【お悩み】未知なることにもっとチャレンジしてほしいのだけれど…
小学校1年生の長女は、食べ物でも外出先でも未知の物事をなかなか受け入れません。ようやく時間のとれる休日に娘を「遊びに行こうよ」と誘っても、「家でテレビを見てるほうが楽しい」と言ってテコでも動かない! 日ごろ、子どもたちの相手がなかなかできず、テレビに子守りをしてもらっているのがいけないのかもしれませんが…。もっと好奇心旺盛に、さまざまなことに大胆に挑戦してほしいと願っています。(41歳・子ども7歳/女、3歳/男)
【Dr.アグネス・チャンの答え】まずはお母さんがどん欲に”遊ぶ”こと!
想像するに、本当はお母さん自身がグッタリ疲れていて、未知のことにチャレンジする余裕がないのではないでしょうか。たとえば「世界でいちばんおいしいかき氷屋さんがあるって聞いたんだけど…」「東京にも温泉があるんだって! かわいい浴衣も着られるし、隣には大きなゲームセンターがあるらしいの(「大江戸温泉物語」のこと)」「韓国まで飛行機が往復1万円だって!」と親がどん欲に「アレをしたい!」「コレをしたい!」と働きかければ、子どももつられて「やってみたい」と思うはず。
外出しなくたって、「今日は一緒にパンをつくろう!」「いつもと違うメイクをしてみよう!今日のママはレディー・ガガ風ね♡」「パパの顔の写真にメイクしてみる?」など、新しいことにはいくらでも挑戦できます。ヘトヘトかもしれないけれど、母親だって遊んだほうが元気になれます。
または「お母さん、来月同窓会があるから服を買いたいんだけど迷っちゃって…。パパじゃあてにならないし、一緒に選んでくれない?」と“ママのために”一緒に出かけてほしいと誘うのもひとつの方法ですね。そのかわり、子どもが「また出かけたい!」と思えるよう、うんと楽しい計画を立ててくださいね(笑)。
子どもにとって、毎日違う体験をして脳に「刺激」を与えることはとても大切です。脳内の高速回路=シナプスの大部分はさまざまな刺激によって8歳ごろまでにつくられるといわれていますし、いろいろな体験をすることで経験値が上がり、より賢い選択ができる人間になれます。刺激によって、子どもが夢中になれることに出合う確率を上げることもできますし、物事を積極的に学ぶ姿勢も培えます。小さいころに受けた刺激は、その後の人生にも仕事にもプラスに働くんですよ。
それに、子どもに思い出をどれだけつくってあげられるか、というのは親の大事な役割。いい思い出でも悪い思い出でも、思い出は子供が将来ひとりぼっちになったとき、救いになります。私は息子たちが子供だったころ、夜になって「今日はふつうの一日だったな」と思ったら、「パパを駅で待ち伏せして驚かせよう!」と連れ出したりしていました。夫も仕事から帰ってきて「学校を休んでもいいから、明日温泉に行くよ!」などと急に言い出したり。夫婦で競って、子供が想像できないようなことを仕掛けて「人生は楽しい! エキサイティングだ」ということを命を懸けて伝えていました。
おかげで今では、息子たちが私たちに“面白いこと”を仕掛けてくれます。彼らが暮らすアメリカに私たちが行くと、おいしいレストランに行くだけのために車を2時間半走らせて連れて行ってくれたり、私が大好きなポテトチップスをテーブルいっぱいに用意してくれたりして…笑。人生が楽しいです。
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撮影/田中麻以 構成/酒井亜希子(スタッフ・オン)
アグネス・チャン著
定価:1,400円(税抜)
発売元:小学館
教えてくれたのは…
アグネス・チャン
歌手・エッセイスト・教育学博士/ 1955年、香港生まれ。1970年代より日本で歌手として活躍し、上智大学国際学部を経て、カナダのトロント大学(社会児童心理学)を卒業。1989年、アメリカのスタンフォード大学教育学部博士課程に留学し、1994年に教育学博士号を取得。長男、次男、三男も母校スタンフォード大学に合格して話題となる。現在、ユニセフ・アジア親善大使、日本対がん協会ほほえみ大使など芸能活動のみならず幅広く活躍。2018年春の叙勲で旭日小授章を受章。2019年4月出版の著書『未知に勝つ子育て:AI時代への準備』(小学館)には、AI時代の家庭教育のヒントが満載!