英語の「レガシー」の意味
「レガシー」は、元々英語の「legacy」が由来になっている言葉です。まずは、英語での意味を確認しましょう。

(c)AdobeStock
「legacy(レガシー)」には複数の意味がある
英語の「legacy」は、複数の意味を持つ言葉です。例えば、辞書では以下のように定義付けられています。
leg・a・cy
/léɡəsi/
[名][C]
1 遺産,遺物(heritage).
1a 《法律》(遺言による動産の)遺贈;遺産(inheritance).
inherit a legacy
遺産を相続する
2 (先輩のうちに血縁者がいる大学友愛会(fraternity)の)特別会員(候補).
━━[形]《コンピュ》〈ソフト・ハードの仕様などが〉古くなった,時代に合わなくなった.
「プログレッシブ英和中辞典(第5版)」(小学館)より引用
基本的な意味は「遺産」「遺物」ですが、形容詞としてはコンピューター用語で「古くなったシステム」を指すケースもあります。日本語での「レガシー」も、英語での主な意味である「遺産」「遺物」が主流です。コンピューター用語として使われることもあります。
分野ごとに異なる「レガシー」の意味
「レガシー」は、使用される分野によって意味が変わります。IT業界・オリンピック・政治など、レガシーという言葉が使われることが多い分野での意味を確認しましょう。

(c)AdobeStock
IT業界での「レガシー」
IT業界では、「レガシーシステム」という言葉がよく使われます。辞書を見てみると、レガシーシステムは以下のような意味を持つ言葉です。
レガシー‐システム(legacy system)
時代遅れになってしまった古いコンピューターシステムのこと。
「デジタル大辞泉」(小学館)より引用
IT業界では、旧タイプのコンピューターシステムや、社内で使われ続けている時代遅れのシステムを指すときに、「レガシー」を使うケースが多くなっています。
オリンピックでの「レガシー」
オリンピックでも、「レガシー」はよく使われています。オリンピックの開催に伴って生まれる利益が、オリンピック・レガシーです。
開催に伴う利益は、オリンピック期間中に生まれるとは限りません。開催が決まってから、終了後までの長い期間、オリンピックの「レガシー」は発生し続けます。
経済的な利益以外にも、都市環境が改善し、スポーツ・教育プログラムが活性化するなど、さまざまな「遺産」が生まれるのです。
政治分野での「レガシー」
政治分野のニュースでも、「レガシー」という言葉が使われます。主に、政治家の業績を指すケースが一般的です。
業績といっても、政治家の経歴全体ではなく「後世に残るような遺産」としての意味が込められています。
政治家が残す業績は、素晴らしいもの、悪いものなどさまざまです。悪い業績を指す場合には「負のレガシー」のような使い方もされます。
「レガシー」の使い方と例文

(c)AdobeStock
実際に「レガシー」という言葉を使う場合、どのように使うのでしょうか?良い使い方と悪い使い方に分けて、基本的な使い方と例文を紹介します。
良い意味で使われるケース
レガシーは「良い遺産」「既存のもの」という意味で使われることの多い言葉です。良い意味で使う場合の例文をいくつか見てみましょう。
・〇〇氏のレガシーは、現代にも良い影響を与えている
・飛行機に乗るときは、多くのサービスが提供されているレガシーキャリアを選ぶようにしている
「〇〇氏のレガシー」のような使い方をする場合、文脈によって良い意味か悪い意味かが変化します。文の前後に良いことが書かれていれば、良い遺産という意味で使われていると判断できるでしょう。
航空会社の「レガシーキャリア」は、コストを削減したLCCと比較したときの表現です。古くからある既存の航空会社は「フルサービスキャリア」とも呼ばれています。サービス提供の多さをメリットに感じる場合には、「レガシーキャリア」が良い意味で使われます。
悪い意味で使われるケース
レガシーは、ネガティブな表現にも使われる用語です。悪い意味で使う場合の例文をいくつか見てみましょう。
- 旧システムの維持によって、レガシーコストが増大している
- わが社では、いまだにレガシーインターフェースを使用している
「レガシーコスト」は、過去から引き継がれた負の遺産を指します。主に年功序列に基づいた賃金支払いや企業年金の支払いを指すことが多いですが、そのコストが企業の負担になっているときに使う言葉です。
「レガシーインターフェース」は、時代遅れのインターフェースを指します。単体で「悪い意味」とは言い切れませんが、使用によって弊害が出ているときはネガティブな意味が含まれる言葉です。
レガシーの言い換え例

(c)AdobeStock
「レガシー」は、他の言葉にも言い換えられます。言い換えができるケースと、主な例を見ていきましょう。
功績
レガシーは、「功績」にも置き換えられます。主に、良い意味で使われるケースが該当するでしょう。
例えば、「レガシーを残す」「レガシーをたたえる」といった使い方の場合、「功績を残す」「功績をたたえる」のように言い換えられます。
主に政治的分野における業績や、個人の偉業を指す場合には、「功績」と言い換えても自然です。
伝統
レガシーは、「伝統」に言い換えられるケースもあります。
例えば「レガシーを受け継いだ」「地域の文化レガシーを形成する」のような例は、「伝統」に近い使い方です。
上記のケースでは、「伝統を受け継いだ」「地域の伝統文化を継承していく」などに言い換えられます。
レガシーにはさまざまな意味がある
「レガシー」は、遺産という意味を持つ言葉です。日本では分野によって使い方が異なり、IT業界・オリンピック・政治などさまざまな場所で使われています。
良い意味でも悪い意味でも使われますが、前後の文脈や用語の意味から判断が可能です。レガシーの意味を理解しておくと、ニュースの読解やビジネス会話でも役立ちます。
メイン・アイキャッチ画像/(c)AdobeStock
あわせて読みたい