傘の素材ごとに適した撥水ケア方法を選びましょう。
Summary
- 傘の撥水力は、ドライヤーやアイロンで簡単に復活可能。
- ただし、素材別(布・ビニール・ブランド傘)に対処法は異なる。
- 乾燥・収納方法まで含めた習慣が、傘を長持ちさせる鍵。
雨の日にお気に入りの傘をさしたけれども、水がじわっと染み込んできてしまう…。そんな経験はありませんか? 新品の頃は気持ちよく水を弾いていた傘も、使うたびに撥水力は弱まってしまいます。買い替えるのはもったいないけれど、スプレーを買いに行くのも手間。そんなとき、家にあるもので手軽に撥水力を復活させる方法があるとしたら知りたいですよね。
本記事では、忙しい毎日にうれしい、簡単で時短な傘のケア方法を創業80余年の歴史を持つ京都発祥の染み抜き・お直し専門店である「きものトータルクリニック吉本」さんにお聞きしました。早速、紹介していきましょう。
傘の撥水がよみがえる! 家庭でできる手軽な復活術
傘の水はじきが弱くなると、使い勝手も気分も下がりがちです。スプレーを買わなくても、身近な道具で簡単に復活させる方法があります。忙しい毎日でもすぐに実践できる工夫を紹介します。

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ドライヤーで撥水力が戻る? 意外と知られていない裏ワザ
傘の撥水効果は、表面に加工された樹脂系のコーティングによって保たれています。しかし、使い続けるうちに繊維が潰れたり、加工が均一でなくなったりして、水を弾く力が落ちてしまいます。
ドライヤーを使う方法は、こうした撥水成分を熱で再活性化させる手法です。やり方は簡単。傘を開いた状態で、ドライヤーの温風を20〜30センチ離れた位置から当てていきます。傘全体に風を行き渡らせるよう、回転させながら丁寧に作業すると効果が均一になります。とくに縫い目や骨の接合部分など、撥水力が落ちやすい場所は入念に温めておくと安心です。
作業時間は5〜10分程度。ドライヤーを使うだけで手軽に試せるため、忙しい朝でも対応できます。仕上がりは肉眼ではわかりづらいこともありますが、水を垂らしてみて水玉が転がれば成功の目安になります。
アイロンでも効果あり? 生地に優しい温度と押さえ方のコツ
布製の傘には、アイロンの熱を使って撥水性を回復させる方法も効果的です。撥水加工された傘は、熱を加えることでコーティングが繊維になじみ、再び水をはじきやすくなります。とくに綿やポリエステル系の生地で効果が出やすい傾向があります。
手順としては、まず傘の表面を柔らかい布などで軽く拭き取り、ほこりや皮脂を落としておきます。次にアイロンを低温(100〜120℃前後)に設定し、あて布を重ねてドライモード(スチームなし)で軽く押さえるようにあてていきます。時間をかけすぎると生地を傷めるため、5秒以内を目安に小刻みに移動させてください。
縫い目まわりや先端部分はしわになりやすいため、傘の骨を押さえるように片手を添えながら慎重に作業しましょう。熱が当たった部分から徐々に色味が変わる場合がありますが、あて布をしっかり使っていれば風合いを損なう心配は少なくなります。
スプレーと併用して強化する方法と順番の工夫
スプレー単体でも撥水力は向上しますが、熱処理と組み合わせることで効果が長持ちしやすくなります。この手順は、しっかり乾燥させた後に撥水スプレーを吹きかけ、さらにドライヤーやアイロンで軽く熱を加えることで定着度を高めるという流れです。
まず、傘の表面の汚れやほこりを乾いた布でやさしく拭き取ります。その後、全体に均一に撥水スプレーを噴霧します。スプレーは傘から30センチ程度離して、ムラにならないように横方向に往復させるようにかけるのが肝要です。特に雨水がたまりやすい傘の中央や先端にはしっかり塗布しておきましょう。
※かけすぎると白くなったりする事があります。説明書の作業方法に従って適切な量を守りましょう。
スプレー後は、風通しのいい場所で自然乾燥させるのが基本ですが、時間がない場合はドライヤーで表面を軽く温めても問題ありません。その際は低温設定にし、20センチ以上の距離を保って風を動かすように当てることで、ムラのない仕上がりが期待できます。
スプレーの種類によっては、熱に弱いタイプや、乾燥後に固まる成分を含むものもあるため、購入時には「熱処理可能」「速乾性」などの表記を確認しておくと安心です。

