プロパガンダとは何?
まずはプロパガンダの内容を押さえ、人々にどのように働きかける行動なのか見ていきましょう。また、混同されやすい「アジテーション」や「洗脳」についても解説します。
プロパガンダの意味と使い方
プロパガンダ(propaganda)は、一般的に「政治的宣伝」と訳されます。良くも悪くも、個人や集団を特定の主張・思想へと誘導する情報活動のことです。
プロパガンダ(propaganda)
宣伝。特に、ある政治的意図のもとに主義や思想を強調する宣伝。
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
たとえば、プロパガンダは以下のように使用されます。
・あの映画は、特定の人種を悪者に仕立てた表現が多すぎて、プロパガンダにしか見えない。
・プロパガンダというと、感情をあおる激しいイメージだったが、それだけではないらしい。
「大衆に向けた情報操作」「世論誘導」など、ネガティブなニュアンスで使用されることも多い言葉です。
プロパガンダと似ているアジテーション
アジテーションの日本語訳は「扇動」で、「アジ」と省略される場合もあります。大衆の感情をあおって一定の方向へ誘導すること、またはその技術を指しており、プロパガンダとの共通点が多い言葉です。
激しく情緒に訴える演説や文章が、アジテーションの典型例です。特に感情をあおる方法として演説が重視され、ラジオやテレビを通しても行われます。
アジテーションとプロパガンダは、分けて考えられる場合もあるものの、拡散力の高いメディアの普及によって区別はあいまいになりつつあります。
プロパガンダと洗脳の区別は?
洗脳は、強制的な手段を使って人の主義・思想を根本的に改めさせることです。似ている言葉には、マインドコントロールが挙げられます。
プロパガンダは意図的に特定の主義・思想へ誘導する宣伝活動であるため、「誘導」という部分は洗脳と重なります。
しかし洗脳と比べて、プロパガンダは直接的な強制力とは言いにくく、本人の意志で情報を取捨選択できるという点に違いがあります。洗脳は〝外圧によって急激に変えられる〟というニュアンスを持っています。
プロパガンダは大きく2種類に分けられる
プロパガンダは、大まかに「ブラック・プロパガンダ」と「ホワイト・プロパガンダ」の2種類に分けられます。どのように違うのか、定義などをそれぞれ解説します。また、「コーポレートプロパガンダ」についてもあわせて解説します。
ブラック・プロパガンダ
ブラック・プロパガンダとは、発信元がわからない情報や偽装された情報、内容にうそ・誇張が混じっている情報をいいます。ブラック・プロパガンダの主な目的は、情報を受け取った人を混乱させたり、恐怖に陥れたりすることとされています。
ホワイト・プロパガンダ
ホワイト・プロパガンダは、事実に基づき、発信元も明らかにされている宣伝・PR活動のことで、日本では広報・説得・啓蒙として扱われてきました。わかりやすい例として挙げられるのは、企業のイメージアップCMです。次に詳しく解説します。
コーポレートプロパガンダ
企業のCMは自社商品が優れているとアピールし、視聴者の購買意欲を高めることを目的に作られるもののため、扇動とは異なります。ただし、背後には消費者の心理に働きかけて購買意欲を高める手法が駆使されているため、「コーポレートプロパガンダ」と呼ばれるのです。前述したように「コーポレートプロパガンダ」は事実に基づいて行われる宣伝のため、ホワイト・プロパガンダの一種といえます。
現代の新しいプロパガンダ手法
近年は、AI技術やSNSがサイバー犯罪やフェイクニュースに悪用される事例が見られます。新しい技術と結びつき進化したプロパガンダは、ますます見抜きにくくなっていくばかりです。
具体的には、近年メディアでも話題になった生成AIを使ったディープフェイク動画や、ボットを利用したSNSでの情報拡散・トレンド作りなど。特にAIの文章作成力は向上し、ボットの書き込みはまるで人間が書いたかのように見えます。ディープフェイクの技術も進むおそれがあり、今後は情報を見抜く力がいっそう求められていくといえます。
情報を見抜く力の養い方とは?
先に解説したフェイクニュースなどに惑わされないためには、毎日の生活の中で、情報の真偽を見分ける癖をつける必要があります。たとえば、何か目新しい情報を見つけてコメントを投稿したり拡散したくなったりしたら、まず別の情報源と照らし合わせるなどして真偽を調べてみることが重要です。
また、普段からニュースや娯楽作品が訴えるメッセージの目的や、背景を考える習慣を持つことも大切です。怒りや恐怖などの特定の感情をあおる内容かどうか、インターネットなら別のサイトに誘導しようとしていないかチェックする必要があります。冷静に判断することで、偽の情報に踊らされるのを回避できると考えられます。
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