ブルーオーシャンとは?
利益を最大化するための戦略として、多くの企業が「ブルーオーシャン」に注目しています。ブルーオーシャンの意味や、戦略を実施する方法について紹介します。
競争相手のいない未開拓の市場のこと
ブルーオーシャンとは、競争相手のいない新しい市場を指します。そしてブルーオーシャン戦略とは、その未開拓な市場を切り開いて独自の事業を展開することです。まるで広大な青い海のように、開拓されていない領域へ船出するイメージといったところでしょうか。
ブルー‐オーシャン【blue ocean】
経営学の用語で、競争のない未開拓市場のこと。新しい商品やサービスを開発・投入することで創出される競合相手のいない市場。→レッドオーシャン
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
たとえば、スマートフォンの登場は従来の携帯電話市場を大きく変革し、新たな市場を生み出しました。ブルーオーシャン戦略は、高い収益性と持続的な成長を目指す企業にとって、魅力的な選択肢のひとつとなっています。
ブルーオーシャン戦略の実施方法とフレームワーク
ブルーオーシャン戦略の実施には、競合相手のリサーチが重要です。未開拓市場とはいえ、既に参入した競合他社がいることも多いため、競合サービスとの差別化を図ることが戦略における大きなポイントといえます。
その上で使われる効果的なフレームワークの代表例を2つ紹介します。
「戦略キャンバス」は自社と競合サービスを比較し、新たな価値提供の可能性を探るツールです。たとえば航空業界なら、既存の航空会社と鉄道会社の提供価値を図示し、顧客にとって重要だが満たされていないニーズを見つけ出します。
「アクション・マトリックス」は「取り除く」「減らす」「増やす」「付け加える」という4つの要素をそれぞれ検討し、サービスの差別化やコスト軽減を図ります。 LCC(格安航空会社)を例とするなら、機内サービスを簡素化して座席の快適性を減らす一方で、予約の利便性を高め、小型機材による便数を増やすといった戦略が考えられます。
ブルーオーシャンのメリット
事業成功の秘訣は顧客ニーズを的確に捉え、効果的なマーケティングを展開することにあります。ブルーオーシャン戦略のメリットについて詳しく解説します。
低コストで実現できる
ブルーオーシャン戦略の大きな魅力のひとつは、低コストで実現できる点です。また、競合が少ない未開拓市場のため、価格競争に巻き込まれにくいといえます。
低価格・均一料金の理容チェーンを例に挙げてみましょう。従来の理容店ではカットする髪型や店舗によって料金に差があり、たいてい数千円前後で提供されていました。しかしその市場に、顔そりやシャンプーの工程を省くことで、低価格での利用を可能にした新しいタイプの店舗が登場したのです。
このように独自の価値を提供できたなら、価格競争を回避し、低コストで高い利益を生み出すことが可能となります。ただし、成功すれば模倣企業が現れる可能性もあるため、継続的なイノベーションが重要です。
利益が伸ばしやすい
ブルーオーシャン戦略のもうひとつの大きなメリットは、利益を伸ばしやすい点です。競合が少ない未開拓市場では、高い利益率を維持しやすいのです。
もういちど、スマートフォンが登場した当初を思い出してみてください。従来の携帯電話とは全く異なる使い方を提案し、新しい市場を創造しましたよね。その結果、高い利益率を実現できたのです。
また、ブルーオーシャン市場では、顧客のニーズに合わせた独自の価値提供が可能です。これによって顧客満足度が高まり、リピート率の向上や口コミによる新規顧客の獲得へとつながります。さらに、競合が少ないことから、マーケティングコストを抑えられる点も見逃せません。新規顧客の獲得にかかるコストが低く抑えられるため、利益率の向上に貢献します。
他社との差別化を図れる
ほかにもブルーオーシャン戦略の大きな魅力として、他社との差別化を図れる点があります。既存市場とは異なる新しい価値を提供することで、競合他社との競争を避け、独自のポジションを確立できるのです。
たとえば不動産業界では、賃貸物件の入居者向けに家事代行サービスを提供したり、アパート内で特定の趣味に特化したコミュニティをつくるなど、「住まい以外の付加価値」を用意して差別化を図る事例があります。
また、サービス業においても、さまざまなツールを有効利用すれば他社との差別化が可能です。シナリオメールによる徹底的な追客や成約後のアフターフォローによる紹介獲得など、きめ細やかなサービスの提供によって顧客満足度を高めることができます。
