屁理屈の意味や由来
屁理屈(へりくつ)は「屁」と「理屈」から成る言葉です。理屈の意味はわかるけれど、なぜ「屁」がつくのか、不思議に思うかもしれません。屁理屈の意味や由来、言い換え表現を紹介します。
無理やりこじつけた理屈のこと
屁理屈とは、無理やりこじつけた理屈や、筋の通らない理屈のことです。
へ‐りくつ【×屁理屈】
まるですじの通らない理屈。道理に合わない理屈。
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
理屈は物事の筋道や道理を意味します。
「屁」にはガスとして出る「おなら」のほかに、おならのように価値のないものや取るに足らないもの、といった意味があります。全く問題にならない様子を「屁でもない」や「屁の河童(へのかっぱ)」と表現することがありますが、屁理屈の屁もそれと同じです。
筋の通らない理屈をいくら言ったところで、誰も相手にしません。
屁理屈の言い換え表現
屁理屈の類語には「詭弁(きべん)」「こじつけ」「言い訳」などがあります。詭弁とは、道理に合わないことを、さも合っているかのように思い込ませる弁論です。
こじつけも、自分の都合のいいように無理やり理屈をつけるさまを指します。同じ意味で、中国の古書に由来する「牽強付会(けんきょうふかい)」という四字熟語もあります。
言い訳は事情を説明し、相手に理解してもらうことです。正当な説明を指す場合もありますが、一般的には「自分の失敗を取り繕うために、ごまかしたり人のせいにしたりすること」と解釈されます。
屁理屈の使い方や例文
屁理屈という言葉は、どのようなときに使われるのでしょうか?主なシーンや使うときのポイント、例文を紹介します。
あまりいい意味では使われない
屁理屈は、言葉の成り立ちからもわかるように、いい意味で使われることはほとんどありません。たとえば「あの人はよく屁理屈を言うから信用できない」のように、屁理屈を述べている相手に対する否定的なニュアンスが込められています。
子どもが屁理屈を言ったときも、多くの親は「屁理屈ばかりこねないで!」と叱るはずです。「よく考えたね」と感心することはあっても、その実あきれており、褒めているわけではありません。
屁のつく言葉は、目上の人との会話や改まった場など、口にするのがためらわれるケースもあります。屁理屈を使いたくない場合は「詭弁」や「言い訳」などに置き換えるのがベターです。
具体的な例文
屁理屈は「並べる」や「こねる」と一緒に使われるのも特徴です。屁理屈を用いた文章の例は以下の通り。
・弟が屁理屈をこねるので、なぜか私まで母に叱られた
・あの人の意見は、ただの屁理屈だと思う
・屁理屈を並べてばかりいないで、素直に謝ってほしい
屁理屈の具体例としては、宿題をやらない子どもを叱ったときの「先生は自分でやれとは言っていないから、ママがやってよ」という反論や、仕事が遅れている部下から上司への「〇日までに終わるという約束を、あなたとはしていません」などが挙げられます。
「屁理屈を言う暇があったら勉強しなさい」と叱る親に対し、子どもが「屁理屈を言う練習も勉強の一環だ」と主張するのも、立派な屁理屈です。
屁理屈をよく言う人の特徴
屁理屈がいい意味で使われないのと同じく、屁理屈を多用する人も、他人から良く思われることは少ないといえます。屁理屈をよく言うタイプの人の特徴を3つ紹介します。
他人の意見を聞かない
屁理屈な人の特徴として、他人の意見を聞かない点が挙げられます。「自分の考えには価値があり、他人の考えは無価値」と考える傾向があるのです。そのため自分の意見に固執し、周囲の意見を受け入れようとしません。
受け入れないだけでなく、相手の話を否定しがちなところもあります。一例ですが、誰かが会議の場で新しいアイデアを提案しても「それは無理だよ」と一蹴し、理由を聞くと屁理屈が返ってくる…といった具合です。
