アクティブラーニングとは?
アクティブラーニングとは能動的に取り組む学習方法のことをいいます。従来のように教師から児童、生徒、学生に向けて一方通行で指導する授業方式ではなく、彼らが積極的に参加し、主体的に学ぶ学習法の総称です。
文部科学省の用語集には次のように記されています。
教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。
元々は、2012年の中央教育審議会において、「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」の中に登場した言葉で、はじめは大学教育の在り方について使われていました。
参考:文部科学省 用語集
アクティブラーニングが求められる背景
背景には、昨今のグローバル化や情報化の進展、少子高齢化などの社会の急激な変化があげられます。また、雇用環境や産業構造の変化など、個人にとっても社会にとっても、将来の予測が困難な時代が到来しつつあります。
かつての大量生産の時代では、与えられたことを一定の指示のもと、いかに効率よくできるか、ということが求められてきました。
しかし、AIやロボットの発展によって、今までのように「皆と同じ」という考えや、知識偏重の詰め込み教育では今までにない新しい発想は生まれず、自国の発展は望めない、という危機感が生じ始めたのです。多様化する社会に対応できる人材が求められるようになりました。
こうした背景から、2014年の中央教育審議会にて、初等中等教育の分野にもアクティブラーニングが登場しました。現在は「主体的・対話的で深い学び」という表現になり、授業改革が求められています。
主体的・対話的で深い学びとは?
言い換えると「自ら好奇心を持って人と関わることで考えを深め、問題解決能力を育む学び」といえるでしょう。具体的にはディスカッションやディベートなどの学習を取り入れ、子供たちが自分で考え、問題を発見し、解決に導くプロセスを踏みます。その中で自分の意見を表現しながらも、他者の意見を尊重し、協同で解決する力を育みます。
アクティブラーニングのメリット
アクティブラーニングにはどんなメリットがあるのか、それぞれ見ていきます。
1:主体的に学ぶ力
アクティブラーニングは、今までのような一方通行の知識詰込み型の授業ではなく、自分で考えて決めなくては成り立たないように工夫されています。自分が中心となって進めていくため、自分で考える力が身についていきます。
2:他者と協力する力
今までの授業はひとりで机に向き合い、他者との関わりは薄く、むしろ授業中に話すことは禁じられていました。一方アクティブラーニングは、グループワークやディスカッションを行うことが多いので、他者と関わる必要があります。メンバー内での役割分担やグループとしての方向性を決めていかなくてはなりません。その中で、自然と協調性も身についていきます。
3:課題を解決する力
ひとりで与えられた課題を解決するには、自分の考えだけで偏りが出てしまいがちです。グループで話し合うことで、自分とは違う考えや価値観に気づくことができます。それにより、多角的な視野をもって、物事をとらえられるようになるので、課題を解決する力が身につきます。
アクティブラーニングのデメリット
いいことばかりに見えるアクティブラーニングにもデメリットがあります。
1:確実な評価基準がない
今までのような授業ではペーパーテストで到達度を測ることができましたが、アクティブラーニングの場合、何を基準に評価すればよいのかが不透明です。ルーブリックという評価指標を導入している学校もありますが、共通の基準があるわけでなく、確実な評価がつけられません。受験では学校の成績が参考にされることもあるので、現場では取り入れにくいのです。
2:受験に不向きである
現在の入学試験の方法はペーパーテストが一般的です。いくらアクティブラーニングが実社会で役に立つといっても、高校受験や大学受験という壁がある以上、知識偏重にならざるを得ません。
しかし、近年の大学入試共通テストでは知識だけでなく、表現力や思考力、判断力が問われます。将来的にはアクティブラーニングで身につく力が大学受験にも活かされるときがくるかもしれません。
3:グループ内で適切な話し合いができない
アクティブラーニングでのグループでの話し合いは、協調性が身についたり、客観的な視点が得られたりするというメリットがある一方で、ただのおしゃべりの時間になってしまうという危険性があります。人前で話すことが苦手な子はいつまで経っても発言の機会を奪われたり、また、ひとりが場を仕切ってしまったりして、話し合いが成立しないということも考えられます。
最後に
アクティブラーニングは、すべての授業に取り入れなくてはいけないものではありません。また、今までのような知識伝達の講義授業を否定するものでもありません。これらをどうバランスをとっていくのか、アクティブラーニングという言葉だけが独り歩きして形式だけのものにならないよう、現場の先生たちの工夫が求められます。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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