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折りたたみ傘・ビニール傘… 素材別に違う対処法
すべての傘が同じ方法で効果的とは限りません。傘の種類や素材によって注意点が異なります。自宅にある傘のタイプに合わせて、安全に撥水性を戻すヒントをまとめます。
ビニール傘におすすめの復活テクニックと注意点
ビニール傘は、透明でツルツルとした質感が特徴ですが、熱に弱く変形しやすい素材です。ドライヤーやアイロンの使用は避けた方が無難です。表面が一度でも熱でゆがむと、元に戻すのは難しくなります。
そこでおすすめなのが、摩擦を使った簡単な方法です。ビニールの表面を乾いたタオルやストッキングでやさしくこすると、摩擦熱によって素材の表面がわずかに柔らかくなり、撥水性が少し戻ることがあります。ただし力を入れすぎると傷がつくため、軽くなでる程度にとどめてください。
仕上げに、100円ショップなどで手に入る撥水スプレーを薄くかけると、短時間で水はじきが改善します。乾燥の際は、傘を開いたまま吊るし、風通しのいい場所に置いておくと、ムラになりにくくなります。日光に当てすぎると黄ばみの原因になるため、直射日光は避けましょう。
布製・折りたたみ傘に使える復活方法とムラを防ぐ工夫
布製の折りたたみ傘は、使用頻度が高い一方で、折り目や縫製が多く、撥水効果が部分的に落ちやすい傾向があります。とくに気をつけたいのは、折りたたんだ状態で保管されることが多く、湿気がこもりやすい点です。
まずは、傘を全開にして風通しのいい場所でしっかり乾かします。そのうえで、部分的な撥水力の落ち込みに応じたケアを行います。
スプレーを使う場合は、折り目の内側にもしっかり塗布できるよう、傘を手で少し反らせて吹きかけると隙間が広がり、奥までスプレーが届きます。乾燥後、低温のドライヤーで折り目を中心に軽く温めると、処理が定着しやすくなります。
アイロンを使う際は、あて布をして軽く押さえるように行いますが、傘の構造上、無理に伸ばそうとすると骨組みがずれることがあります。無理な力を加えないよう、布地をなでる感覚で熱を伝えるようにしてください。

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ブランド傘(モンベルなど)への対処法と風合いを損なわない工夫
アウトドア系のブランド傘には、高度な撥水加工が施されていることが多く、自宅での手入れには慎重さが求められます。特に、モンベルなどの製品では、生地にフッ素系のコーティングや、特殊な撥水繊維が使用されているケースがあります。
まず確認すべきは、傘に添付されている取り扱いタグやブランドの公式サイトです。多くの場合、「高温処理禁止」「家庭での撥水加工の再施工不可」などの注意事項が記載されています。それでも撥水力が落ちてきたと感じた場合は、専用の撥水スプレーの使用が推奨されているかどうかを確認したうえで、部分的な補助ケアを行うのが現実的です。スプレーを使う場合も、全体に吹きかけるのではなく、雨が集まりやすい中央部分や骨の付け根などに限定すると、風合いの変化を最小限に抑えられます。
また、収納時の湿気対策も重要です。使用後すぐに畳まず、軽く乾燥させてから収納することで、加工の劣化を防ぎやすくなります。

最後に
- ドライヤーやアイロンは撥水加工を熱で再活性化する効果あり。
- 傘の素材に応じて適したメンテナンス方法を選ぶことが大切。
- 使用後の乾燥と収納習慣が、撥水力キープの重要なポイント。
傘の撥水力が戻ると、気分まで軽くなるものです。スプレーに頼らず、ドライヤーやアイロンを活用する方法は、忙しい生活の中でもすぐに試せる工夫です。傘の素材や用途に応じた対応を心がけることで、毎日の雨支度が快適になります。暮らしの中で無理なく続けられる方法として、ぜひ役立ててみてください。
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