アグレッシブの意味は2つある?
日本で使われる言葉「アグレッシブ」には、ポジティブな意味とネガティブな意味の両方が存在します。それぞれのニュアンスを知らないと、相手に誤解を与えてしまう可能性も。ここでは「アグレッシブ」の意味を解説します。

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カタカナ言葉の「アグレッシブ」
「アグレッシブ」は、「積極的」「前向きな」などの意味を持つ言葉です。しかし同時に、「攻撃的」「強引な」というネガティブな意味でも使われるため、注意が必要です。
アグレッシブ(aggressive)
[形動]
1 言動の積極的なさま。精力的なさま。「アグレッシブな生き方」
2 攻撃的なさま。「アグレッシブにシュートを狙う」
引用:小学館 デジタル大辞泉
特にビジネスの場面では、「アグレッシブ」という表現を使う際には慎重になる必要があるといえます。相手との関係性・立場・状況によって、受け取り方が大きく異なってくるからです。
たとえば、上司から部下への評価で「アグレッシブさが足りない」と指摘する場合は、積極性を求める意図で使われていると考えられます。一方で「アグレッシブすぎる」という指摘は、強引さや配慮不足を改善してほしいという意図を含むかもしれません。
英語表記の「aggressive」
英語の「aggressive」は「攻撃的な」「積極的な」といった意味を持つ形容詞です。
英語圏では「攻撃的な」「侵略的な」というネガティブな意味合いで使用されることが多く、「積極的な」という意味を表す際には「proactive」が好まれる傾向がみられます。たとえば「He is aggressive.」という表現は、「彼は攻撃的だ」というマイナスのニュアンスで受け取られる可能性が高いともいえるのです。
ただし、ビジネスの文脈では「aggressive marketing strategy(積極的なマーケティング戦略)」のように、前向きな意味で使われることもあります。
アグレッシブの使い方もチェック
「アグレッシブ」という言葉の基本的な意味を理解できたら、例文を通して具体的な使い方を確認していきましょう。言葉の意味と一緒に例文をチェックすれば、その言葉に対する理解を深められるはずです。
ポジティブな意味で使う場合
「アグレッシブ」は、目標に向かって積極的に行動を起こし、成果を追求する姿勢を表現する際に適切といえる言葉です。
たとえば、新規事業に挑戦するスタートアップ企業の経営者が「当社はアグレッシブな事業展開を進めています」と語る場合、積極的な成長戦略のアピールが可能でしょう。
スポーツの世界でも「彼のアグレッシブなプレーはとても魅力的だ」などと表現する際は、チームの勝利に貢献する前向きな姿勢を評価しています。「アグレッシブ」は、果敢にチャレンジする選手の姿勢を賛美する表現の一つです。
投資分野において「アグレッシブな投資戦略を採用しています」といえば、高いリターンを目指して新しい投資機会を積極的に探る姿勢について表現が可能といえます。
ネガティブな意味で使う場合
「アグレッシブ」という言葉をネガティブに使用する場合、他者への配慮に欠けた強引な行動や、過度に攻撃的な態度を形容する際に使われる傾向にあります。
たとえば「あなたの営業手法はアグレッシブすぎる」という場合、顧客の意向を無視した押しつけがましい売り込みを懸念していることを表現できるでしょう。また「アグレッシブな性格が目に余る」と表現すれば、相手の立場を考えない強引さや、自己主張が強すぎる傾向を示せるといえます。
職場でも「アグレッシブな態度」は、周囲との協調性を欠いた言動や、感情的な反応を指すことがあります。建設的なコミュニケーションを妨げる要因として捉えられ、改善が必要な課題として認識されやすいでしょう。
アグレッシブと似た意味を持つ言葉
「アグレッシブ」という言葉には多くの類似表現が存在します。ポジティブなことを表現したいのに「アグレッシブを使うとネガティブに捉えられるかもしれない」と思うときは、積極的に言い換え表現を使うのがおすすめです。アグレッシブの類義語や言い換え表現を紹介します。