友人との会話でも相手の話を遮って「それは違う」と即座に否定し、自分の経験だけを語り続けるかもしれません。
話の論点をずらす
屁理屈な人のもうひとつの特徴は、話の論点をずらすことです。議論の本質から逸れ、自分に都合のいい方向へ話を誘導しようとします。
たとえば、仕事の遅れを指摘されると「前回はこうだった」「他の人も遅れているじゃないか」などと反論し、自分の責任を回避しようとするのです。
恋人から浮気をなじられた男性が「昔は妻がたくさんいるのが当たり前だったんだよ」「動物の本能だから仕方がない」などと開き直るのも、論点をずらそうとする屁理屈の一例です。
自分は賢いと思っている
屁理屈を言いがちな人の特徴、3つ目は「自分は賢い」と思い込んでいることです。彼らは自身の知識や能力を過大評価し、他者を見下す傾向があります。まるで、自分だけが真理を知っているかのように振る舞いがちです。
自分を賢いと思うからには、学生時代に成績がよかったり、勉強ができると親や先生に褒められたなど明確な根拠があるのでしょう。
しかし社会に出れば、必ずしも自分だけが賢いわけではありません。多くの人はそれに気づきますが、屁理屈な人は気づいていない、もしくは見ないふりをしているのです。自分の屁理屈に対して周囲があきれて反論しないのも意に介せず、「論破した自分はやはり賢い」と勘違いすることも…。
屁理屈を言う人への対処法
相手の屁理屈に付き合わされ、うんざりすることはよくあります。会社の同僚やママ友に屁理屈な人がいたら、どのようにかわせばよいのでしょうか。子どもの屁理屈への対処法も併せて紹介します。
相手の意見を肯定する
相手の意見を肯定することは、屁理屈を言う人への効果的な対処法のひとつです。屁理屈な人は常に自分が正しいと考える傾向にあり、否定されるとさらなる屁理屈を返します。
たとえば大事な用事があって外出する日、一緒に行く人が「今日は雨だから外出したくない」と言い出したので、「雨くらい我慢しようよ」と答えたとしましょう。
大抵の人は「そうだね、大事な用だし」といった流れで終わるかと思いますが、相手が屁理屈な人だったならそうはいきません。「雨には不純物が混じっていてね」「傘が邪魔なんだよね」などと返ってくるのがオチです。
はじめから「たしかに雨の日は外出がおっくうだね」と共感を示せば、相手の自尊心を傷つけずに話を進められます。
深く関わらないようにする
毎回相手の意見を肯定していると、こちらも疲れてしまいます。可能であれば、屁理屈な人とは深く関わらないようにすることも有効です。
会社で毎日顔を合わせる間柄なら会話をあいさつ程度にとどめ、接触する機会を減らしましょう。保護者会やランチ会などで会う相手であれば、近くに座らないようにします。
ただし、同じ部署であったり、うっかり隣の席に座ったりして相手が近い場合は、完全に無視するわけにもいきません。屁理屈をこねだしたら、前述したようにとりあえず肯定しましょう。その後さりげなく話題を変えてみると、相手を傷つけず自分もストレスをため込まずに済むはずです。
子どもに屁理屈を言われた場合
子どもの屁理屈への対応には、大人とは異なるアプローチが必要です。子どもの場合、論理的思考や自己主張の発達過程にあるため、屁理屈をこねるのも成長の一部と捉えることが大切です。
また、子どもの屁理屈は〝親を信頼しているからこそ出てくる〟という側面もあります。本人も筋が通らないことはわかっていて、あえて試しているのです。
子どもが屁理屈をこねだしたら、まずは落ち着いて子どもに共感してみましょう。たとえば、宿題をやらない理由が明らかに屁理屈でも、「宿題は面倒くさいよね」と共感を示します。
その上で「宿題をするといいこともあると思わない?」と問いかけたり、「今すぐやるか、30分後にやるかどっちがいい?」と子どもに決定権を委ねたりすれば、自主性を育めるでしょう。
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