「佳境」の意味や慣用句
「佳境」(かきょう)は、興味を感じさせる場面を指す言葉です。また、慣用句として「佳境に入る」「佳境を迎える」のように用いられます。
か‐きょう〔‐キヤウ〕【佳境】
1.興味を感じさせる場面。「話がーに入る」
2.景色のよい所。「県内随一のー」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
まずは、「佳境」の正しい意味合いや慣用句の使い方について見ていきましょう。
佳境は興味を感じさせる場面のこと
「佳境」という言葉は、物語や演劇などで興味を感じさせる場面を意味します。景色がよい所、という意味合いも含まれた言葉です。
そもそも「佳」という漢字には、「よい」「美しい」などの意味合いがあります。「境」はは「さかい」と読み、区切りや状況、様子を表す漢字です。
2つの文字が組み合わさった「佳境」は、プラスの要素をもつ言葉といえます。そのため、ネガティブなシーンでは用いないことが特徴です。
佳境の慣用句
「佳境」の慣用句には、「佳境に入る」「佳境を迎える」などが挙げられます。いずれも日常生活でよく耳にする言い回しですが、使い方を間違えると異なる意味合いになるため注意が必要です。それぞれの正確な意味を理解したうえで、正しく活用していきましょう。
佳境に入る
「佳境に入る」は、物語や演劇などが興味深い場面にさしかかったことを意味する慣用句です。一方で、近年は物事が最盛期にさしかかった状況を表す際にも用いられています。
「サンマ漁が佳境に入った」「野菜の出荷が佳境に入る」など、ニュースなどで耳にすることもあるのではないでしょうか。これは、それぞれの漁や出荷が最盛期に入ったことを表しています。
気を付けたいのは、「佳境に入る」が「忙しさ」を表す慣用句ではない点です。確かに物事の最盛期は忙しい場面が多々あります。
ただし「佳境に入る」は、あくまでも興味深い場面や最盛期を表す言葉であり、忙しさを伝える言葉ではありません。言葉を使用する際も、その点をしっかりと理解しておきましょう。
佳境を迎える
「佳境を迎える」もまた、「佳境に入る」と同様な意味合いをもつ言葉です。物事が最盛期を迎えた際にも用いられます。
「佳境」はプラスの要素をもつ言葉だと前述しましたが、「佳境に入る」「佳境を迎える」もまた、よい意味合いで用いられることが多い慣用句です。不幸なシーンでは使用されないため、気を付けてください。
「佳境」「佳境に入る」の使い方や例文
「佳境」にはプラスの意味合いがあり、「佳境に入る」「佳境を迎える」などと使用されるとお伝えしました。ここからは、「佳境」の正しい意味をふまえた例文をご紹介します。
前述したように、「佳境に入る」は忙しさそのものを示す言葉ではありません。その点も理解したうえで、正しい使い方を確認していきましょう。
・ドラマがいよいよ佳境に入ってきた
・秋になり梨の収穫は佳境を迎えた
・プロジェクトが佳境に入り、充実した日々を送っている
・年末になり年賀状の仕分け作業が佳境を迎えている
・川沿いに続く桜並木は市内随一の佳境だ
・両親と訪れた佳境が旅一番の思い出になった
佳境の類義語
「佳境」の類義語には、以下のような言葉が挙げられます。
類義語とは、意味合いが似通っている言葉のことです。そのため、場合によっては「佳境」の言い換え表現として用いられます。それぞれの正しい意味を理解し、表現の幅を広げていきましょう。
絶頂
「絶頂(ぜっちょう)」は、山の頂上やいただきを意味する言葉です。また、物事の「頂点」を表す言葉として用いられます。
ぜっ‐ちょう〔‐チヤウ〕【絶頂】
1.山の頂上。いただき。
2.最高のところ。頂点。「得意のーにある」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
絶頂は佳境の類義語であるものの、佳境が「最盛期のさしかかり」を表すのに対し、「最高のところ」を意味するという違いがあります。
また、絶頂は以下のようにネガティブな意味合いでも用いられる言葉です。
・度重なる惨事に彼は恐怖の絶頂を迎えた
・翌日の重要な試験を前に不安は絶頂を迎えた
前述したように、佳境は不幸な場面で用いられることはありません。類義語であっても、まったく同じようには使えるわけではないことを覚えておきましょう。
見せ場
芝居などで役者が得意な芸を見せる場面は「見せ場(みせば)」と呼ばれます。また、見せ場は「見るだけの値打ちがある場面」を意味する言葉です。
みせ‐ば【見せ場】
芝居などで、役者が得意な芸を見せる場面。また一般に、見るだけの値打ちのある場面。「自分の見せ場をつくる」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
興味を感じさせる場面を意味する「佳境」と「見せ場」は似た意味合いを持ちます。使用例は以下の通りです。
・主人公が涙を見せるシーンが一番の見せ場だった
・この芝居の本当の見せ場が始まる
・自分の見せ場をつくる
注目したいのは、「佳境」は「見せ場」のように「佳境をつくる」と用いられることがない点です。これは「見せ場」が役者をはじめとする舞台の担い手が作り出す状況であることに由来すると考えられます。
似たような言葉ではありますが、類義語と同じように「佳境」を使わないように気を付けてください。
山場
「山場(やまば)」は、もっとも盛り上がった需要な場面を指す言葉です。主に物事のクライマックスを意味しています。
やま‐ば【山場】
最も盛り上がった重要な場面。クライマックス。やま。「芝居の山場にさしかかる」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「山場を迎える」のように、「~を迎える」と使用される点も「佳境」との共通点です。そのほか、「山場」は以下のように用いられます。
・物語は重大な山場を迎えた
・なんとか仕事の山場を乗り越えられた
・A社との交渉は山場に差し掛かっている
・8回裏の逆転が試合の山場だった
・連続ドラマの放送も残り2回となり、物語は山場を迎えている
日常やビジネスで「佳境」を正しく使おう
「佳境」は、興味を感じさせる場面や景色のよい所を意味する言葉です。主に「佳境に入る」「佳境を迎える」などと使用されます。
近年は最盛期を表す際に用いられることから、「佳境」は「忙しさ」を伝える言葉と誤解されがちです。実際には、「佳境」という言葉を使って繁忙期をアピールすることはありません。
「佳」という漢字がよいこと、美しいことを表す漢字であるように「佳境」はプラスの意味合いで使用されます。類義語を知っていれば「佳境」が適さない場面でも状況や感情を表現できるでしょう。
「佳境」の意味や使い方を正しく理解し、ぜひ日常やビジネスシーンで活用してください。
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