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アクティブ
「アクティブ」とは「活動的」「能動的」を意味する英語「active」を語源とする言葉です。アグレッシブと比べると、より穏やかでポジティブな印象を与えられるでしょう。
たとえば「アクティブな営業スタイル」といえば、自ら進んで顧客との接点を作り、積極的に商談を進める姿勢を表します。「アクティブに活動する」という場合は、自発的に行動を起こし、前向きに取り組む様子が表現可能です。
趣味の分野でも「アクティブに休日を過ごす」のように、エネルギッシュに活動する様子を表わすことができます。また、教育業界では「アクティブラーニング」のように、主体的・能動的な学習方法を指す際にも使用されます。
意欲的
「意欲的」とは、何かに取り組む際の前向きな姿勢や熱心さのこと。アグレッシブが持つ積極性の要素を、より穏やかに表現できる言葉です。
たとえば「意欲的に仕事に取り組む」「意欲的な姿勢で学習する」など、目標に向かって自発的に努力する様子を表わします。
ビジネスシーンでは、「意欲的な提案」や「意欲的な営業活動」などと使われることが多いです。また芸術分野でも、挑戦的で革新的な取り組みを評価する際に「意欲的な作品」という表現を用いることがあります。
負けず嫌い
「負けず嫌い」は、競争や目標に対して強い執着を持ち、諦めない気持ちを持つ性格や気質のことです。この言葉には、何事にも全力で取り組み、決して妥協しない姿勢が込められているといえるでしょう。
ビジネスシーンでは、「彼の負けず嫌いな性格を見習うべきだ」というように、向上心や競争力を持つ人物を表現する際に使われる傾向にあります。目標達成への強い意志や、困難に直面しても諦めない精神力を評価する文脈で登場することの多い言葉です。
ただし、過度な負けず嫌いは、時として協調性を損なう原因となることも。他者との比較にこだわりすぎたり、勝敗にとらわれすぎたりすることで、健全な人間関係を築けなくなる可能性もあるため、必ずしもポジティブな意味合いではないという点に注意が必要です。
アグレッシブと反対の意味を持つ言葉
「アグレッシブ」という言葉を深く掘り下げたいなら、この言葉と反対の意味を持つ言葉を一緒に学んでおくのが有効でしょう。対照的な表現を知ることで、言葉の輪郭がより明確になるはずです。ここでは、アグレッシブの対義語を紹介します。

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パッシブ
アグレッシブの対義語として知られる「パッシブ」は、「受動的」「消極的」という意味を持つ言葉です。英語の「passive」が語源で、主体的に行動を起こすのではなく、外部からの働きかけを受けて反応する傾向を指します。
パッシブは、投資の世界では「パッシブ運用」という言い回しでよく使われています。パッシブ運用とは、日経平均株価やTOPIXなどの市場指標に連動した運用方法で、投資家が投資戦略の立案や投資対象の選定に関与しない投資スタイルのことです。
ビジネスの場面では、「彼はパッシブな性格なので指示されたことしかやろうとしない」というように、パッシブな態度は時として問題視されがちな面も。自分から提案や行動を起こさず、指示待ちの姿勢に終始することは、チームの生産性を下げる要因にもなり得ます。
慎重
「慎重」という言葉は、物事を「思慮深く」「注意深く」扱う様子や態度を表す表現です。 アグレッシブな姿勢とは対照的に、急がず丁寧に状況を見極めようとする特性を指します。
たとえば、「慎重に検討する」「慎重な判断」といった使い方は、ビジネスシーンでよく見られる表現です。これらは、リスクを最小限に抑えながら、確実な成果を目指す姿勢を示しています。
一方で「慎重すぎる」は、「優柔不断」や「決断力の欠如」を暗に示すときに用いられる表現ともいえるでしょう。
ノンアサーティブ
「ノンアサーティブ」は、自己主張を控えめにする傾向を指す心理学用語です。アグレッシブとは対極に位置する特徴を持った言葉として知られます。「彼はノンアサーティブタイプだ」という具合で使用するのがスタンダードです。
ノンアサーティブな人は、自分の意見や感情を率直に表現することを避け、相手の意見を優先する傾向があるとされています。ノンアサーティブなコミュニケーションスタイルでは、対立を避けることを重視するため、自分の権利や要望を主張することが難しいのかもしれません。
過度にノンアサーティブな態度はストレスの蓄積や自尊心の低下を招く可能性もあるものの、職場では必要な提案ができず、業務効率の低下につながることもあると考えられています。
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