「内示」は、ビジネスの現場や人事の決定過程において欠かせない概念です。管理職として内示を受けた際にどのように対応すべきか、また内示をどのように伝えるべきかは、信頼関係に大きく影響します。本記事では、内示の基本的な定義から、具体的な事例や対応のコツを深掘りし、リーダーとしての実務に役立つ情報を提供します。
「内示」とは? 基礎知識と重要性
まずは、「内示」の基本的な役割を確認していきましょう。

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内示の定義と目的
まずは、「内示」の定義を辞書で確認しましょう。
ない‐じ【内示】
[名](スル)《「ないし」とも》非公式に通知すること。「―を受ける」「昇進を―する」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
内示は、正式決定や公式発表に先立ち、関係者に対して計画や方針を伝えることを指します。辞令を出す前に、まずは口頭で本人に通知することで、異動などを円滑にする役割がありますよ。
内示と発令の違い
「内示」と「発令」は、どちらも人事異動や昇進・配置転換の際に用いられる言葉ですが、それぞれの役割は異なります。
内示は、正式な辞令が発令される前に、本人に対して非公式に伝えられるものです。通常、上司や人事担当者から口頭で伝えられます。内示により、本人が状況を整理し、今後の対応を考える時間を持つことができます。
一方、発令は会社が正式に決定した人事異動や昇進を公式に通知する行為を指します。発令の方法は辞令の交付や公示など、企業ごとに異なりますが、発令された時点でその内容は確定し、対象者は新たな職務に従う義務が生じます。
内示があることで、当事者は異動や昇進の準備を進めやすくなり、スムーズな発令につながるでしょう。ただし、内示はあくまで事前の調整であり、最終決定は発令によって確定するため、内示の段階で確定事項と考えないことが重要です。
内示を受けた際のポイントと注意点
内示を受けた際の対応は、個人のキャリアだけでなく、組織の円滑な運営にも影響を及ぼします。管理職としては、適切な対応とコミュニケーションを通じて、部下や関係者へのいい手本を示すことが求められるでしょう。
内示を受けたときの初期対応
内示を受けた際には、まず内容を正確に理解し、疑問点や不明点を確認することが肝要です。特に、異動や昇進に関わる場合は、新しい役割の期待値や課題を明確にすることで、準備の精度が高まるでしょう。
また、内示を受けた場面では、上司に対して前向きな姿勢を示すことで、信頼感を高めることができます。
内示の口外ルールと注意点
内示を口外することは、組織内外の混乱や不信感を招くリスクがあります。例えば、転勤の内示が社外に漏れると、クライアントや取引先との信頼関係に悪影響を及ぼす可能性がありますよ。家族に伝える場合も、正式発表後の計画を話し合うようにし、内示の段階では慎重な姿勢を保つべきです。
内示を断る場合の対処法
内示を断る際には、個人的な感情ではなく、具体的な理由と論理的な説明が求められます。特に転勤や昇進の内示を断る場合は、組織の意向と自身の事情のバランスを取ることが重要です。例えば、家庭の事情や健康上の理由で対応が難しい場合には、以下のステップを意識するといいでしょう。
1.事実を整理する
異動や昇進を受け入れられない理由を客観的に分析する。
2.具体的な背景を伝える
単に「難しい」と伝えるのではなく、「◯◯のため現時点では難しい」と明確に説明する。
3.代替案を提示する
例えば、「現職でのさらなる貢献を考えている」「異動時期の調整が可能か」など、会社側にもメリットのある提案を行う。
こうした対応を取ることで、企業との関係を維持しながら、納得感のある形で話を進めることができるでしょう。

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人事異動に関する内示のタイミングと対応方法
人事異動に関する内示は、業務の流れや個人のキャリアに大きな影響を及ぼすものです。ここでは、人事異動に関する内示のタイミングや対応方法について、具体的に解説します。
人事異動の内示が出るタイミング
人事異動の内示は、通常、辞令発表の1〜2週間前に行われるのが一般的です。この期間は、異動に伴う引継ぎや新しい役割への準備を進めるための猶予期間とされています。例えば、大規模な異動では、内示のタイミングがさらに前倒しされることもあるでしょう。管理職としては、この期間中に業務が滞らないように引継ぎ計画を立てることが求められます。

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異動の内示を受けた場合の心構え
内示を受けた際には、まず冷静に情報を受け止め、前向きに対応することが重要です。管理職としては、内示を単なる通知と捉えるのではなく、新たな挑戦の機会と捉える視点が必要です。例えば、異動先の業務内容や組織文化について事前に調査し、新しい役割に備える行動を取ることで、スムーズな移行が可能になります。
異動の内示を断る際の注意点
異動の内示を断る場合は、一般的な内示を断るケースよりも慎重な対応が求められます。なぜなら、異動は組織全体の人員配置に関わるため、個人的な事情で拒否すると「協調性に欠ける」と判断されるリスクがあるためです。
ですから、異動を断る際には、「行きたくない」「納得できない」といった主観的な意見ではなく、合理的な理由を示しましょう。単に拒否するのではなく、「どのようにすれば円満な解決策が見つけられるか」という視点で対応することが重要です。
最後に
内示は人事の現場で重要な役割を果たしますが、対応方法を誤ると大きなトラブルにつながることがあります。管理職としては、内示を受ける際だけでなく、伝える際にも慎重かつ的確な対応が求められるでしょう。
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