けるといいですね。
「散見」を使う際のポイント
「散見」という言葉を使うポイントについてもチェックしましょう。次に紹介することは意識する方がいいかもしれません。
否定的な意味合い以外にも使える
「散見」は、否定的な意味合いでしか使えないと思っている人もいるかもしれません。批判的な意見や問題、課題に対して使うことが多いため、そのようなイメージを抱きがちですよね。
実は、「散見」には否定的な意味合いは含まれません。そのため、否定的な意味合い以外にも使うことができます。
「できる」「できない」はNG
「散見」は、「あちこちに見える」ことを意味する言葉。自分の意志でコントールできることではありませんので、「できる」「できない」をつけて使うことはないと考えてください。
回数の表現には用いない
「散見」は、「あちこちに見える」「ちらほら見かける」を意味しますので、回数の表現には用いません。また「ちらほら」の意味を含むため、「多く散見」「少なく散見」と表してしまうと、二重表現(同じ意味の語を重ねること)になります。
いずれも「散見」ではなく、他の表現を用いる方がいいでしょう。
「見受けられる」との違い
「散見される」と似たイメージのある「見受けられる」。この二つの言葉の違いを見ていきましょう。
「見受けられる」の意味
「見受けられる」は、「見られる」「ある」などの意味を持つ言葉。「目に留まる」「推測される」などの意味で使うこともあります。物事や事象を断定するのではなく、「〜だろう」や「〜のようである」と推定する場合に使うことが多いでしょう。
二つの言葉の違い
「散見される」は、目に見えるものや根拠のあることに対して使う言葉ですが、「見受けられる」は推定や推測の意味でも用いられています。
・問題が散見される
・問題があるように見受けられる
上記の場合だと、「散見される」は問題が確かに存在していることを表しています。一方の「見受けられる」は、断言はできないが、問題が存在しているように思う、ということを述べていることになりますよね。
「散見される」と「見受けられる」では、意味合いが異なります。どちらの意味も正しく把握し、混同しないようにしたいですね。
「散見」と似ている言葉
ここからは、「散見」と似ている言葉を紹介します。いずれも、日常やビジネスシーンで使う言葉です。例文とあわせてチェックしてください。
「窺える」
「すき間などから、ひそかにのぞいて見る」という意味を持つ、「窺える」。「うかがえる」と読みます。「部分から全体を推察し、感じ取る」ということも表します。
《例文》
・彼女の持ち物から、富裕層であることが窺えた
「まばらにある」
「まばら」とは、「順序だっていないさま」や「ばらばらであるさま」を表す言葉。よく見ると周囲に同じようなものがあることを表します。
《例文》
・木がまばらになってすぐ、平坦な道に出ることができた
「往々」
「往々」とは、物事がしばしばあるさまを表す言葉。「おうおう」と読みます。辞書などでは「往往」と表記されており、「往々にして」「往々に」のように使われることが多いでしょう。
《例文》
こういうことは往々にしてあるものだと心得ておこう
最後に
「散見」という言葉の意味や使い方、使う際のポイント、似ている言葉などをまとめました。「散見」はビジネスシーンでもよく登場しますので、意味だけでなく、適切な使い方も把握しておきたいですね。
ちなみに、「散見される」と使うのは誤りとされていましたが、すでに浸透していることや、意味が通じることなどから、この表現を使っても問題ないとされています。本来の正しい表現は「散見する」であることを心得ておき、シーンによって使い分けられるといいですね。
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