蓋然性(がいぜんせい)とは?意味をご紹介
蓋然性(がいぜんせい)とは、特定のことが起こったり真実として認められたりする確実性の度合いを指す言葉です。なお、蓋然性を数量化したものが「確率」です。
蓋然性は次のように使います。
・明日は休講になりそうな予感はするが、蓋然性の乏しい推測だ。
・現場検証から、出火原因は放火ではなく寝たばこである蓋然性が高いといえる。
蓋然性は一般的に、「高い」や「低い」で表現されます。あまり日常会話では使われませんが、数学や統計学といった学問や、投資や法律などの実務の場面で使われることが多いようです。
なお、蓋然性を使った言葉としては、次のものが挙げられます。
「蓋然性合理主義」
蓋然性合理主義とは、確率をベースとして、合理的に行動することを好む考え方のことです。
たとえば、雲一つない天気で「今日は一日晴れそうだなあ」と思っても、降水確率が50%を超えたらレインシューズを履いて出かけるような人は、蓋然性合理主義といえるかもしれません。
自分の直感よりも、客観的な確率に重きを置き、なるべく合理的に行動します。
「蓋然性説」
蓋然性説とは、犯行が故意によるものかどうかを見極める際に、行為者が犯罪実現の蓋然性を一定以上認識しながら行為をしたときは「故意によるもの」と判断する学説です。
たとえば、「警備が甘いから盗めそうだ」と思いながら、品物を自分のカバンに入れたとしましょう。
行為者は盗みが成功する蓋然性を認識していたため、「魔が差した」や「偶然カバンに品物が入った」のではなく、故意に盗んだと蓋然性説では判断できます。
【蓋然性】がいぜんせい
ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い。確からしさ。これを数量化したものが確率。「―の乏しい推測」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
蓋然性と類似する意味の言葉
蓋然性と類似する意味で使われる言葉としては、次の4つのものが挙げられます。
それぞれの意味やニュアンスの違いを、例文を通してご紹介します。
確からしさ
確からしさとは、数学では確率のことです。英語では「probability」と表現することが多く、また、蓋然性も「probability」と訳することが多いことから、ほぼ同じ意味の言葉といえます。
ただし、確からしさは数学領域で使われるのに対し、蓋然性は投資や法律、会計などの実務でも使われることが多い点が異なります。確からしさと蓋然性の使い分けで迷ったときは、領域に注目してください。
・箱から赤いボールを取り出す確からしさを計算しましょう。
・その事象が起こる確からしさは1/9です。
確率
確率とは、ある事象の起こる可能性の度合いのことです。蓋然性や確からしさと同じく、英語では「probability」と訳すことが多いため、ほぼ同じ意味といえます。
しかし、確率は「確かな率」つまり「確かである割合や比率」と解釈できますが、蓋然性は「蓋然の性」つまり「おそらく当然そうなるであろうと思われる性質」と解釈でき、まったく同じというわけではありません。
「性」ではなく「率」を語尾につけて、「おそらく当然そうなるであろうと思われる割合や比率」を示す蓋然率(がいぜんりつ)とするほうが、確率に近い言葉といえるでしょう。
・彼女が待ち合わせに来る確率は0%だ。
・どのくらいの確率で雨が降るのか、天気予報をチェックしてみよう。
可能性
可能性には、次の意味などがあります。
・物事が実現できる見込み。「成功の可能性が高い」
・事実がそうである見込み。「生存の可能性がある」
・潜在的な発展性。「無限の可能性を秘めている」
一般的に可能性は、「ある」か「ない」かが論じられます。一方、蓋然性は「高い」か「低い」かが論じられる傾向にあるため、ニュアンスが異なります。
しかし、可能性と蓋然性は混同されることが多く、可能性が「高い」や「低い」と表現されることも少なくありません。
公算
公算(こうさん)とは、あることが起こる確実性の度合いのことです。実現する見込みの意味で、使われることもあります。
・成功の公算が大きい。
・彼女の計算によると、今年中にプロジェクトは完成する公算だ。
蓋然性と反対の意味を持つ言葉
蓋然性は確実性や確実性の度合いを指す言葉です。反対の意味やニュアンスを持つ言葉としては、次の3つのものが挙げられます。
それぞれの使い方を例文を通してご紹介します。
必然性
必然性(ひつぜんせい)とは、必ずそうなると決まっていて、それ以外にはありえないという要素や性質のことです。たとえば、次のように使います。
・あまりにもご都合主義で、必然性に欠けるストーリーだった。
・彼女がこの集まりに参加しているのには必然性がある。
また、必然性は哲学の用語としても使われます。哲学では次の3つの必然性があります。
・自然的必然性:自然現象が法則性・因果性によっていること。
・道徳的必然性:道徳法則を遵守することが義務として命令されていること。
・論理的必然性:判断の確実の程度がもっとも強く、主語が必ず述語と結合していること。また、推理において、結論が前提から論理法則に従って導き出されていること。
不可避
不可避(ふかひ)とは、避けようがないことや、その様子のことです。次のように使います。
・ここまでこじれてしまっては、国交断絶は不可避だ。
・サークルの解散は不可避となった。問題はいつ解散するかだ。
必至
必至(ひっし)とは、必ずそのことがやってくること、そうなるのは避けられないことや、その様子のことです。例文をご紹介します。
・部署ごとに対立しているようでは、組織の分裂は必至といえるだろう。
・そのような心構えでは、失敗するのは必至だ。
蓋然性の意味を確認しておこう
蓋然性とは、ある事柄が起こる確実性や、確実性の度合いを指す言葉です。あまり日常的に使う言葉ではありませんが、学問やビジネス関連で使われることもあるため、意味を確認しておきましょう。
また、蓋然性がふさわしくないと思われる場面では、確からしさや確率などの言葉で言い換えるようにしてください。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock