「自分の目指す方向性と異なる」「もっと自分らしく働ける会社に出会った」…など、内定式の後に辞退する学生は、現在、少なくありません。企業側としては、「いい学生に出会えた！」と、喜びもつかの間、採用の苦労が水の泡になってしまうこともあるようです。
そこで、本記事では、内定式の後に学生が辞退する理由や対応法について、解説していきます。
内定式後の辞退が増加する背景とは？
内定式の後に学生が辞退することが珍しくなくなってきた昨今、なぜ、このような事態が起こるようになったのでしょうか？ その背景にはいくつかの要因があるようです。優秀な学生をぜひ採用したいという焦る気持ちの管理職の方も多くいらっしゃるでしょう。新卒採用の一大イベントともいえる内定式後の動向が、なぜ変わりつつあるのでしょうか？ 探っていきましょう。
企業側の期待と内定者の現実
採用担当者は、イベントやインターンシップで出会った学生との関係を維持し、学生の夢や働き方、給与や福利厚生、勤務地といった条件面を理解してもらうため、連絡や面談、会社見学を通じて接点を保つことが重要です。
優秀な学生には他社からもアプローチがあります。内定者は複数の企業からのアプローチを受けることで、気持ちが揺れ動くことも多いでしょう。また、雰囲気や条件面ばかりに気を取られ、肝心な企業研究が不足していた学生や、突然の家庭の事情が発生する学生なども、内定式の後に辞退することが見受けられます。
まずは、内定者の気持ちを理解し、現状や社会に出て働くことへの思いや不安を把握することが不可欠です。疑問や不安を丁寧に解消することで、内定者との信頼関係を築き、辞退を防ぐことが可能になります。
内定辞退の増加に伴う社会的な影響
内定者の辞退が増えることで、社会にはどのような影響があるのでしょうか？
まず考えられるのは、新卒者の精神的未熟さや就職の不安定化です。一度、入社して働こうとした会社を辞退することで、働く意義やモチベーションが低下してしまい、社会人としての自覚の欠落につながってしまうことがあるでしょう。また、辞めてしまうことへの抵抗感が薄れてしまい、仕事の未定着や未習熟、若年層の失業率の上昇に影響を及ぼすといえます。
また、内定者が辞退することで、企業は追加の採用活動をする必要が生じ、時間やコストがかかります。結果、採用活動が非効率になるだけでなく、長期化が懸念され、いつまでも人材確保をし続けなければならず、企業の成長にも大きな影を落としかねません。
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内定式後の辞退は、どのように対応すべきか？
内定式後、学生から辞退の申し出があった場合の円滑な対処法を紹介します。トラブルを避け、双方が納得のいく結果を得るためのステップを見ていきましょう。
内定者にとってのリスクとメリット
新卒者にとって内定を辞退することで抱えるリスクは、精神的負担が挙げられます。「内定を出してもらったのに断るのが申し訳ない」という後ろめたさを感じてしまう人も多いでしょう。また、これまでお世話になった採用担当者を裏切ってしまったという後悔の念が生じる可能性も高いです。
一方で、入社する前に、早めに決断をしたことで、迷いなく自分の道を進んでいけるという利点もあります。「もしかして、この会社じゃないかもしれない…」という不安を抱えたまま、社会人を始めるより、自分の決断を前向きにとらえ、自信を持って働けるのではないでしょうか。
企業側がとるべき対応策とは？
内定辞退が発生した場合、採用担当者から、内定辞退者の気持ちに配慮したヒアリングを行うことが大切です。言いにくいことを伝えてくれた感謝を示すとともに、なぜ内定辞退に至ったかを聞きます。中にはまだ迷っている学生も少なくありません。こうしたとき、若手社員よりも管理職と話をした方が、働いた際に相談できる環境がイメージでき、思いとどまる例もあるようです。
また、内定を辞退したとはいえ、今後、中途採用で縁がつながることも考えられます。ですから、あからさまに不快感を示す強い態度は避けた方がいいでしょう。
内定辞退の予防策としては、まず、定期的なフォローアップがおすすめです。内定者向けの懇親会や個別面談を実施し、同期や会社との距離を縮めましょう。また、入社後、不安なく働けるイメージを与えることも大切です。企業の現状や仕事内容、働く環境について正確な情報を提供しましょう。
内定者に対して、入社への意欲や懸念点に関するアンケートも効果があるといえます。少し問題がありそうな学生には、社内の先輩社員がメンターとなり、サポートすることで、会社に対する信頼感を醸成するような工夫をしましょう。
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内定式後の辞退に関する、よくある質問
ここでは、内定式後に学生が辞退した際の法的な問題点や、実際の対応方法について解説していきます。
内定式後の辞退は法的に問題ないのか？
「職業選択の自由」という憲法上の権利があるため、内定式後に辞退することは可能です。内定を承諾した後に辞退を申し出ることも、法律上問題ありません。
労働契約の解約については、民法上、いつでも解約できることになっており、会社に対して解約の意思を伝えてから2週間後に契約が解消されると定められています。一方で、この期間に内定式が行われると、備品や交通費、研修費用の損害が発生するリスクがあります。
内定辞退の申し出への対応は？
昨今はメールやLINEなど、直接電話で伝えない学生も増加しています。連絡を受けたら、まずは、正直に伝えてくれたことに感謝し、可能であれば、電話で直接話せる機会がないか、聞いてみます。もし、可能性が低い場合は、無理に電話で話すことは避けた方がいいでしょう。
話ができたら、これまで選考に関わってくれたお礼を伝え、本人の選択を尊重する言葉をかけてあげます。今後も、困りごとがあればいつでもサポートすることを伝えることで、転職などの際に相談してくれる可能性もあるでしょう。また、自分は辞退したけれど、後輩や知人に紹介するといったケースも少なくありません。
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最後に
今回は、内定式後の辞退について解説しました。学生に辞退されても、また、今後転職で縁があるかもしれない、と前向きに接する心構えが大切です。若年層の転職活動が活発になっている昨今、1度の採用だけで終わるとは限りません。企業も学生も対等な立場で、選択し合える関係性作りがカギとなりそうです。
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執筆
櫻井宏美（さくらい・ひろみ）
2017年国家資格キャリアコンサルタント取得。 20年以上、人事関連の業務に関わる。現在はキャリアチェンジを図り、三重県尾鷲市へ地域おこし協力隊として、定住移住促進・関係人口づくりに関わる。
ライター所属：京都メディアライン
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