ブルーオーシャンのデメリット
新市場の開拓には独自の課題もあり、ブルーオーシャン戦略は〝万能〟というわけではありません。メリットの次は、この戦略のデメリットを洗い出していきます。
市場を見つけるのが難しい
ブルーオーシャン市場を見つけることは、宝の地図なしで海賊の財宝を探すようなものです。既存市場の延長線上ではなく、まったく新しい価値観を生み出す斬新なアイデアやイノベーションが求められるため、非常に困難を伴います。
たとえばスマートフォンが登場する前、携帯電話とパソコンの機能を融合させた新しい市場がこれほどまでに拡大することを予測できたでしょうか? このような革新的な製品やサービスを生み出すには、顧客の潜在的なニーズを掘り起こす洞察力が不可欠です。
ブルーオーシャン市場は競合が少ない分、顧客がその存在や価値を認識していない場合も多くあります。そのため、需要喚起に多大な時間やコストを要する可能性があるのです。
他社に模倣される恐れがある
ブルーオーシャン市場も永遠に続くわけではありません。成功すれば必ず競合他社が参入してくるため、常に新しい価値を創造し続ける必要があります。イノベーションを怠れば、あっという間に後述する〝レッドオーシャン〟化してしまうかもしれません。
この課題に対処するには、継続的なイノベーションが鍵となります。顧客ロイヤリティを高める仕組みづくりや、参入障壁の高い分野への展開が重要です。
また、独自技術の開発や人材の専門化を進めて、模倣されにくい競争優位性を構築することも有効といえます。ブルーオーシャン戦略は魅力的ですが、その優位性を長く維持するには、常に先を見据えた戦略が求められるのです。
製品やサービスが定着しない
ブルーオーシャン戦略で新たな市場を開拓しても、製品やサービスが顧客に受け入れられず、定着しないリスクがあります。
たとえば、革新的な電子書籍リーダーを開発しても、読書愛好家が紙の本の質感や香りを重視する場合、市場に浸透しない可能性があります。顧客のニーズを的確に捉えられなかったり、効果的なマーケティング戦略が不足したりすると、せっかくの新しい価値提案も認知されずに終わってしまうのです。
この課題を克服するには、顧客の潜在的なニーズを掘り起こし、サービスの価値を丁寧に伝えることが重要です。また、顧客フィードバックを積極的に取り入れて改善を重ねることでも、市場に受け入れられる可能性が高まります。
レッドオーシャンとの違い
ブルーオーシャンと対になる言葉として「レッドオーシャン」があります。レッドオーシャンの概要と、メリット・デメリットを解説します。ブルーオーシャンとの違いを理解しましょう。
既存の事業領域のこと
レッドオーシャンとは、既存の市場や事業領域を指す言葉です。多くの企業が競争を繰り広げ、血で海が赤く染まるような激しい戦いが繰り広げられる様子から、この名前がつけられました。
一例ですが、昨今のスマートフォン市場では、多くのブランドが激しい競争を繰り広げていますよね。このような状況こそ、まさにレッドオーシャンの典型であるといえます。
レッドオーシャンの特徴は市場が成熟し、顧客ニーズが明確であることです。そのため参入障壁は低く、多くの企業が参入しやすい反面、競争も激化しやすいのです。
このような環境下では、企業は常に差別化を図り、コスト削減に努めなければなりません。しかし、それでも利益率の低下は避けられないことが多いのです。
レッド‐オーシャン(red ocean)
経営学の用語で、血で血を洗うような激しい価格競争が行われている既存市場のこと。→ブルーオーシャン
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
メリット・デメリット
レッドオーシャンのメリットは、前述の特徴と同じく〝市場が既に確立されているため、顧客ニーズが明確であること〟です。
製品やサービスの方向性を定めやすく、マーケティング戦略の立案も難しくありません。また、競争の激しさゆえ、企業は常に革新を求められます。これが結果として、製品やサービス品質向上の可能性へとつながるのです。
一方、デメリットとしては〝価格競争に陥りやすいこと〟。多数競合他社が存在するため、価格を下げることによって顧客を獲得しようとする傾向があります。
さらに、市場が飽和状態にあるため、新規参入や事業拡大が困難になりやすいというデメリットもあります。既存の大手企業が市場を占有している場合、新興企業が足場を築くのは容易ではありません。
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